SNSと人々の関わり方について考えてみた!

突然ですが、筆者は自他ともに認める無類のTwitter廃人です。暇さえあれば(時には暇を作ってでも)タイムラインを眺め、気になる記事や話題を見つけては感想をつぶやいたりリツイートをしています。その頻度があまりにも多いため、フォロワーによっては相当迷惑しているだろうと思いつつも、ついついRTアイコンを押してしまうのです。

こんな筆者に限らず、世の中には似たようなソーシャルネットワーク(以下、SNS)依存の人は少なからずいるようです。いや、もしかしたら相当数の人々がSNS依存やインターネット中毒と呼ばれる状況にあるかもしれません。LINEの通知が常に気になる人、Instagramの「いいね!」の数に一喜一憂する人。そういった心理的な現象はなぜ起こるのでしょうか。またそれらは現実世界にどのような影響を与えるのでしょうか。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する「Arcaic Singularity」。今回は若者を中心とした人々とSNSとの関わりを中心に、その正しい利用方法やSNS依存からの脱却について考えてみたいと思います。


人は人と繋がりたがる。そして世界を知りたがる


■女子高生とSNS
スマートフォン(スマホ)に特化したリサーチを軸に事業を展開するテスティーは、「現役女子高校生を対象に「ひとり」に関する意識調査」を2017年11月に公開しました。この調査は同社が継続的に行っている高校1年生〜3年生の女性(以下、女子高生)に関する調査の1つで、女子高生500名を対象にアンケートを行ったものです。

その調査では「1人でいるのは好きかどうか」や「1人でいたくないイベント」のランキングなどが紹介されていましたが、筆者が注目したのは「SNS疲れを感じたことがあるか」という項目です。

はじめに、SNSアプリの利用状況においてはLINEが98.3%と圧倒的な利用率を達成して堂々のトップに。そしてTwitterが80.0%、Instagramが56.7%と続いています。これらのSNSの利用で疲れを感じたことがあるかという設問には51.4%の人が「ある」と回答しており、半数もの女子高生がSNSに過度に依存している状況が浮き彫りとなりました。


「若年層調査のTesTee(テスティー)調べ」(URL:https://testee.co/)


恐らくこれは女子高生に限らない話だと思います。なぜ人は本来道具として使うべきアプリやデバイスに振り回され、悩みを持たなければいけないのでしょうか。冒頭に筆者はTwitter廃人だと書きましたが、筆者はSNSの利用で疲れたり対人関係で悩まされたりしたことがほとんどないため、まずはこの心理状況から考察する必要がありました。

■SNS依存は人間依存である
最初に筆者が辿り着いた答えは「SNS依存は人間依存である」という点です。人々はLINEやInstagramといった「アプリ」に疲れているわけではありません。極論を言ってしまえば、そのアプリがLINEであるのかInstagramであるのかなどは問題ではないのです。問題は、その先にいる人々との交流でありその反応なのです。

人は生きている限り何かしらの集団や組織、社会などに囲まれていますが、10代の学生にとってその集団や社会というものはとても狭い範囲であり、尚且つ非常に密度の濃い接点を持つ存在です。早い話が「学校」か「家庭」か、もしくはせいぜい「バイト先」程度の「世界」なのです。

実はこの状況、多くの社会人もあまり変わりがありません。朝起きて家族とせわしなく朝食を食べ、会社へ出勤し、取引先に出向き、帰社して残業を行い、帰宅して夕食を食べて寝る。その繰り返しの日々になっている人がほとんどではないでしょうか。「自宅」「会社」「取引先」の3つしか世界がないと言っても過言ではないでしょう。

しかし社会人と違い、学生の場合はさらに状況が深刻です。社会人はそのコミュニティにおいて人間関係よりも優先すべき「仕事」があります。そのため人の繋がりで成り立つSNSへプライバシーに関わるようなことをあまり書き込みたがりませんし、良くも悪くも波風が立つようなことは書き込みませんが、友人関係が全てとも言えるようなコミュニティを形成している学生にとって、そこは学校やリアルの友人関係の延長線のような存在になりがちだからこそ、学校でのグループや派閥的な存在がSNS上でも形成・再現されてしまったり、時には陰口などを書かれてしまい、それを気に病んで疲れてしまうのかもしれません。


学生は友人同士のつながりが強いからこそ疲れてしまう


■人々を虜にする「承認欲求」
Instagramの世界におけるSNS依存とその疲れは、また少し事情が違うようです。Instagramは昨年大ブームとなり、人々からの「いいね!」をもらうために見栄えの良い写真を投稿する「インスタ映え」という言葉も「2017ユーキャン新語・流行語大賞」に選ばれました。

