ハリウッドで表面化したセクシャルハラスメント問題をきっかけに、SNSなどで性暴力被害者に連帯する「#metoo」運動が拡大。そして、あらゆるハラスメントの根絶、マイノリティーの安全、平等を求めるセクハラ撲滅運動「TIME'S UP」も注目されるようになりました。第75回ゴールデン・グローブ賞授賞式で、セクハラへの抗議を示すため黒いドレスで出席したエマ・ワトソン、ナタリー・ポートマンなどの有名女優たちの姿も、記憶に新しいです。

そこで目を向けたいのは、一般人である女性が受けたセクハラ、パワハラについて。彼女たちが、様々なハラスメントにどう向き合ったのかを紹介します。

お話を伺った美緒さん(34歳・仮名)は、都内の中堅大学を卒業後、IT関連会社に入社し営業部に配属されます。この会社はパワハラ、セクハラの嵐だったと言います。

「仕事はネット広告の営業で、新人の頃は飛び込み営業やテレアポをさせられました。私は埼玉県の大宮市と浦和市の担当で、駅前のビルの上から下まで突撃訪問でセールスするのが初仕事。最初は先輩が付いていてくれましたが、たった2週間で単独での営業に。飛び込み先の会社からは無視され、“忙しいんだよ”“来るんじゃねーよ、ブス”などと言われ、お渡しした名刺を真っ二つに切られたりするのが耐えられませんでしたね」

その営業部はバリバリの体育会系で、部長が“何が何でも仕事を取ってこい”というタイプ。成績が上がらないと、「オマエが頑張らないからだ」「なんで数字がとれないんだ」とみんなの前で詰めたとか。毎週金曜日の19時からの会議が地獄のようだったといいます。

「会議は6〜8人の部員で行ないます。目標の売上金額、実際に積み上げた額、そして到達していない金額を言うのです。達成できないと、“目標達成できずすみませんでした”とみんなの前で謝るんです。私は毎回未達で、“私って駄目な人間なんだな”と心の底から思うようになり、毎日死にたいと思っていました」

その会議で部長は、自分の根性論を押し付け、人をバカにする発言をしていたそうです。ヒゲが濃い社員を“ヒゲ”、体毛が濃い男性社員を“クマ”などのほかに、差別要素も含んでいる、聞くに堪えないものもあったと言います。

「私は胸が大きかったので、デカパイと言われました。“そのデカパイは飾りか?”と枕営業をなぜしないのか、という意味も含みつつ言われていました。部長がそう言うと、先輩たちもいじり出すんです。“デカパイ美緒”とからかうようになりました。たまらなくイヤでしたが、なぜかヘラヘラ笑ってしまったんです。このとき、女性の先輩も同僚も誰もかばってくれなかった。営業部に女性は私を含め3人いたのですが、ほかの2人の先輩は美人でかわいくて、セクハラ・パワハラをされてもひらひらかわしてしまうような女性。営業成績もよかったので、部長も彼女たちにはひどいことは言いませんでした」

生きていても仕方がないと、自分を責め続ける毎日

美緒さんの容姿は10人並み。服はすべてリサイクルショップで購入しており、無難な服を着まわしたいというタイプで、趣味は映画とはいえ、特別好きな作品はなく休日は1日中家で寝ていたいタイプ。

基本的に自分に自信がなく、転職しようと思っても社会人1か月目で逃げ出してしまっては、社会人生命が経たれてしまうと思い込んでいた、と振り返ります。

「毎週の会議で、“私は生きていてもしょうがないゴミ以下の人間”と思い込むようになっていたから、私ぐらいの学歴と能力では、この会社のほかに行くところはないし、顔が広い部長や社長の影響力で社会人生命が潰されると思っていたんです。34歳になった今なら若手社員がひとり辞めても、上層部から何の興味も持たれないとわかるのですが、その頃は未来を悪い方向にしか考えられず、自死することを考えていました」

それでも、実家がある富山県には帰りたくない。親に相談したら、そんな会社はすぐやめて帰ってこいと言われる。入社半年で、ストレスで肌がボロボロになってしまったといいます。

「顔が粉を吹いたように皮がむけて、乾燥が激しくなってかゆくなりかきむしってしまう。皮膚がボコボコと盛り上がって、じんましんみたいになってしまい、病院に行っても原因不明。それで、アレルギー薬を出されて終わる。それを飲むと胸やけが激しくなり、それが辛くて、食パンや塩おにぎり、ヨーグルトなどを常に食べていました。するとブクブク太ってきて、ますますバカにされるようになりました。仕事が忙しくて時間外診療の病院に行き、薬をもらう日々……医療費が月3万円くらいになり、何のために仕事をしているのか、わからなくなりました」

アレルギー対策のさまざまな薬を処方されても、一向に改善の気配がなかったと当時を振り返る。

ストレスで10キロ増、“ブスはみっともないから外に出せない”と営業部から外される〜その2〜へ続きます