9日、握手をかわす韓国の趙明均統一相(右)と北朝鮮の李善権・祖国平和統一委員会委員長(左)(AFP/Getty Images)

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9日、南北閣僚級会談が朝鮮半島の軍事境界線にある韓国側施設で行われた。国連の経済制裁措置により国の運営に痛手を被る金正恩政権は、南北会談で「平和主義」を口実に、米韓同盟にくさびを打ち、北朝鮮への制裁解除や追加援助を実現するよう、緻密に計算された戦略を仕掛けている、と専門家は見ている。

北朝鮮は長年に渡り、二重交渉や時間を浪費させるための取引を行ってきたことは、過去の交渉で明らかになっている。

韓国の保守系の評論家である黄荘秀(ファン・ジャンス)氏は9日、自身のSNSで、ムンジェイン政権の金正恩政権に対する要求は、1.北朝鮮一団による平昌五輪参加、2.南北離散家族の交流再開、3.朝鮮半島の非核化による平和協定と米朝関係の緩和だとの分析を示した。

会談は冒頭のあいさつ以外は非公開だが、朝鮮日報10日付によると、双方の会談は8回にわたり計264分間顔を突き合わせたという。韓国側の要求のうち、1については9日に北朝鮮が参加を正式に表明した。選手団のほかにも「高官級代表団、応援団、参観団など歴代最大の規模と推定されるオリンピック代表団を送る」との意向を示した。

しかし、2と3については合意に至らず、同紙によると北朝鮮側は非核化について「締めくくりの会議で多くの時間を割いて強い不満を表明」し、断固拒否した格好だ。いっぽう「緊張を緩和させる目的」で南北の軍事当局会談の開催には合意したという。

「北の態度軟化に期待せず、核保有国として認められることを狙っている」

ソウル拠点のシンクタンク峨山政策研究院の副代表チェ・カン氏は、南北高官会談の実現という北朝鮮の姿勢軟化について「国際的な経済制裁のダメージを無視できなくなっているのではないか」と指摘した。根拠として、金正恩氏は年始のスピーチで「制裁」「圧力」「孤立」という言葉を多用していたことを挙げた。

「金正恩氏は、制裁措置の中で揺れ動いている。ソウルとワシントンの間にくさびを打ち、経済制裁の解除を狙う、徹底して計算された『平和』を名目とした攻撃手段だろう」「基本的には、世界で北朝鮮が『核保有国』として認められることを掲げている」と、同院発表の報告でチェ氏は指摘した。

チェ氏は、北朝鮮側の態度軟化に期待を抱いてはならないと警告している。「聞こえのいい言葉は譲歩させるための罠に過ぎない」

在韓米軍が退去、それから南北協議 米国との対話に利用

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現在、韓国には米軍が駐留している。「韓国から米軍が撤退したのち、北朝鮮は初めて韓国と協議を始める。これを米国と『対話』するための道具とするだろう」と、ソウルの北韓大学院大学校ヤム・ムジン教授は述べた。

トランプ大統領は南北高官会談について「100%信頼する」と発言している。この真意については、前出のファン・ジャンス氏は、「米国が韓国の動きをコントロールしていると表明すれば、将来、北朝鮮の威嚇行動について、米国は責任を求められるかもしれない。トランプ氏の発言は、ただ韓国に同調する意味だ」と指摘した。

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「北朝鮮にとって、オリンピックなどのスポーツは政治手段に過ぎない。『平和主義』を口実に『平和とスポーツの祭典』である五輪を利用し、韓国から経済支援を受ける理由をつくり、制裁の抜け穴にしようとしている」とファン氏は続けた。

北朝鮮側は会談内容を「内外の関心や期待も大きい」として全面公開を主張し続けていた。この狙いについては、韓国のムンジェイン政権と国民の左傾化(戦争反対、平和、親北)を利用する宣伝戦略として、突然呼び掛けたのではないかとファン氏は見ている。

「平和主義を宣言しつつ、世界に『自分たちはアメリカによる被害国』だと訴える布石のようだ。米韓連合訓練と戦略資産配置を中止、縮小、廃止にまで追い込み、米韓同盟を弱化させようとしている」「金正恩政権は、内部対立がある韓国政治の足元を見て、ムン政権の正当性を強調させ、米国との関係を弱め、中国寄りにさせるように図ってるのではないか」。

(翻訳編集・斎潤/佐渡道世)