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もくじ

どんなクルマ?
ー 英国では苦戦してきた歴代LS
ー 正常進化にスパイスを加えて

どんな感じ?
ー デザインは徹底的に メカニズムは…
ー おもてなしも満点だが、弱点はエンジン
ー 期待以上 しかし強豪相手には不足も

「買い」か?
ー このクルマにふさわしい、もっと強力なエンジンを

スペック
ー レクサスLS500hプレミア4WDのスペック

どんなクルマ?

英国では苦戦してきた歴代LS

1989年当時、レクサスUKの責任者にフラッグシップたるLSの5世代目と18年後の年間販売台数を予想してもらったところ、100台は上回るだろうと答えた。

しかし、現在その職にあるユアン・シェパードは、LS500hの2018年の販売状況はそこに留まらないだろうと考えている。公正を期すために言うなら、英国では1月2日に発売されたばかりであり、必然的に新車効果での売り上げが見込めるだろう。

それでも、シェパードが見込む数字は年間150台程度だという。同じ期間に、メルセデスは2500台のSクラスを売ろうとしているというのにだ。

これまでもLSは、英国では苦戦を強いられてきた。

正常進化にスパイスを加えて

これまでもLSは、英国では苦戦を強いられてきた。

最も売れたのは世界金融危機寸前の2007年だが、それでもせいぜい400台程度だ。

もっとも、それは自業自得といえる部分もある。ディーゼルを設定しなかったことで、相当数の見込み客を逃したと考えられるからだ。

一方で、中身を吟味することなく、とにかく高いクルマを買おうとするようなユーザーが高級車市場には少ないことが、レクサスにはマイナスに働いたという側面もある。

ただし、英国ほど保守的ではないマーケットでは大いに成功を収めているだけに、新型LSが大きなイメージチェンジを図ることはなかった。

ただし、その路線を徹底的に煮詰めた正常進化でありながら、より活気ある雰囲気もそこには盛り込まれている。

以前より低く、広く、長いボディは、スタイリングもずっと大胆になった。ファンキーすれすれ、と言ってもいいほどで、非凡な風采と、ほとんど狂気的なまでのディテールへのこだわりを併せ持っている。フロントのスピンドルグリルは5000もの面があるというもので、デザインには14週間を要したという。

どんな感じ?

デザインは徹底的に メカニズムは…

ルックスも、キャビンのデザインの衝撃的な要素の数々も、本当に好きだ。実にラグジュアリーで、しかもモダンだが、それを両立するのは難しく、巧妙なやり方が必要だ。

さらに、試乗した4WDを備えるトップグレードのプレミアでは、並外れたマテリアルがふんだんに用いられ、ドアポケットの内側のような、ジャーナリストでもなければ気にしないような箇所にまでそれは及んでいる。デザイン面には、文句のつけどころがない。

その他の領域に関してはやや、いや、デザインの徹底ぶりと比べるとかなり粗が目に付く。気になるのは、広告やプレゼンテーションで、パワートレインやシャシー、プラットフォームといったメカニズムに言及するのがいちばん後回しになっていること。折り紙をモチーフにしたキルティングレザーのドアトリムの方が、優先順位が上だといっているかのように思われた。

誤解のないように言っておくと、その素材も仕上げも素晴らしい。しかし、それも、本木目をいかに木目調のように見せる加工を施したかということも、エンジンなどより先に説明する必要があるとは思えないのだ。

ちなみにエンジンはノンターボの3.5ℓV6で、単体出力は299psだが、ハイブリッドシステム全体での出力は359ps。FRと4WDがラインナップされ、いずれもサスペンションは前後マルチリンクを採用する。

おもてなしも満点だが、弱点はエンジン

残念なことに、危惧した内容はおおむね当たっていた。LSへと向かい、ドアを開けて乗り込むまではドラマティックな瞬間に満ちている。ドアハンドルにはイルミネーションが点き、ミラー内蔵のスポットライトは足元を照らす。シートベルトは、バックルが自動で50mm上下し、装着しやすくしてくれる。シートのアジャストは28ウェイ、マッサージ機構は全身コースと部位別3コースの5通りが選べる。

インテリアは魅力的というのを通り越し、魅惑的とでも言ったレベル。ダッシュボード幅いっぱいに広がるのは、琴をイメージしたというマグネシウムのフィンだ。乗り込むまでの体験を重視するなら、これに勝るクルマはない。しかし、走り出すと様子が変わってくる。

