会社がつらい、辞めたい……。そう思う人は、仕事そのものというより、職場の人間関係で行き詰まっていることも多いかもしれません。自分自身に原因があるとは限りません。会社のあちこちに生息する「困ったおじさん、おばさん」に追い詰められていることも。
そんな恐るべき現場を数多く見てきたのが、元外資系OLでコラムニストのずんずんさん。この連載では、そんな彼らの生態を解き明かし、対策も考えていきます。

新年あけましておめでとうございます。ずんずんです。イケてる東洋経済オンライン様のイケてるビジネスメンたちのために今年も獅子奮迅の勢いで……今年もよろしくお願いします!

さてはて、年始年末のお休みもさくっと終わって、お仕事モードの方も多いかと思われますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。年が変わってもオフィスにお悩みは尽きないものですよね。

たとえば、仕事をしてくれない上司なんて、それこそ年が変わっても、仕事してくれませんよね。お前は何のためにここ(※オフィス)に存在しているんだ?と相手の存在意義という宇宙的命題まで考えさせてくれる大いなる存在です。

しかし、その働かないおじさんが、実は定時間近の5時から働くおじさんだったらどうでしょうか。もしかしたら、そのおじさんは「5時から仕事おじさん」なのかもしれません。

部下を悩ませる「5時から仕事おじさん」


ずんずんさんによる新連載。この連載の一覧はこちら

本日の困ったおじさんは、エントリーナンバー3「5時から仕事おじさん」をご紹介したいと思います。

「5時から仕事おじさん」はその名のとおり、5時過ぎから仕事を始めるおじさんです。おじさんは、5時過ぎから突然、機敏に動きだします。始業から5時までいったい何をしていたかと言いますと、多分電池が切れていたんだと思われます。充電に7時間ほどかかるという、iPhoneXもびっくりなおじさんです。

ワークスタイルは人それぞれですから、このおじさんが5時から働き始めたとしても何も問題がないと思いますが、部下にとっては大問題です。

メディア系企業の企画職として働いているAさんは、この5時から仕事おじさんを上司に持ち、大変苦労してきました。スピード感が命とされるメディア系の仕事ですが、Aさんの上司は、いつも5時になるまで仕事をしないのです。メールを送っても返事はなく、この上司は会議中もなぜかいつも虚空を見ています。

しかし、このおじさんは5時を過ぎると、突然、人が変わったように仕事を始めるのです。溜まりにたまったメールを次々と返信し始め、部下に声かけ、仕事の督促をはじめます。

Aさんも「定時が過ぎたから帰るか……」と席を離れようとすると、上司が、絶妙な感じで声をかけ、Aさんを引き留めます。引き留められたAさんは、上司から言われた仕事のフォローアップを5時からし始め……結局、帰るのは午前様……ということが毎日続いていました。そう、5時からおじさんの部下は帰れないんです……。上司が引き留めるから帰れないんです……。

5時からおじさんが量産されている!?

そして、毎日午前様で、翌日は朝9時に出社するAさんは、だんだんと体力が削り取られ……日中の会議も虚空を眺めるようになってきました。そして、自分の体力と気力が戻ってくるのは夕方過ぎ……そこで、Aさんは、はっと気が付いたのです。

5時から仕事おじさんは、5時から仕事おじさんの再生産を行っている……?と……。

5時からおじさんの非効率な悪循環が部下にもいきわたり、部下自身も5時からしか仕事ができないようになるという、オフィス内で5時からおじさんの量産が行われていたのです。

そう気づいてしまったAさんは、5時からおじさんになるわけにはいきませんでした。なんせAさんは妻子のある身……子どもはまだ3歳にもいかないのに、毎日、仕事で午前様なんて、そろそろ、嫁に殺されそうです。

Aさんは人生を仕事だけに捧げられる男ではなかったのです。奥さんも働いていましたので、奥さんばかりに負担がいくようでは今の時代、男女協働の観点からよろしくないと申しますか、Aさんが家事育児をしなかったため、奥さんがブチ切れまくって、いよいよ嫁が怖くてたまらなかったのです。

そのため、AさんはAさんなりの働き方改革が求められたのです……。

上司が定時過ぎからしか仕事をしない場合の対策として、取れるのはただ1つしかありません。

ボスマネジメントです。

上司が自分をマネジメントするのではなく、こちらから積極的に上司をマネジメントしてやるぜ!という姿勢です。

上司が5時から仕事をしないというならば、5時からあなたが上司の補助輪として、上司の覚醒を促してあげるしかないのです。

上司の覚醒を促す一番の秘訣は、なんといっても危機感です。上司自身が一番「致命的」だと考えている危機感を刺激するのです。たとえば「部長が言ってました。やばいです」と一言添えるだけで、5時からおじさんは覚醒しはじめ、くわっと目を見開きます。

5時からおじさんは別に仕事ができないわけではありません。単に5時からじゃないと仕事をしないだけです。逆に言えば、5時から仕事すればなんとかなるだろうと考えているのです。なので、ここを逆手にとって、

「今すぐやらなければ死ぬぞ

という危機感を刺激してあげるのです。

5時からおじさんは習慣の奴隷です。今まで続けて習慣から抜けることができません。これを変えてあげるのは至難の業です。そして、その習慣に合わせてあげて、自分の人生を犠牲にする必要はありません。もしかしたら、おじさんは夜型なのかもしれませんが、こっちは朝型なので定時に帰りたいのです。

日中に働くようになった上司は…

さてはて、自分なりの働き改革をすると決めたAさんは、5時過ぎに上司が引き留めてくるような仕事についてあらかじめ予測をつけて、日中に危機感をあおって上司の行動を促すようにしました。

その結果、何が起こったかと言いますと、日中働くようになった上司は、疲れて早く帰るようになったのです。

そう5時から仕事おじさんに必要だったのは疲労だったのです。

ただでさえ疲れている5時から仕事おじさんを、さらに疲れさせるのは鬼のような所業かもしれませんが、致し方ありません。疲れた5時から仕事おじさんはだんだんと正しいサイクルを取り戻し、部下たちは5時過ぎに引き留められることが減ってきました。その結果、Aさんも少しの残業はあるものの、毎日午前様は回避できるようになってきたのです。Aさんは家族と過ごす時間も増えて、嫁の機嫌は回復したといいます。

5時から仕事おじさんは別に仕事ができないわけではありません。むしろ、疲れた体に鞭打って仕事を何とかしようとしている責任感が強いおじさんなのです。しかし、部下としてはそんなおじさんに巻き込まれるわけにはいきません。ここは心を鬼にしてさらにおじさんに鞭打っていきましょう!といったところで今日は失礼します☆