「Thinkstock」より

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 今回は身近な薬で税金が安くなる特例について、女性公認会計士コンビ、先輩の亮子と税務に強い後輩の啓子が解説していきます。

啓子「あ!」

亮子「レシートを見て何を驚いているの?」

啓子「最近薬局で医薬品を購入した際のレシートに『●(編注:星印)印の商品はセルフメディケーション税制の対象商品です』という記載があったんです!」

亮子「へえ!レシートっていろいろおもしろい情報が書いてあるよね。ところで、セルフメディケーションって、要するに市販の薬などで、自分で健康のケアをするということ?」

啓子「セルフメディケーションという言葉は、世界保健機関(WHO)において「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されているそうです」

亮子「日本では、2017年1月1日からセルフメディケーション税制が始まったよね?」

啓子「はい。医療費控除の『特例』としてセルフメディケーション税制が始まりました。購入した医薬品がセルフメディケーション税制の対象商品なのかレシートに記載されるといった税制対応のレジも出てきています。この制度は、今まで医療費控除の対象とならなかった特定の医薬品等の購入費を支払った場合にも、医療費控除のように税金が軽減される制度です。内容について整理してみますね!」

●医療費控除の特例としてのセルフメディケーション税制

 セルフメディケーション税制は一定の条件を満たした人が、特定一般医薬品を1年間に1万2000円を超えて購入した場合に、超えた部分の金額を所得から差し引くことで税金を軽減するという制度です。従来の医療費控除は主に治療を受けるために支払った医療費を対象に、一定金額以上医療費を支払った人には税金を安くしますよ、という制度でした。2017年から始まったセルフメディケーション税制は、この医療費控除の特例です。健康診断等を受けている人が、軽度な身体の不調を市販薬などによって自ら手当をして生活の質を改善し、国の財政を圧迫する医療費の適正化に貢献しているということで、特定の市販薬を購入した費用を負担した人については税金を安くしましょうというものです。

 注意したいのは、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できない、という点です。そのため、どちらの控除を利用したほうが良いのか比較する必要があります。また、これまでそれほど医療費がかからず、医療費控除を利用できなかったという人でも、セルフメディケーション税制なら利用できるという場合があります。

●いくら税金が軽減されるのか?

 セルフメディケーション税制は支払った市販薬等の購入費用のうち、一定金額を所得から控除することで税金負担を軽くする仕組みです。どの程度軽減されるかは、所得の金額によって異なります。所得によって所得税の税率が異なるためです。この点は、従来からある医療費控除と同じです。具体的には、

・セルフメディケーション税制で軽減される税金 = 控除額 × (所得税の税率 + 住民税の税率)

となります。例えば、給与収入600万円会社員(給与収入以外の収入なし)の場合。所得税率を20%、セルフメディケーション税制による控除額が4万円であると想定すると、所得に課せられる住民税率は一律10%なので、

・軽減される税金 = 40,000円 × ( 20% + 10% ) = 12,000円

ということになります。

●セルフメディケーション税制を利用するための3つのポイント

 ただし、医療費控除と同様、薬代などをすべて控除できるわけではありません。第一に、控除対象となる商品が厳密に決められています。対象品目となるのは特定医薬品であり、ドラッグストア等で購入できる医薬品のすべてが対象となっているわけではありません。

 第二に、控除できる額には限度があります。対象品目の購入費であれば、いくらでも控除できるというわけではありません。第三に、セルフメディケーション税制を利用するための要件があります。きちんと健康診断を受診している等、税制利用のために必要なことがあります。この3つのポイントをクリアして、なおかつ医療費控除より有利な場合に、セルフメディケーション税制が力を発揮する、というわけです。

●どんな費用が対象になるの?

「特定一般用医薬品等購入費を支払った場合」に、セルフメディケーション税制を適用することができると定められています。この「特定一般用医薬品等購入費」とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)と、ドラッグストアで購入できるスイッチOTC医薬品(医療用医薬品の成分を含み、処方箋なしで買える市販薬)の購入費をいいます。具体的には以下のような方法で、対象品目であるかどうかをチェックすることができます。

(1)対象品目一覧表を確認する

 セルフメディケーション税制の対象商品は厚生労働省から「対象品目一覧」として公表されています。以下の図は厚生労働省のウェブサイトから一部抜粋したものです。五十音順で販売名が並び、販売名と製造販売業者名が記載されています。

(2)識別マーク

 医薬品を購入する際、商品に以下のマークが付いているか確認しましょう。以下のマークが表示されていればセルフメディケーション税制の対象医薬品です。

 なお、このマークの表示は義務ではなく、すべての対象商品についているわけではありません。マークのない商品については、最終的には、前述の一覧で確認する必要があります。

(3)購入したレシートを確認する

 ドラッグストア等で買い物をしたらレシートを確認してみましょう。セルフメディケーション税制に対応しているレジを使っているお店であれば、セルフメディケーションの対象商品であることがわかるようになっています。例えば、商品名の前に星印などが印字してあったり、対象商品のみ抜き出した合計額が記載されていたりします。なお、セルフメディケーション税制を利用するためには、確定申告が必要になります。その際、証明書類(レシート等)には次の項目が明記されていることが必要になります。

・商品名
・金額
・その商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨
・販売店名
・購入日

 この5つの項目が記載されていれば、レジから出力されたレシートでも手書きの領収書でもどちらでも構いません。もし、レジから出力されたレシートに5つの項目の記載がない場合は、手書きの領収書を受け取っておくと安心です。手書きの領収書の場合は、ただし書として「セルフメディケーション税制対象商品購入代として上記正に領収いたしました。商品名『〜』 かぜ薬1点、〜薬1点…」といったようにすべての対象商品を書いてもらう必要がありますので漏れがないように注意してください。

 さて、このような商品の購入額を控除できるわけですが、具体的な金額については次回、触れていきたいと思います。

亮子「対象商品となるかどうか、とにかくレシートを集めておく必要がありそうだね」

啓子「そもそも、『セルフメディケーション税制』というものがあることを覚えておいていただけたら、と思います。」

亮子「実際に税制の優遇を受けるためには、確定申告が必要なんだよね?」

啓子「はい。その点は次回ということで!」
(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)