米国ラスベガスで開催中の「CES」で発表するソニーの平井一夫社長(筆者撮影)

ソニーは、米国ラスベガスで1月9〜12日開催の「CES 2018」においてもテレビ事業向けに「X1 Ultimate」と呼ばれる8K放送にも対応可能な映像処理エンジンを発表するなど積極的な姿勢を見せた。しかし、多くの発表があった中でも、特に注目されたのが自動車向け事業だ。

2014年に参入を発表していた自動車向けセンサーデバイス事業についても、トヨタ、日産、現代自動車(HYUNDAI)、起亜(KIA)自動車といった自動車メーカーに加え、ボッシュ、デンソー、Mobileye、NVIDIAといった自動車向け電装部品大手との協業について言及。足元の事業が好調というだけではなく、将来に向けた投資が実を結びつつあることをアピールした。

手応えのある年末商戦だった

ソニーの2018年3月期の営業利益は6300億円へと急回復する見通し。この予想どおりに落ち着けば前期比で2倍以上、3400億円の増益である。


CESでの発表を終えた社長兼CEOの平井一夫氏は増益要因について、累計で7300万台を販売したPlayStation4の貢献、PlayStation Networkの成長を主因としながらも、テレビ、オーディオ、デジタルイメージング製品などエレクトロニクス部門がソニーの事業全体を支えたと説明した。また、「第3四半期決算の発表を控えているため、具体的な言及は避けたいが、かなり手応えのある年末商戦を戦えた」とも話した。

しかし、平井氏は次のようにも語る。

「3400億円の増益要因の多くは2016年の熊本地震など特別な要因で失っていた売り上げや利益を取り戻したもので、実質的な増益分は1300億円。しかも、その半分は為替によって生まれたもので、実質的には650億円程度上振れしたにすぎない。まだまだ実力は不足の面もある」

社内においては、経営幹部だけでなく若手社員との交流の場でもこのようなことを話し、手綱を締めているという。

通期の営業利益は連結ベースで6300億円に達する見込みだが、「大成功だと浮かれた気分で“ビクトリーラン”を気取ってしまうことが、今のソニーにとってはいちばんのリスク。役員幹部、社員を含め、好調な数字に気を緩めれば、すぐに3〜4年前に経験した厳しい時期に逆戻りする」(平井氏)。

加えてソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの事業を黒字化することも、ソニーグループ全体のテーマとして挙げた。パッケージ製品の販売落ち込みなどから映画会社の収支が悪化している中、ディズニーが20世紀フォックスを買収するなど、業界再編の動きがある。その中で2017年には『スパイダーマン:ホームカミング』『ジュマンジ』『ブレードランナー2049』などヒット作が続いたが、2018年以降も継続できるかどうかはわからない。

ディズニーによる20世紀フォックスの買収やNetflix、Amazon Prime Videoの自主制作映画の台頭など、映像制作ビジネスの先行きをどう舵取りするかは難しい時期だ。

数字の上では好調なソニーだが、持続的な成長のためには現在の市場環境に見合う新しい事業モデルが不可欠ということだ。

車載センサー分野で優位性

そうした意味でも、注目分野はやはり自動車向けイメージセンサー事業なのである。

前述したように、2014年のCESでデジタルイメージング部門の新規事業として車載向けの開発を進めているとアナウンスしていたソニーだが、これまで具体的なことは何も話してこなかった。それだけに、具体的な協業先がアナウンスされた意味は小さくない。


「家電事業は、毎年第4四半期が鬼門」と語る平井社長(筆者撮影)

ソニー製車載センサーの優位性は、明るいシーン、暗いシーンの両方をとらえられる広いダイナミックレンジ、高精細化による遠距離オブジェクトの認識能力の2つに集約できる。

圧倒的にSN比(信号対雑音比)のよいセンサーを生産するソニーの優位性は明らかだが、単なる部品メーカーならば、いずれ技術で追いつかれ、コスト競争力を失っていく。

平井氏も「半導体として優れているだけでは、将来的にセンサーの性能で追いつかれた途端に事業価値を維持できなくなる」と認めたうえで、「自動車向けセンサー事業においては、各パートナーと独自性の高いアプリケーションや機能を開発することでより親密な関係を築いている。単なるセンサーのサプライヤーで終わらない」と話した。

未発表の領域あり

自動運転時代を見据えた自動車向けセンサー事業の収益化までには「数年はかかる見込み。まだ時期は見えていない」(平井氏)というが、一方で自動車メーカーとの“協業の一部を発表”しただけであり、その応用例についても未発表の領域があるという。

「家電事業は、実は毎年第4四半期が鬼門となる。好調と思っていても、年末商戦が終われば在庫調整が入ることも多い。本当に通期6300億円の利益が出せるかどうか。どこまで行けるかは、1月からの3カ月をどうコントロールするかで決まる。加えて言うならば、4月からはゼロリセット。そこからの1年、さらに前に進んでいかねばならない」(平井氏)

優位性のある自動車向けセンサー分野で着実に成果を積み上げていけるかどうか。それが、今後の課題といえるだろう。