『伊藤くん A to E』池田エライザ インタビュー 「夏帆ちゃんへの“好き”が重くなかったか不安」

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 岡田将生と木村文乃がW主演を務める映画『伊藤くん A to E』が1月12日に公開された。柚木麻子の同名小説を『ナミヤ雑貨店の奇跡』の廣木隆一監督のメガホンにより映画化した本作は、容姿端麗だが自意識過剰で無神経、関わる女たちの人生を翻弄するモンスター級の“痛男”伊藤誠二郎と、最初は伊藤に振り回される女たちに毒づきながら、自身も次第に伊藤に追い詰められていく崖っぷちの脚本家・矢崎莉桜を中心に巻き起こる騒動を描いた恋愛ミステリーだ。

参考:岡田将生の“クズキャラ”真骨頂! 映画『伊藤くん A to E』で見せる話術と笑顔

 今回リアルサウンド映画部では、伊藤に振り回される【A】〜【D】の女たちのひとり、愛されたい女【C】こと相田聡子を演じた池田エライザにインタビューを行った。男を切らしたことがないリア充女子に見えるが、実は今まで一度もちゃんと人に愛されたことがないという聡子に対する自身の考えや、夏帆や岡田将生ら共演者とのエピソード、さらに自身の恋愛観などについても語ってもらった。

ーー池田さんはこれまで高校生の役が多かったイメージだったのですが、今回の聡子役ではそのイメージがガラっと変わった印象を受けました。

池田エライザ(以下、池田):最近は割と20代の女性を演じることも多くなってきたのですが、やっぱりまだ女子高生のイメージが強いんです。それもヤンキーっぽかったり、ちょっと強かったりする女子高生(笑)。今回演じた聡子は、最初に脚本を読んだとき、自分自身がこのキャラクターを愛せる自信がなかったんです。

ーーそれはなぜでしょう?

池田:聡子の性格に対してあまりにも腹が立ってしまって。だから脚本も主観で読むことができなくて、客観的にしか聡子を考えることができませんでした。

ーー共感することができなかったと。

池田:ドラマ版の放送後の反響を見ると、「すごくわかる!」という声が多かったので、「やべーな、女子!」と思いながら、ちょっと人間不信になりました(笑)。それぐらい私自身は共感まではたどり着けませんでした。私だったらもう少し平和に生活します(笑)。周りの人たちから「博愛者」と言われるぐらい、私自身すごく愛情深い人間なんですよ。家族、友人、動物など、生きているものすべてに対して必要以上に愛情深く接してしまうので、性格的にも真逆でした。でも、実際に聡子の親友である実希役の夏帆ちゃんと会って、お芝居を始めて、夏帆ちゃんのことを好きになってからは、なんとなく聡子の気持ちがわかるようになったんです。他人から見たら嫌な女だけど、本当にただ愛情を知らないままモテてしまった。そして、親友の実希のことが大好きで、彼女に依存しているのに、それも報われることがない。そうやって、心にずっと寂しいものを抱えている女の子なんだと受け止めることができてからは、聡子のことがすごく愛しく思えるようになりました。

ーー映画では聡子の中での葛藤がうまく表現されているように感じました。

池田:聡子はすごくかわいそうな女の子で、抱えなくていいものを抱えすぎているんですよね。こんなに報われない女の子を演じることが私自身これまでなかったので、自分だけは聡子のことを好きでいたいなと。クランクアップのときは、「こんなに聡子のことを好きになるとは」というぐらい、本当に好きになることができました。

ーー聡子もそうですが、この作品に登場する人物はみんな、どこか何かが外れているところがあります。岡田将生さん演じる“伊藤くん”は、特に女性からしたら本当に嫌なやつですよね。

池田:すごく嫌ですね。こういう男の周りには聡子のような女たちが自ずと集まるんですよね。伊藤くんのように、弱さを隠すために自分を強く見せている人は本当にただ足りていないだけで、「努力をする」という努力さえしていない。そういう人をカッコいいとは思えません。私自身は自惚れていない、泥臭い人が好きです(笑)。でも、そんな嫌なやつである伊藤くんを、岡田(将生)くんが怪演していらっしゃって。

ーー好感度が下がってしまうのではないかと心配になるぐらいでした(笑)。

池田:本当に痛かったですね。私もこんな岡田くんを見たくなかったぐらいでした(笑)。私、中学生のときに岡田くんが出演していた『重力ピエロ』を観て、「こんなに美しい方がとても儚い演技をされていて素晴らしい!」と思ったんですけど、今回は「痛ってぇなー!」という感じで、中学生の頃の自分が観たらショックを受けてしまうのではと思うぐらいで(笑)。そこまでやり切っていらっしゃったので、私も聡子でいやすかったです。

ーーそんな伊藤くんと対峙する、崖っぷちの脚本家の“毒女”矢崎莉桜を演じた木村文乃さんとの共演はいかがでしたか?

