ミルウォーキー・バックスのスター候補、ヤニス・アデトクンボ【写真:Getty Images】

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アデトクンボがレブロンらスター選手を押さえて球宴ファン投票の中間発表で1位

 NBAオールスターのファン投票と言えば、レブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ)、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)といったMVP受賞経験のあるスーパースターたちがトップに来ると誰もが考えるかもしれない。しかし、今年度の第1回途中経過では、フレッシュな名前が最多得票を獲得した。

 ミルウォーキー・バックスのスター候補、ヤニス・アデトクンボは全体1位となる合計86万3416票をゲット。まだプレーオフでのシリーズ勝利経験もない23歳が、レブロン・ジェームズ(85万6080票)、ケビン・デュラント(76万7402票)、ステフィン・カリー(73万5115票)を上回るサポートを得たことはセンセーショナルだった。

 もっとも、アデトクンボのここまでのキャリアを振り返れば、ファン、関係者がエキサイトするのは当然に思えてくる。ギリシャ生まれの怪童は、過去4年連続で得点、リバウンド、アシスト、ブロックの平均値をすべてアップさせてきた。5年目の今季はリーグ2位の平均28.7得点を挙げ、早くもMVP候補の1人に挙げられている。

「ヤニスはレブロン・ジェームズ、コービー・ブライアント、マイケル・ジョーダンに匹敵する稀な選手だ、今後何年も、私たちは彼のプレーを楽しめるのだろう」

NBA史に残る才能…NO1への鍵はチームを勝利に導くこと

 2016年12月に行われたブリックリン・ネッツ戦の際、バックスのジェイソン・キッドヘッドコーチがアデトクンボをそう評したことがあった。“バスケットボールの神様”と称されるジョーダンや、“キング”ことレブロンらとの比較は、当時はまだ大げさな身びいきにしか思えなかったが、今ではもうそこまで荒唐無稽なコメントには感じられない。

 身長211センチ、ウイングスパンは221センチという恵まれた体躯を持ち、とてつもない高さのダンク、ブロックで見る者の度肝を抜いてしまう。ゲーム中に決まってハイライトになるようなシーンを演出し、米スポーツ専門放送局「ESPN」のスポーツ情報番組「スポーツセンター」で選出されるその日のトップ10プレーの常連になった。それほどのバネとポイントガードをこなすほどのスキルを兼備する大器は、紛れもなくNBA史に残るタレントだ。

 もちろんこれから先に試練は経験するのだろう。センセーショナルではあっても、まだ細かいゲームメイクに粗さは残っている。“近未来のNO1プレーヤー候補”とは呼ばれているが、プレーオフでチームを勝利に導けることを証明する必要がある。昨季に続いて今季もポストシーズンで勝てなかったとすれば、風当たりが強くなるかもしれない。

 ただ、1月6日のワシントン・ウィザーズ戦では、アデトクンボは34得点、12リバウンド、7アシスト、2スティール、1ブロックのオールラウンドゲームでチームの勝利に貢献した。その試合後のこんなコメントを聞いた後、この天才児の明るい未来を想像せずにはいられなかった。

「キッドHCに『今日は多くの時間をプレーしなければいけない』と言われた。僕は『構わないよ。僕はバスケットボールをプレーするのが大好きだからね』という感じだった。みんな疲れているけど、それでも戦わなきゃいけない。自分の仕事をやらなきゃいけない。今日、僕はそれをやっただけなんだ」

「プレーするのが大好き」である限り、無限の伸びしろが残っている

 2日連戦の2戦目であっても、アデトクンボの動きは最後まではつらつとしていた。仕事を楽しむことができている限り、必要以上の疲れは感じない。プレーするのが大好きな限り、伸びしろは常に残っている。この23歳の若者の行く手には、まさに無人の広野が広がっていると言っていい。

 このまま大きな怪我もなく、プレーを楽しみ続け、伸びやかに成長して欲しいと願わずにはいられない。他の誰もできないプレーができる通称“グリーク・フリーク”は、キッドヘッドの予言通り、これからも長く私たちを喜ばせてくれる稀有なプレーヤーに思えるからである。(杉浦大介 / Daisuke Sugiura)

杉浦大介
1975年、東京都生まれ。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、ボクシング、MLB、NBAなどを題材に執筆活動を行う。主な著書に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)、「イチローがいた幸せ」(悟空出版)。