ここでの疲れの大きな原因は「承認欲求」でしょう。人は誰かに認められ、賞賛されることに大きな価値を感じます。いわゆる「名誉」や「権力」といったものに人々が憧れる大きな要因でもあります。しかし、これが人々を狂わせます。

通常、不特定多数の人々に認められ賞賛を得るには多大な労力や努力、更にはモラルやルールに則った人格者的な行動が必要になります。しかしInstagramやTwitterの世界では「美しい写真」や「特別な写真」、そして「面白い写真」さえあれば人々の注目を集められ、非常に簡単に「いいね!」を貰えます。そのため、最初はただの日常を切り取ったような写真で満足していたはずが、フォロワーが増え「いいね!」をもらえるようになってくると次第に「いいね!」の数を気にするようになり、いつしか「いいね!」をもらうために写真を投稿するようになります。まさに手段と目的が逆転した瞬間です。これを「自己目的化」と呼びます。

写真投稿の自己目的化に気が付かないままでいると、人は「いいね!」をもらうために常識はずれの行動に出ることがあります。好きでもないコンサートへ多額を払って赴いたり、食べもしないスイーツを買って写真だけ撮って捨ててしまったり。時には他人の写真を勝手に拝借し、あたかも自分が撮った写真であるかのように利用してしまう「パクリ」まで横行するようになりました。普通に考えれば大顰蹙(ひんしゅく)を買いそうな行動であっても静止が効かなくなってしまったのです。

そして「疲れ」が来ます。どんなに着飾った写真を載せても「いいね!」が思ったほど貰えない。もっと「いいね!」が欲しいのになかなか増えない。自分を偽ってでも人から賞賛されたい。人に注目されたい。人に認められたい。人に……。


Facebookでは「いいね!」にも複数の評価アイコンがある


■SNSに疲れる前に
SNS依存とSNS疲れはこれからの人間社会において修正不可能な「不治の病」となるのでしょうか。筆者はそうは考えていません。恐らくこれから先、どのようなデバイスとSNSアプリが登場してきても同じようなSNS疲れは繰り返されるでしょうが、個人単位で見れば十分に「治療可能」であると考えます。

必要なことはただ1つ。他人の評価を「期待しない」ことです。人の評価を気にするな、ということではありません。むしろ社会や組織の中で生きていくには他者からの評価そのものが自分という存在を定義するのであって「自分がどう考えているのか」はあまり重要ではないとすら筆者は考えますが、しかし他者からの評価を必要以上に期待することは非常に危険です。過度な期待はその期待を裏切られた際に強い焦燥感や失望感を生み、本来必要のない挫折感や苛立ちまで生んでしまいます。

人が何かに期待したがる理由はとてもよく分かります。その期待が満たされた際の幸福感や満足感が忘れられないからです。しかし、幸福感は自分自身で生み出せます。自分で何かを成し遂げた時、自分で何かを見つけた時。そこまで大仰でなくとも「今日は仕事頑張った」と納得できればよいのです。


あなたは日々納得のいく生活ができているだろうか


これは人間関係においても同じことが言えます。人とのつながりを軽視したり無視することは、コミュニケーションによって成り立つ人間社会においてあってはならないことですが、しかしそこに過度に期待したり依存することは自分の立ち位置を見失うことと同義です。学校、会社、家庭。人は立場や年齢こそ違えど様々な閉鎖コミュニティに帰属しています。それらの中で自分のポジションを確立するということとSNSと上手く付き合い便利に利用していくということは、とても似通っていると感じるのです。

他人の評価を過度に期待せず、しかし他人と上手く付き合っていく。その昔、兄弟や従兄弟や親戚がたくさんいた時代は嫌でも自然と学んできたことですが、核家族化と少子化の進んだ現代の日本ではなかなか学ぶ機会も少なくなっている気がします。またスマートフォン(スマホ)利用の低年齢化などから子どもたちが正しいコミュニケーション方法を学ぶ前に不特定多数の人々との接触に晒される状況もまた、事態の深刻化を招いているように感じます。

大人も子どもも、今一度ご自身のSNS利用の現状を「一歩下がって俯瞰して」みてください。果たしてそこに自分は何かを期待しすぎていないでしょうか。無意識のうちに「いいね!」の数を追いかけていないでしょうか。LINEの通知ばかり気にしていないでしょうか。時にはスマホの電源を切って、ゆっくりと自分が本当にやりたいことや夢描くことを考えてみるのも悪くはないかもしれません。


筆者もたまにはiPhoneを伏せて生きなければ(自戒)


記事執筆:秋吉 健


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