このコラムの著者、マーク・ダフィ(56)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。趣味のホッケーは結構うまい。◆ ◆ ◆2017年は女性のエンパワーメントを力強く訴える記事の見出しが並んだ1年であった。しかし広告においては過去10年間、ジェンダーにまつわる偏見はまったく変わっていないようだ。一体なぜなのだろうか。女性のクリエイティブディレクターの数は、いまだに驚くほど低い。約11%だ。それが理由かもしれない。もしくはクリエイティブディレクターである男たちが女性を平等な存在だと見なしていないのが原因かもしれない。昨年初頭には、ひとりの研究者が4つのエージェンシーで時間を費やしたところ、それぞれのクリエイティブ部門は「組織ぐるみの女性軽視を通して、男性のステータスを保護している」と報告した。1960年代のニューヨーク広告業界を描いたテレビ番組「マッドメン(Mad Men)」のなかの話のようだ。新しい上司が来ても、前の上司と何も変わらない、という具合だ。ここに2017年の広告から、さりげなく性別差別・女性蔑視(セクシズム)を含んでいるものを挙げていきたい。なかには、それほどさりげないものもある。広告における女性蔑視だ。

カールズJr/ハーディーズ(Carl’s Jr./Hardee’s)

このファーストフードチェーンの親会社であるCKEレストランツ(CKE Restaurants)は、驚くほど悲惨な「ビキニ・ベイブ」CMを止めて、新しいマスコットであるカール・ハーディーSrを登場させた。これは明らかにビールブランド・ドスエキス(Dos Equis)の広告に登場した「世界でもっとも興味深い男」を情けなくもお粗末にパロディしたものだ。CMのなかで、ハーディSrのミレニアル世代の息子であるカール・ハーディJrはかなり頭が悪く描かれており、前回の女性の胸やお尻を強調したCMの原因とされている(実際はCKEのCEOであるアンドリュー・パズダーによるものだ)。このまったく笑えないチキンサンドイッチのスポットは新しいキャンペーンの一部だ。ビキニは登場しない。しかし女性は登場している。女性はSrの年下の妻/彼女か、それかSrが語る中身のない「死に直面した」体験の物語をうっとりを聞いているランダムなビーチ訪問者だ。

 

どちらにしてもこれらの女性は重要ではない。何も言わない。彼女の顔も見えない。ただの飾りだ。これが女性蔑視でなければ何なのか。少なくともビキニベイブの場合は、カメラに向かっていくつかの単語を言うことができた。

ビアンコ・シューズ(Cianco Shoes)

男女の賃金格差を是正する「イコール・ペイ」は確かに、多くの国で実現されていない課題だ。そんななか、オランダの靴ブランド、ビアンコ(Bianco)はこの「イコール・ペイ」を強烈にコマーシャルに織り込んだ。ビアンコの主張はこうだ、同じ仕事に対して平等な賃金を求める「イコール・ペイ」は十分ではない。なぜなら女性はヘアカットも高いし、服も高い、そして靴も高い(男性と比べて)。だから女性にはイコール・ペイ以上を与えないと怒るよ、という具合だ。なぜか? 女性は……買い物や身だしなみを男性よりも整えないといけないから、か? キャピタリズムがフェミニズムを利用しようとして失敗する例だ。同様の試みは、ほかのブランドも行ってきたが、これが最悪の例かもしれない。

アウディ(Audi)

結婚式に走り込む新郎の母親が新婦の顔や胸の大きさをチェックするというこちらのコマーシャル。最後には「重要な決断は慎重に」というメッセージが流れる。これはなんと中古車のCMだ。消費者を怒らせてしまうような決断に関しては、慎重には行われなかったようだ。7月にはアウディの広報担当者が広告について調査を開始したと発表した。しかし責任は中国のローカルのジョイントベンチャー・パートナーにある、と決めてしまったようだ。女性の「価値」を身体的な特徴で定めるという典型的なセクシズムだ。

サント・メスキーラ(Santo Mezquila)

もちろん、世界にはまだまだセクシスト広告があふれている。サント・メスキーラがアメリカで展開した下のポスターが一例だ。サント・メスキーラは「世界初の」メスカルとテキーラを混ぜた飲み物となっている。下の画像についたコピーは「貴方の舌が触れていない場所はまだまだある」。

 

オーストラリアの精肉店による裸の女性を肉展示ケースに入れるというマーケティングもあれば、こちらのランジェリーのCMではオフィスパーティと称してランジェリーだけを着た女性たちとスーツ姿の男性たちが踊っている。映画『アイズ・ワイド・シャット』も顔負けだ。最後に、男性クリエイティブの発言を紹介して締めくくりたい。これは2017年6月、カンヌでのことだ。カンヌライオンズ、アウトドア部門の審査員だった、ピュブリシス(Publicis)のグローバルCCOであるブルーノ・バーテリ氏は、男女両方であふれる部屋に向かって、次のように言った。
女性と一緒に審査をするのは楽しかった。彼女たちはより感情的、かつ少し論理に欠けたアプローチをとるからだ。というのも、皆さんご存知のように、女性は皆、産まれるときにすでに左脳が取り除かれているからだ。
どうやら広告業界は「マッドメン」の時代からそれほど前進できていないようだ。【 マーク・ダフィ氏の連載<記事一覧>はこちら 】Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)