坂元裕二が2018年に描く“大切なもの”とは? 次屋プロデューサーが『anone』に懸ける信念

写真拡大

 今年もまた、坂元裕二の季節がやってきた。昨年には『カルテット』(TBS系)、その前の年には、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)がこの時期に放送され、まだ、記憶に新しいほど鮮明に残っている人も多いのではないだろうか。

 観ていて胸が詰まるような登場人物たちの苦しい境遇を描きながら、周りの人々との関わり合いの中で生まれる温かさや幸せを映し出す坂元脚本。作品中の登場人物たちの会話には、ハッと大切な何かを気づかされることも多く、耳を澄まし、登場人物たちの所作や身の回りにあるものを一つひとつ、画面の隅から隅までを見逃してはならないと、釘付けになってしまう。寒い冬にこそ心の底から温まることができる作品が毎年放送され、坂元脚本作品は冬ドラマの代名詞となりつつもある。

参考:『anone』1月10日放送 第1話場面写真

 そして、今年放送されるのが『anone』(日本テレビ系)だ。本作は、“人が生きる上でほんとうに大切なものはなにか?”を人々に問いかけ、真実の人間愛を見つけていく物語。第1話の試写時には、次屋尚プロデューサーが、本作で坂元が描くものについて明かしていた。

「リアリティのあるセリフ回しが非常に定評を受けている坂元裕二脚本ですが、その面はもちろん評価しつつ、日本テレビで坂元さんに脚本を書いてもらう時は、“ストーリー性”を重視していただいています。昨今のテレビドラマの中にあって、“作品性を問うドラマ”をリリースしたいと考えました。『Mother』、『Woman』の時も、“いま必要なドラマとはなんなんだ”ということを世の中に問いかけた作品で、その第3弾として『anone』があります。洗濯物を畳みながら、ごはん食べながら、気軽に観るというドラマとはちょっと違うかもしれません。じっくり観てもらいたいドラマとして今回の『anone』を制作しました」

 本作が放送される日本テレビ水曜ドラマ枠では、昨年から、『過保護のカホコ』、『奥様は、取り扱い注意』と、視聴率、ネット上での反響ともに好調が続いている作品ばかり。それぞれの作品で、高畑充希、綾瀬はるかが演じてきた“エキセントリックなヒロイン像”に比べ、本作の主演・広瀬すずが演じるのは、自分の世界に閉じこもりがちで、どこか挙動不審の19歳の少女。作風も含め、同枠の過去2作のコミカルで破天荒さのあるストーリーとは、またガラリとイメージが異なる印象を持った。

 次屋プロデューサーは、今期の水曜ドラマ枠に対しての意気込みも語っている。

「水曜ドラマでは、よく女性を主人公とした“お仕事もの”が、社会を象徴するリアリティのある作品として制作されてきていますが、本作で描く、記憶だったり、人がそれぞれ心の中に持っているものもひとつのリアリティであって、必ずしも目の前で起こっているものばかりがリアリティではないと考えています。本作の中で報道的、あるいはジャーナリズム的に何かを訴求したいとか、世の中を変えたいと思っているわけではありません。視聴率を無視することはできませんが、ただ視聴率をとるためだけの仕事はしたくない。こういう作品が今後必ず必要にはなってくる作品であるという信念は持っています。それが視聴率に繋がるテレビ界になりたいという思いも込めて、このドラマを水曜ドラマにかけさせていただいています」

 共演に名を連ねるのは、田中裕子、瑛太、小林聡美、阿部サダヲといった実力派の役者たち。坂元脚本お楽しみの会話劇のおすすめシーンでいうと、第1話での見どころは、阿部演じる持元舵と小林演じる青羽るい子のカレーショップでのやりとり。意気投合した持本と青羽の2人が、出会って旅に出る最中の会話の中には、深いメッセージも挟まれていた。

 次屋プロデューサーは、記者からの質問に対して「結末は、坂元裕二が決めるのでわからない」と答えていた。第1話を観ただけでも、結末だけではなく、話の中で心を動かされるポイントが毎週散りばめられているであろうことが予測できた。登場人物たちが織りなす人間関係から、大切な何かを教えてくれる作品になるだろう。本日の第1話からじっくりと観てもらいたい。

(大和田茉椰)