沖修司長官

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 市町村による森林整備の財源に充てる「森林環境税」の創設が次期通常国会で審議される。新税は、2024年度(平成36年度)から住民税に1人あたり年1000円を上乗せ徴収し、放置されたままの民間の人工林の手入れに使う。地球温暖化対策、国土保全、林業の成長産業化が期待できる。林野庁の沖修司長官に新税の狙いを聞いた。

【森林環境税とは】
国が市町村経由で徴収し、私有林人工林の面積、林業就業者、森林率に応じて譲与税として自治体に配分する。24年度は300億円、33年度は600億円。
19年度から23年度までは、森林環境譲与税から譲与する。早期対策が必要なことや、新たな森林管理システムが始まることから、森林環境税に先行して実施する。

 -まず、森林環境税の創設の背景をお聞かせ下さい。日本の森林はどのような問題を抱えていますか。

 日本の森林の4割に当たる約1000万ヘクタールが人工林です。戦後、住宅需要を見込んで大量に植林された木々が伐採期を迎えていますが、適切な管理がされずに放置されている森があります。

 -管理されない理由は。

 個人が所有する私有林の林家数は83万戸あると言われていますが、その9割が10ヘクタール未満の小規模所有が占めています。
 残念ながら今の時代、木材価格が安い。零細な所有者ほど自分たちで伐採、植林しようという意欲が湧きにくいのが現実です。

 人工林の半分が数年すると「51年生」以上になります。成長した木は、主伐が必要となります。今までは間伐で森を育てる段階でしたが、主伐は大量に切って利用していく段階。小規模な所有が多いと、切った後造林が必要となる主伐が採算性の問題などから行われず、林業が回っていかなくなります。
 森林は我が国にとって貴重な再生可能な資源です。しかも地方に豊富にあります。人口が減っている中間山地域では、いかに有効活用していくかが大きな課題です。
 しかし、幹が太くなると、柱など通常の木材製品よりもサイズが大きくなりすぎます。のこぎりを入れる部分が増え、歩留まりが悪いです。また、現状の製材工場では太い木を加工できる設備が少ないというハード面の制約もあります。ですので、適当な太さで主伐した方がよいです。

 -所有者も適切に管理した方がよいと理解していても、できないのでしょうか。
 
 将来の財産になると思って何十年も前に植林した所有者にも、「売れない、切れない」と困っている方がいます。先祖から受け継いだはずだが、所有林の場所がわからない方も少なくありません。住んでいる市町村から森が離れており、管理できないという所有者もいます。

 農業であれば農地の所有者と作業する方はおおむね一緒ですが、林業は所有者と作業者が別。林業経営体にとっても、事業対象となる森林面積が小さいと作業が不効率です。ですので、小規模な民有林を束ねようと考えました。

 -「森林バンク」ですね。

 管理が難しくなっている人工林を市町村が預かり、林業経営者に貸し出すのが森林バンクという考え方です。意欲と能力のある林業経営者と、森林を“つなぐ”システムです。
 所有者や境界線の情報を載せた「林地台帳」の整備も進めます。台帳も見ながら所有者に預ける意思があるかヒアリングできます。

 -では森林環境税はどのように使われるのですか。

 長年、森林を育てる段階として、間伐などの森林整備のために補助金行政を続けてきました。補助金と間伐材を売った利益で収支トントンとなります。しかし補助金があっても、採算ベースに乗らない森林もあります。そうした森林も健康な状態に再生し、林業が成り立たない場合、森林は、将来できれば天然林に戻せないかと考えています。適正な管理がないと地球温暖化対策もできません。