大丸東京店2階にある化粧品売り場では、外国から訪れる個人旅行客の姿が目立つ(記者撮影)

国内での工場新設は実に37年ぶりとなる。

資生堂は、栃木県で中価格帯スキンケア製品などを扱う新工場を2019年度中に稼働させる。さらに、翌2020年度までには大阪工場を大阪市から茨木市に移転し、生産能力を増強する。総投資額は最大で約950億円に達する見通しだ。

化粧品の輸出額と輸入額が逆転

国内での工場新設には巨額の資金が必要となるほか、製造面において人件費などのコスト高も懸念される。さまざまなメーカーが海外で生産拠点を広げる中、なぜ資生堂は国内投資を加速するのか。背景にあるのは、アジア、とりわけ中国における日本製化粧品の需要が高まっていることだ。

日本国内の百貨店ではインバウンド需要が上り調子だ。日本百貨店協会の統計によると、免税売上高は2017年11月まで12カ月連続のプラスとなっている。その中で同協会の直近の調査では、外国人に人気のある商品として、服や雑貨を抑えて、化粧品がトップになった。

さらに日本に旅行する知人に購入を頼んだり、越境EC(電子商取引)で日本の化粧品を買う動きが広がっている。中国吉林省在住の30代の女性は「中国製だと偽物もあるから、日本製を選んで買うようにしている」と話す。

財務省の貿易統計によると、2015年から化粧品の輸出額が急増。2016年には輸入額2292億円に対し、輸出額2676億円と、初めて輸出額が輸入額を上回った。2017年以降も、この傾向が続く。輸出先としては香港、中国、台湾など東アジア勢が上位を占める。


みずほ証券の佐藤和佳子シニアアナリストは「化粧品の原料価格は生産国を替えても大差はない。日本製であることがブランド価値の向上につながる」と指摘する。

「メード・イン・ジャパン」旋風を受け生産拠点の再編に踏み切るのは、資生堂だけではない。コーセーは2017年3月に60億円を投じ、群馬工場の生産能力を増強。同年10月には中国の生産拠点を中堅化粧品メーカーに売却することを発表した。「ここ数年、中国では現地で造った商品の売上構成比が小さくなり、日本からの輸入品を嗜好するようになってきた。今後は中国でメード・イン・ジャパンを売っていきたい」(小林一俊社長)。

反日デモ影響による苦い経験

国内投資に本腰を入れる化粧品メーカー各社だが、不安要素も付きまとう。


当記事は「週刊東洋経済」1月20日号 <1月15日発売>からの転載記事です

かつて資生堂は2012年9月の尖閣諸島国有化をきっかけに起こった反日デモの影響で、現地の百貨店休業や化粧品専門店での日本製品販売中止という事態に見舞われた。2013年3月期の海外事業の営業利益は33億円の赤字に転落。その後中国製ブランドの強化を図ったが、販売は伸び悩んでいる。

当面日本製品の好調が続くと見る関係者は多いが、2016年に“爆買い”が失速したように、中国の経済政策や政治動向で、消費環境が一変することもありえる。資生堂をはじめ化粧品メーカーは国内増強を急ぐが、その選択は吉と出るか。