既存市場の中で切り口を探し、独自性を見つけることが肝要です(イラスト:すき あめ子 / PIXTA)

ブルーオーシャン(青い海)戦略とレッドオーシャン(赤い海)戦略。近年、ビジネス上で語られることが増えてきた用語だ。プレーヤーが多く、競争が激しいレッドオーシャンで戦うよりも、未開拓の新規市場でライバルも少ないブルーオーシャンを狙うほうが、ビジネスでは有効だという文脈がよく語られる。
一方、ネット通販市場において「小さな会社が狙うべきなのはレッドオーシャンだ」と言い切るのは、『【小さな会社】 ネット通販 億超えのルール』の著者、西村公児氏。西村氏は通販事業のコンサルタントとして多数のヒット商品の誕生にかかわってきた経験から、「小さな会社が2年以内に年商1億円の壁を突破することを可能にしたいなら、ブルーオーシャンを狙わないほうがいい」と主張する。

売り上げが頭打ちしていませんか?

近年ではインターネットの普及と会社法の改正により、個人でも容易に株式会社を設立することが可能となりました。しかしながら、起業して数年経過するあたりになると、「なかなか年商1億円の壁」を越えられないという相談を多くの経営者からお受けします。

売り上げに陰りが見え始めると「なんとか次の一手を」と考える中で、希望的観測から無謀な賭けに出てしまう経営者が後を絶ちません。「ものすごいアイデアがある」「絶対にニーズがあるはずだ」「実現すると市場を独占できる」「発明をして特許を取った」「この市場はブルーオーシャンだ」などなど例を挙げるときりがありませんが、残念ながら小さな会社、特に、ネット通販ビジネスにおいては、ブルーオーシャンの商品は成功しにくいと言えます。

中小企業庁が刊行する、2017年度版の「中小企業白書」の中でも「新事業展開に成功する企業は、マーケティングに注力している」と記されていることが物語るように、市場の全体像を把握し、調査し、戦略に基づいた行動を地道に積み重ねていくことが何よりの成功の近道になるのです。

「競合がひしめき合うレッドオーシャンで、資本もない小さな会社が勝てるわけがない」

そう考える小さな会社の経営者は少なくありませんが、ネット通販業界を例に挙げるなら、資本の少ない小さな会社の場合、あえて競合がひしめき合うレッドオーシャン市場を選ぶほうが、年商1億円の壁を突破する確率も、コストパフォーマンスも、はるかに高いのです。

小さな会社が、年商1億円を目指して商材選択する場合は、独自性が高すぎるものを選ぶことを避けたほうがいいでしょう。

豆乳おからクッキーで年商100億円

なぜなら、ブルーオーシャンの商品では、市場そのものを最初からつくり上げていかなければならないからです。顧客はその商品の存在も知らず、使い方も知らず、どんなメリットを得られるのかもわかっていません。

今では誰しも当たり前に使っている「インターネット」ですら、ほんの十数年前までは、その使い方を知らなかった人が大半だったはずです。ブルーオーシャンでは、莫大な広告費を費やせる、資本が十分にある大企業のほうが明らかに有利なのです。

レッドオーシャンで成功した事例を挙げましょう。「結果にコミットする」のキャッチコピーで言わずと知れたトレーニングジムのライザップを運営するRIZAPグループ。もともとは、健康食品の通信販売を目的とした「健康コーポレーション」として創業した企業です。

その健康コーポレーションを立ち上げた瀬戸健社長は起業当初、食べていくのも苦しい過酷な状況に置かれていたようですが、高校時代にお付き合いされていた女性のダイエットを健康的にサポートして美しく変身させたご経験から「豆乳クッキーダイエット」という商品を考案。瞬く間に売れ、なんと年商が100億円を突破されたというストーリーです。