最大の問題点は、明らかにエンジンだ。試乗車の車輛重量は2420kgと、同程度のパワーを発するV6モデルのアウディA8より500kg近く重い。その重量を走らせるには、エンジンを目いっぱい回さねばならない。

もしもこれが、素晴らしいサウンドのV12や、轟音を発するV8だったなら、それも望むところだ。ところが線の細いV6は、最大トルクの発生点が5100rpmと高い。4段+仮想6段の10段変速をもってしても、これはカバーできない。高速道路の登り勾配では、時として4000rpm以上回さないとペースを保てず、苦しげな音すら発する。

こう言っては何だが、ガソリンだろうがディーゼルだろうが、ターボユニットを積む主なライバルたちであれば、アイドリングより少し上の回転数から、静かで力強い加速をみせる。7万2595ポンド(1104万円)〜9万7995ポンド(1490万円)という価格のクルマに、この自然吸気V6がふさわしいとは言い難い。

期待以上 しかし強豪相手には不足も

それを別にすれば、このクルマはレクサスのフラッグシップに期待する以上のものを見せる。

全車標準装備のエアサスペンションは、このクラスに求められる乗り心地の水準に達しており、飛ばして楽しいものではないが、不快なところも全くなく、正確で、長い高速コーナーでは落ち着いた身のこなしを示す。

とはいうものの、この手のクルマであれば卓越していなければならないような領域を深く検分してみると、驚くほど物足りない。たとえばショーファードリブンを想定するなら、後席のヘッドルームには問題がある。190cmほどの身長だと、髪がルーフに触れてしまう。

タッチパッド式の操作系にも期待していたのだが、他のレクサス車で同様のデバイスに触れており、このクルマでも長い時間使ってみたにもかかわらず、好きになれるどころか、スムーズに操作することさえできなかった。

結局、これはデザイナーの自己表現に多くを費やしたクルマだ。そして、その手のクルマにはよくあることだが、デザイナーの自由は、その代償にエンジニアリングへの妥協を強いるものだ。このLSに関していえば、機能とフォルムの間には大きな開きがある。

最大の問題は、これがマイナーチェンジでリフレッシュしたメルセデス・ベンツSクラスやクラスベストといえるBMW 7シリーズ、また極めて効率のいい新型アウディA8などに対抗しなければいけないということ。

今のところ、英国でこのLSを選ぶのは、そうしたドイツ勢の予定調和が気に食わないという少数派だけではないだろうか。反骨精神の持ち主のためのクルマ、と言ってもいい。

このクルマにふさわしい、もっと強力なエンジンを

個人的には、レクサスが他とは違うことをしようと試み、モダンかつ個性的で魅力的な高級サルーンを創り出したことには好感が持てる。その点では成功したクルマだ。

しかし、多人数を乗せて長距離を走るものとしては、たいていスタイルなどの重要度は二の次になる。となればLS500hは好ましいクルマではあるが、実質的には失敗作といわざるを得ない。パッケージングはこれほど大きなクルマとしては不十分で、しかも重すぎ、操作もしづらい。

だが、すべてを台無しにしているのはエンジンに他ならない。はっきり言うなら、こういったクルマにはふさわしくないシロモノだ。

副チーフエンジニアの岸田晋二氏に、なぜ英国以外で販売されるV6ツインターボをベースにハイブリッドを仕立てなかったのか尋ねてみると、このエンジンは新開発で、ハイブリッドシステムに組み込むには時間がなかったという。

では、開発は進んでいるのだろうか。その疑問をぶつけてみると、彼は満面の笑顔でこう言った。「それは秘密です」と。

もっと洗練されたキャラクターと溢れるような低回転域のトルクを備えたエンジンを積めば、このクルマはまったく違うものとなるだろう。

しかし現時点で言及できるのは、LS500hには見込みがある、という可能性だけだ。5世代を重ねてきたLSには、現状以上のものを期待したい。


レクサスLS500hプレミア4WDのスペック

■価格 9万7995ポンド(1490万円) 
■全長×全幅×全高 5235×1900×1460mm 
■最高速度 250km/h(リミッター作動) 
■0-100km/h加速 5.5秒 
■燃費 14.1km/ℓ 
■CO2排出量 161g/km 
■車両重量 2420kg 
■パワートレイン V型6気筒3456cc+モーター 
■使用燃料 ガソリン 
■最高出力 359ps/6600rpm 
■最大トルク 35.7kg-m/5100rpm+30.6kg-m 
■ギアボックス CVT+4速副変速機