現代社会を生きるビジネスパーソンにとって、歴史は単なる教養を超えて、生き抜くための武器になる。その最大のメリットは「未来を予測する能力が高まる」こと。カギとなるのが「弁証法」だ。では、なぜ歴史を学ぶと未来を予測する能力が高まるのか?MBAを取らずに独学で外資系コンサルタントになった山口周氏が、知識を手足のように使いこなすための最強の独学システムを1冊に体系化した『知的戦闘力を高める 独学の技法』から、内容の一部を特別公開する。

人類のらせん状の発展から未来を予測する力を身につける
――歴史は発展しつつ、再び原点に回帰する

 現代社会を生き抜いていこうとするビジネスパーソンにとって、歴史を学ぶことの意味とはいったい何なのでしょうか?人によっていろいろな答えがあると思いますが、ここでは二つの点を指摘したいと思います。

 一つ目は、「目の前で起きていることを正確に理解することができる」ということです。なぜそう言えるかというと、これからの世の中で起きることのほとんどは、過去の歴史の中で起きているからです。

 もちろん、起きていることを表面的に捉えれば、現在の私たちが向き合っている世界は、これまでなかったものです。しかしそれを、内部で動いているメカニズムまで踏み込んで考察してみれば、ほとんどの事象について、同様のメカニズムが働いていた歴史的事件があったはずです。

 二つ目は、「未来を予測する能力が高まる」ということです。なぜ、歴史を学ぶことで未来を予測する能力が高まるのか?ここでカギになってくるのが「弁証法」です。

 弁証法とは、ある命題Aが提示された後、それを反証する命題Bが提示され、双方の軋轢を調停するかたちで、新しい命題Cが提示されるという動的な思考のプロセスを示す哲学用語です。

 では、歴史と弁証法にはどのような関係があるのか。歴史は弁証法的に発展していく、と指摘したのは哲学者のヘーゲルでした。ヘーゲルによれば、歴史は、最初に提示された命題Aが、次に命題Bによって否定され、最終的にそれを統合するかたちで、命題Cに落ち着くことで発展してきました。

 このとき、歴史は「らせん状」に発展します。らせん状に発展するというのはつまり、回転と発展が同時に起こるということです。発展しつつ、原点に回帰する。これが弁証法の考え方です。

 具体的な例を出して考えてみましょう。たとえば教育システムがそうです。現在の日本では、同じ年齢の子どもたちが同じ学年に所属し、時間割ごとに同じ教科を学ぶという仕組みが採用されています。

 小学校から高校までの12年間を、基本的にこの仕組みで過ごしてきた私たちにとっては、これ以外の教育システムなど考えられないと思いがちですが、実はこのような仕組みは、過去において長らく実施されてきた教育システムとは大きく異なるものです。

 たとえばかつての寺子屋では、年齢のバラバラな子どもたちが一箇所に集まり、それぞれが個別に勉強をしながら、教師が勉強を支援するという仕組みが長らく続いていました。

 現在の私たちからみれば奇異に映るかもしれませんが、歴史的にはこうした教育システムの方がずっと長く続いていたわけです。

 さて、それでは今後の教育システムはどうなっていくでしょうか?恐らく、かつての寺子屋のような形態に再び戻っていくだろうと私は考えています。実際、学力世界一を誇るフィンランドの義務教育の仕組みは、すでにこのような「寺子屋型」スタイルになりつつあります。

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