豆乳クッキーが成功したポイントは3つあります。

(1) ブルーオーシャンではなく、「食品」という競合過多なレッドオーシャンにおける「ダイエットクッキー」というスキマ商品

(2) 1度の購入で終わるダイエット器具などではなく、単品をリピートで買ってもらえる可能性がある「クッキー」という商品

(3) 「おから」を使ったクッキーという当時では珍しい独自の発想に、社長の高校時代の恋愛体験というストーリー性を加えた独自の世界観

この3点を元に小さな通販会社でも勝ち目のあるレッドオーシャン戦略を考えてみましょう。

戦術1:小さい規模の中でシェアを獲得する

競合他社が星の数ほど存在する典型的なレッドオーシャン商品として、サプリメントを考えてみましょう。サプリメント市場は、全体で年1兆5000億円もの規模があるとされます。

すでに大手通販会社がコストをかけて育てた市場の中で、一定の分野に限定して少しばかりのシェアを取っただけでも、年商1億〜10億円を達成するのも夢ではありません。すべての通販カテゴリに1億〜10億円のスキマがあると私は考えています。そのスキマを見つけることが、小さな企業が安定して売り上げを伸ばし続けるためになにより重要なのです。

戦術2:単品リピート通販モデルで成功できる商品の選択

単品リピート通販モデルとは、お試し商品から、定期購入へと引き上げていくビジネスモデルのことを指します。それも総合通販と違って1つの商品を定期的に購入してもらうことで利益を積み重ねていくため、小さな会社にこそ適した手法であり自社商品の場合が多いのが特徴です。

商品は「何度も購入が可能なもの」「何度も購入する必要性があるもの」である必要があります。具体的に言うと、一度購入したら数年は買わなくてもよくなる家具などではなく、必然的に食品や日用品、化粧品、文具、雑貨などの消耗品に限られてきます。

総合通販とは、クリスマスやこどもの日などのシーズンごとの特売品があったり、カテゴリーやジャンルに分類されたりしている販売サイトです。こうしたサイトでは、総合的に個々の顧客の売り上げを引き上げていくものとなり、大企業が採用する総合通販モデルになります。

戦術3:UVP×ストーリーで唯一無二の存在に

必要なのは、UVP(Unique Value Proposition・独自の価値提案)です。マーケティング用語で「独自の売りや強み」と訳されるUSP(Unique Selling Proposition)と比べると、耳慣れない言葉かもしれません。

USPにはSelling(販売上の)という言葉が入っているとおり、特に商品を売るとき(顧客からすれば買うとき)に、顧客がほかの類似商品と比較して、「この商品のほうが、この部分が優れているから買おう!」と決める要素のことを指しています。

一方、UVPは顧客に対して「自社独自の価値」を提案すること、あるいは、その独自の価値そのもののことを指します。実はこの「UVP」こそが、小さい会社に必要な戦術なのです。UVPにストーリーを組み合わせることで決してほかがまねることのできない、その会社ならではの唯一無二の独自性という「強烈な印象」を消費者に与えることが可能となります。

レッドオーシャンをむしろ逆手にとって


USPはあくまで比較対象(競合商品)が存在する相対比較です。そのため、USPとして訴求するものは、どうしても「有効成分○○を100g配合!」とか、「業界最安値」などと、商品の特徴や価格、性能などの表面的な内容に偏ります。「A社の商品とB社の商品で比較した結果、A社のほうが有効成分の含有量が多く、しかも安いから、A社の商品を買おう」という具合になるわけです。しかし、こうした相対比較では、小さな会社が大手企業に勝つことはほぼ不可能でしょう。 

このように、小さな会社でも、単品リピート通販で成功できる商品の選択をし、その商品に対して自社のUVPとストーリーを掛け合わせることで、競合がひしめき合うレッドオーシャンをむしろ逆手にとって大きな成功を収めることが可能となるのです。ネット通販のみならず、士業やなんらかのサービスを提供する個人事業主など、インターネットで情報発信や集客している人や会社が、レッドオーシャンを攻めていくうえでも有効な考え方です。