ハウスタッフワークス(HowStuffWorks)は、2017年11月に自社のポッドキャスト番組でサードパーティーの広告の募集を取りやめた。ポッドキャストのパブリッシャーでもあるハウスタッフワークスは、同年の大半にわたって広告ネットワークを使い、ポッドキャストのリスナーの半数が対象となるバックカタログ(既刊目録/アーカイブ)へ広告を載せようとしていた。これを放棄するかわりに、同社は昔ながらの方法で収益化を進めている。すなわち番組側が広告を読み上げる方式だ。地上波ラジオの時代に端を発するこの方式は、いまでもポッドキャストの広告で主流となっている。

ハウスタッフワークスの最高コンテンツ責任者を務めるジェイソン・ホック氏は、前述の方式を「ああした広告はリスナーにとってうるさく感じるようで、評判が良くなかった」と語る。

といっても、ハウスタッフワークスはそのまま昔の方式に立ち返ったわけではない。同社はいまでもサードパーティーのソフトを使って、番組側が読み上げた広告を番組内で放送している。だが、フォーマットの革命とも呼ばれ、新たな広告主を呼び込めると考えられていた、このダイナミック広告挿入とよばれる技術には短所がつきまとっており、業界のステークホルダーは、いまだにその問題を解決できていない。

売上に対する不満



2017年夏にインタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:IAB)およびPwC(PricewaterhouseCoopers)が行った調査によると、ダイナミック広告挿入は昨年にポッドキャストの広告分野で主流となっており、エコシステム全体に占めるシェアは2018年さらに増えると予想されている。その理由は、広告主がA/Bテストを実施したり、ポッドキャストのリスナー向けにタイミングが重要となるオファーをしたり、番組ではなく特定のエピソードで広告を流したりといった機会が生まれるためだ。

だが広告のバイヤー、とりわけダイレクトレスポンス広告を行う広告主はこれに不満を覚えている。ダイナミック広告挿入の広告価格は不適切で、効果的な広告の価格戦略を実施できないだけでなく、ポッドキャストのリスナーにも番組側が読み上げている広告と比べて違和感を与えてしまう。

12月はじめに、ポッドキャストへの投資額が全体の35%を占めるメディアエージェンシーのアドリザルツ・メディア(Ad Results Media)がクライアントの第3四半期のデータを集計したところ、従来の番組側が読み上げる枠を取ったポッドキャストの広告は、ダイナミック広告挿入と比較して売り上げが3.5倍に達することが判明した。

アドリザルツ・メディアでプレジデントを務めるラッセル・リンドレー氏は「比べるまでもない」とし、次のように述べている。「ダイナミック広告挿入は生き残れるのか? それは可能だろう。ブランドのメッセージを伝える目的ならば、使えるかもしれない。だが最終的に重要なのは、どれだけ売れるかだ」。

強い反発の声



こうした意見に対し、強い反発の声もある。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)などのパブリッシャーのポッドキャスト広告を支援している技術系新興企業、アート19(Art19)の創設者のシーン・カー氏は次のように考えている。効果に違いがあるのは技術やフォーマットが原因ではない。一方は特定の有限なインプレッションの購入であり、もう一方は永遠に番組に埋め込まれ、リーチするリスナー数にも上限はないのだと。

同氏は、「ダイナミック広告挿入が問題なのではない。導入の仕方こそが問題なのだ」と指摘する。

この導入における問題の根本には、広告売買のペース配分がある。ダイナミック広告挿入の理論上の強みは、オーディエンスに向けて広告主がより正確にターゲティングできることだ。やろうと思えば、広告主は「This American Life」といった大ヒット番組向けに数週間、あるいはたった数日だけでも広告枠を買うことができる。

だが、広告主によるインプレッションの買い取りペースをうまく配分できるパブリッシャーやポッドキャストネットワークは少ない。「TED Radio Hour」を例にあげれば、100万のインプレッションの注文すべてがキャンペーンの最初の36時間に集中してしまう可能性がある。こうなると広告主はリスナーに複数回リーチできなくなってしまう。番組やネットワーク上でのインプレッションの配分は、いまだに人の手で行わなければならない場合もあり、非効率さに拍車をかけている。

残さた不確定要素



たとえ、パブリッシャーや広告主が配分戦略を考えたとしても、番組内でもっとも効率的な時間帯などの不確定要素は残ってしまう。

メディアエージェンシーのアドプターメディア(Adopter Media)でCEOを務めるグレン・ルーベンステイン氏は「(番組の)後半や、金曜日や土曜日に広告を出せるかどうかの違いは非常に大きい。このように枠ごとに効果は異なる一方で、どの枠を得られるかは決められない」と語る。

番組の頻度が異なることも、ベストプラクティスを計画する難しさに拍車をかけている。毎日放送されるポッドキャストの10分のニュースでは効果的な計画も、ノンフィクションの朗読をする隔週のポッドキャスト番組や、週に2度30分のポップカルチャー番組ではうまくいかないかもしれない。

マーケットエンジヌイティ(Market Enginuity)でポッドキャスト営業部長を務めるサラ・ヴァン・モーゼル氏は、「これに関しては買い手側の言い分はよくわかる。アドバイスもなしに、いきなりダイナミック広告に移るのは難しいだろう」としつつも、「だがすべては、まだはじまったばかりだ」とも付け加えた。

売り手の誤った期待



はじまったばかりにせよ、ダイナミック広告挿入は非常に高い価格で販売されていることに変わりはない。番組側が読み上げる広告のCPMは一般的に20から40ドルである一方で、ハウスタッフワークスが取りやめた形式のスポットごとのサードパーティーの広告のCPMは一般的にわずか4から5ドルにすぎない。それにも関わらず、メディアバイイングを行う4社に聞いたところ、番組の流れのなかで広告が読み上げられる場合も、あらかじめ読み上げた広告をダイナミック広告挿入で番組に配置する場合も価格はほぼ同じだという。

メディアエージェンシーのオックスフォードロード(Oxford Road)CEOのダン・グランガー氏は「いずれ是正されるはずだ。まだ価格がこなれていない。需要があまりに大きいため、売り手が誤った期待を持っているのだ」と分析する。

価格の是正が進むと、人気の高い優良ポッドキャスト番組を持つパブリッシャーは、こうしたサードパーティーの広告を募集しなくなる可能性がある。ハウスタッフワークスのホック氏は次のように語った。「地上波ラジオのような従来のプラットフォームの広告を、そのままポッドキャストのような媒体で流すのは注意が必要だ。それぞれの媒体の内容やオーディエンスについて理解しておく必要がある」。

MAX WILLENS(原文 / 訳:SI Japan)