「眼の外傷」の応急処置に迅速に使用できるゲル材を開発(depositphotos.com)

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 米南カリフォルニア大学眼科部門のJohn Whalen氏らの研究チームは、戦場で眼に外傷を負った兵士の視力を守る特殊なゲル材を開発したとする研究論文を『Science Translational Medicine』12月6日号に発表した(「HealthDay News」2017年12月6日)。

 Whalen氏らが開発したのは、低温では液状だが眼に塗布するとシール状に固まるゲル材。ウサギを用いた実験では、眼の穿通性外傷にこのゲル材を塗布したところ眼圧が改善し、使用後4週間にわたって炎症や感染は認められなかった。動物実験で有効性が認められた段階だが、2019年にヒトを対象とした臨床試験を開始し、安全性を検証する予定だ。

 眼の外傷は、即座に手当てをしなければ失明の恐れがある。Whalen氏らは「このゲル材があれば、戦場のような眼科医による治療をすぐに受けられない環境でも迅速に応急処置ができる可能性がある」と説明する。

戦場に限らずさまざまな状況で使用できる

 使用法は、低温で保存しておいた液状のゲル材を眼の受傷部分に塗布するだけだ。ゲル材は眼の温度でシール状に固まるため、迅速に外傷をふさぐことが可能だ。応急処置を受けた患者が眼科医による手術を受ける時は、冷水をかけるだけで除去できる。

 Whalen氏らは、塗布する前にゲル材短時間で冷却できる専用のシリンジも開発している。したがって、ゲル材を前線まで持ち運び、近くにいる兵士が眼に外傷を負った兵士の応急処置を行えるとしている。

 Whalen氏らによると、戦場で即席爆発装置の使用が広がっていることから、戦場での眼の外傷は増加している。今回のゲル材の開発は、米国国防総省が眼の外傷の新たな治療アプローチの開発を求めたことがきっかけになった。

 なお、Whalen氏らは「事故で一度に多数の傷病者が出た時や、眼科手術を行える施設がない地域の救急外来などでも、眼の外傷に対する応急処置にこのゲル材を活用できる可能性がある」と語っている。戦場に限らずさまざまな状況で使用できるかもしれない。

「眼の外傷」は必ず眼科医の診察・検査を受けよう

 政治的・宗教的な対立・抑圧が止まない限り、この地上から戦火が消える日は遠い。戦場で負傷する兵士は絶えない。だが、眼の外傷は、戦場だけでなく平時の生活シーンでも頻繁に起きている。

 目の外傷は、どのようなケースが多いだろう? 液体や粉末状のものが目に入った、固形物が目に入った、眼球や目の回りを切ったり刺した、眼球や目の回りを打撲した、理由は思い当たらないが目が痛いなどのケースがある。

どのケースでも大切なのは、すぐに応急手当てを急ぎ、次に眼科医または救急車に連絡し、受診(検査・手術)することに尽きる。

【例1】液体や粉末状のもの(洗剤、漂白剤、カビとり剤、接着剤、ヘアカラー、石灰、セメント、薬品)が目に入ったとき。

【処置法】直ちに水で最低10分以上、十分に洗眼する。蛇口の水やヤカンに汲んだ水を目に直接かけるか、洗面器に張った水で目をよく洗う。痛くてもがまんして目をあけて洗眼するが、目をこすってはいけない。

【例2】固形物が目に入ったり、眼球や目の回りを切ったり刺したとき。

【処置法】目の表面や周囲に汚れがあれば、すぐに水洗する。眼球に大きな傷があれば、無理に目を開かずに軽く汚れを落とす。出血していれば、清潔なタオルやティッシュをまぶたの上から軽く当てる。

【例3】眼球や目の回りを打撲した(ボールが目に当たった、格闘技中の事故)ときや、理由は思い当たらないが目が痛いとき。

【処置法】視力低下や視野の異常、眼痛などの自覚症状がないか確かめる。

 いずれのケースも、近くの眼科医に連絡をとり、すぐに眼科医や眼科救急外来を受診しなければならない。

受診時に眼科医に伝えるポイントは?

 一刻を争う状況のなかで正確な診断・的確な治療を素早く行うために、受診時に眼科医に伝えるポイントがある。

□できるだけ詳しい受傷時の状況を伝える。目に物が入った場合は何がどの程度入ったのか、打撲の場合は当たった物の種類(野球ボールかサッカーボールかなど)、固さ、飛んできた方角・スピード、当たった瞬間の姿勢、格闘技の場合は相手のどの部分がどのような動きでどこに当たったかなど。

□何分前に受傷したか。

□メガネやコンタクトレンズをしていたか。

□どのような応急手当てをしたか。

□目に洗剤や薬品などが入った場合は、容器や説明書を持参する。固形物の破片が残っていれば、持参する。

 このような眼の外傷の治療で最も大切な点は、受傷後にできるだけ迅速に正しい応急手当てを施すことだ、 つまり、救急治療(損傷箇所の修復と感染防止)から的確な初期治療までのスピードが生命線になる。
 
 したがって、自覚症状が軽くても必ず眼科医の診察・検査を受けることを忘れてはいけない。

 なお、部位別にみる眼外傷、子どもの眼外傷、注意が必要な合併症、検査法などの詳しい情報は、下記のサイトを参考にしてほしい。
(文=編集部)

●参考サイト
▶︎「特集:目の外傷(編集・昭和大学名誉教授:稲富誠先生)」
▶︎MSDマニュアル家庭版:眼の鈍的外傷の概要