9連覇を達成し大喜びの帝京大フィフティーン

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 ファイナルに相応しい熱戦だった。1月7日に行われたラグビーの全国大学選手権決勝。帝京大が21季ぶりの大学日本一を目指した明大を21―20で下し9連覇を達成したが、ノーサイドの笛が鳴るまで、どっちに勝利が転ぶか分からない試合だった。

 今回の1点差という結果をどう見るか。3年前の14年度の決勝では、筑波大に史上最多得点(50点)、史上最大得点差(43点)で圧勝した。その後は2季連続で東海大と決勝で当たり、15年度が27―17、昨年度が33―26と徐々に得点差は縮まっていた。特に昨年度の決勝では、帝京大側に微妙な判定のトライもあった。今年度は相手が明大に変わったが、そうした流れを受けての1点差だった。

 他大学のレベルが上がった結果であることは間違いないだろう。ただしはっきりと言えるのは、そのきっかけを作ったのは帝京大自身だということだ。帝京大が先鞭をつけた選手のフィジカル強化、栄養管理等、程度の差はあれど、今ではどの大学でも専門家の指導の下、チーム全体として取り組んでいる。有望な高校生の獲得にしても、例えば明大はすでに帝京大と遜色ないレベルに達している。こうしたことが積み重なり、決勝での1点差という結果に表れたのではないだろうか。

 一方で小差でも勝ちきる帝京大の強さを改めて実感する部分もあった。象徴的だったのはゴールキックの2点を含めて逆転につながった後半20分のトライシーン。攻撃の起点は自陣インゴールラインまで10メートルを切っている場所でのペナルティーだ。セオリーなら、まずはタッチキックで危険なエリアから脱出する場面だが、SH小畑がタップキックでクイックスタート。一気に攻め上がり、46秒後にはCTB岡田がインゴールに飛び込んだ。

 ペナルティーの場面では通常、主将らゲームリーダーたちにプレー選択の判断が委ねられるが、この時フッカー堀越主将は直前に右肩を痛め、グラウンドに膝を付いていた。小畑が他の選手にプレーの確認をする時間もなかったはず。したがって言わば3年生スクラムハーフの独断でプレーが再開されたのだが、バックス陣は以心伝心で右側に間隔を取って並び、速攻に参加した。もちろんFW陣も休むことなく追走。並のチームならば2、3人がサポートするだけで、どこかでタックルを浴び孤立、というのがよくあるパターン。この手の速攻でトライを取りきるには、徹底した意識付けが必要となる。これが9連覇の王者が王者たるゆえんなのだろう。

 試合の3日前、岩出雅之監督はこんな話をしていた。「ディフェンスはある程度すぐにできるようになるが、アタックは身につけるのが難しい。だから4年間で(身につけるのを)イメージしている。V4あたりからボールを動かし始めたが、それはV2あたりから練習ではやっていたんです」。

 種をまき、1年も2年も時間をかけてじっくり育てることで機は熟す。来年は明大をはじめ、対抗戦では3点差に食い下がった慶大、創部100周年を迎える早大、東海大や大東大も10連覇はさせまいと、さらに厳しい戦いを挑んでくるだろう。挑戦を受ける立場の帝京大も、すでに次の一手を用意しているはず。V10か、あるいは新たな王者の誕生か。しばらく忘れていた大学ラグビーの魅力を思い起こさせてくれた点でも、今回の決勝は価値あるものだった。(阿部 令)