池田:木村さんが莉桜先生としてバリアを張っている感じは本当にすごかったです。聡子としてはそれに気づいてはいけないのですが、その“壁”が目に見えるんじゃないかというぐらいで、こぼれないように抑えている繊細なお芝居でした。聡子には共感できませんでしたが、莉桜先生には共感できるところがありましたね。

ーーどのようなところが?

池田:私自身、強い役をやりすぎていて強い子だと思われてしまうところがあるので、「いまは強くないといけないのかな」「この人は強いエライザの言葉を求めているんだろうな」と思うことも日々多くて。本当はそんなに強くない、マイペースな人間なので、その辺りは莉桜先生と通じる部分があると感じました。

ーー先ほども話に上がりましたが、劇中での共演シーンが多い夏帆さんとは今回が初めての共演ですね。

池田:共演自体は初めてなのですが、園子温監督の『みんな!エスパーだよ』のドラマ版で夏帆ちゃんが、映画版では私がそれぞれ美由紀を演じていたこともあって、ずっと会いたいと思っていたんです。今回共演させてもらって、本当に夏帆ちゃんのことが大好きになりました。もうエライザのお姉ちゃんと言える存在ですね。

ーー夏帆さんはどんな方でしたか?

池田:本当にさっぱりしている方でした。もちろん知的なオーラもあるのですが、すごく気持ちのいい方で。夏帆ちゃんが演じた【D】の女・神保実希はだいぶおっとりしているのですけれど、実際は真逆でカッコいいんです。だから甘えたくなるところもあって、岡田くん同様、私を聡子でいやすくしてくれました。

ーー夏帆さんに対する池田さんの愛情がものすごく伝わってきます。

池田:カメラが回っていないときでさえも、嫌われてでもいいから側にいようと思っていました。側に夏帆ちゃんがいてくれたらそれだけで落ち着くほどだったので、夏帆ちゃんのことをすごく見ていたかもしれません。好きが重くなかったか不安なぐらいですね(笑)。

ーー映画版の監督を務めた廣木隆一さんの作品に出演するのは『オオカミ少女と黒王子』(2016)以来となりますが、今回ふたたび廣木組に参加してみていかがでしたか?

池田:『伊藤くん A to E』は、『オオカミ少女と黒王子』とはまた雰囲気の違う作品ですが、廣木さんの映画はどれも間違いなく面白いので、いつでも参加したいと思っているんです。今回この役がどういう経緯で私になったのかはわかりませんが、きっと廣木さんが私の弱い部分を見つけてくださっているからこそ、今回の聡子役をやらせてもらえることになったんじゃないかなと理解しました。廣木さんにはこれからもいろいろと暴かれたいです(笑)。

ーー映画では、ドラマ版と違う相手(映画版では岡田将生、ドラマ版では山田裕貴)と、まったく同じシーンを演じている場面もありましたね。

池田:なかなか経験することがないことなので、すごく変な感じがしました。ただ、実希の親友だからこそ、実希に近づく人を寝とってやるという聡子の魂胆は、相手が誰であろうと変わらないので、あまり違いは感じませんでした。ドラマと映画では監督も違いましたが、“やることは変わらない”というか……。

ーーそうなんですね。相手が変わると芝居に変化も生まれるものだと思っていました。

池田:演じているときはそこまで考えていたわけではありませんでしたが、そう言われて改めて考えてみると、確かに違いはあったかもしれません。山田裕貴くんはだいぶデフォルメしてコミカルに痛男を演じていたので、ちょっと笑いそうになったこともあったんです(笑)。それはそれで痛男を象徴していたのですごくわかりやすかったですし、岡田くんはダイレクトに痛い感じを表現されていたので、私の演技にも変化が出ているかもしれません。

ーーそういう意味では、映画とドラマを見比べてみるのも面白いかもしれませんね。

池田:そうなんです。特に【C】の女と【D】の女に関しては、ドラマの方でケンカをするシーンがあって、映画版では【D】の視点が多く、ドラマ版では【C】の視点が多いんです。なので、2人の関係性がなぜそうなったのか、そこはドラマを観ていただくとよりハッキリとわかるので、映画とあわせてドラマの方もぜひ観ていただきたいです。(取材・文=宮川翔)