SNSに他人の悪口を書いたら1000万円、隣人のクルマのバックミラーを傷つけたら600万円――弁護士数が増加した結果、目を剥くような高額の訴えを起こされるケースが増えている

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司法制度改革によって弁護士数が増えたことから、スラップ訴訟や高額訴訟が増えている。SNSに悪口を書き込んだら1000万円を請求され、破産してもチャラにはならなかったり、離婚や不倫の慰謝料も高額化――そんな恐ろしい現実をレポートする。(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)

SNSへの悪口書き込みから
大金を請求された夫婦

 かつて、市井に暮らすごく一般の市民にとって弁護士へのハードルは高かった。ましてや裁判など起こすことも、起こされることもなかった。だが司法制度改革により弁護士人口が増えた今、弁護士のハードルは低くなり、誰でも容易に裁判を起こし、起こされる時代となった。

 弁護士の側からしても、人数が増えて過当競争となっているから、訴訟はありがたい。かくして、かつてなら訴訟にすらならなかったような案件を引き受ける弁護士が増えた。そんな一例をご紹介しよう。

「たしかにわたしたち夫婦はSNS内で勤務先企業の経営者の悪口を書きましたよ。でも、それはちょっとした井戸端会議というか、その程度のモノなんです。それで1000万円支払えという請求でした。いくらなんでもこれは酷過ぎます」

 大阪府内に住む50代のAさん夫婦は、夫婦で勤務する企業の勤務待遇の劣悪さから、時折、ネット掲示板やSNSに経営者をからかうような投稿をして憂さを晴らしていたという。その内容は和解後でもあり、ここでは詳述できないが、概ね、経営方針を揶揄したものや、「太っている」「禿げている」といった容姿をあげつらった内容である。

 そうしたネットでの憂さ晴らしを行っていたある日、突如、ネット掲示板での投稿が削除されていた。さらに月日が流れ、そんなことも既に忘れていたある日のこと、今度は、Aさん夫婦が契約しているプロバイダーから、「発信者情報開示請求の可否について」という書類が届く。インターネット掲示板に投稿した書き込みはAさん宅であることを、開示請求者である企業経営者に「開示してもいいか」というお尋ねである。

「その時は開示を拒否しました。でも、プロバイダー側がその裁判に負けたので、結局、自動的に開示という運びになりました。それで、まずネット掲示板に経営者の悪口を書いたことへの損害賠償として1000万円支払えという内容証明郵便が届いたのです」

 この内容証明が届いた段階で、Aさん夫婦は、ようやく重い腰をあげて弁護士を探すことにした。高卒後、ずっと勤務先企業が提供する寮や経営者の自宅に間借りするなど、住み込みで働いてきたというAさん夫婦の周りには弁護士の知り合いなどいない。地方自治体で無料相談を行っていた弁護士に事の顛末を相談した。

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