新境地に挑む広瀬すず

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1月10日より日本テレビ系で放送がスタートする連続ドラマ『anone』(毎週水曜22:00〜)。脚本・坂元裕二&演出・水田伸生のタッグによるオリジナルストーリーと言えば、松雪泰子と芦田愛菜が出演した『Mother』(2010年)、満島ひかりが出演した『Woman』(2013年)を思い出す人も多いのではないだろうか。そして、この最新作の主演は、10代の女優としては現在、人気・実力ともにトップに位置していると言っても過言ではない広瀬すず。否が応にも注目が集まる中、このたび、放送に先駆けて、マスコミ向けの第1話先行試写会が行われた。

物語は、家族を失い社会からもはぐれてしまい、ネットカフェを住処とする19歳の少女・辻沢ハリカ(広瀬)が、老齢の女性・林田亜乃音(田中裕子)と出会うところから始まる。欺かれ、裏切られ、人を信じる心さえなくしてしまっていた二人だったが、やがて何かを感じあい、女は少女をかくまうことに。ニセモノの家族、ニセモノの人生、ニセモノの記憶……“ニセモノ”から始まり、やがて真実の人間愛を見つけていく。

本作のために、広瀬が髪をベリーショートにしたことは、すでにメディアで報じられていたが、第1話ほぼ全編を通して、前髪で片目が隠れる俯きがちなシーンが多く、CM等でみせる弾けんばかりの笑顔は封印している。

もともと表現力の高さは作り手の間でも評価されている広瀬がこれまで演じる役柄は、大きく分けて二つあった。映画『ちはやふる』シリーズや、『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』などでみせた明るく元気なキャラクターと、『怒り』や『三度目の殺人』などで演じた鬱屈した気持ちを胸に秘める役だ。本作で広瀬演じるハリカは、第1話を見た限り、スケボーを操るなど躍動感ある一面をみせつつも、どちらかというと“暗”の広瀬が出ている印象で、大きな闇を感じさせる佇まいを醸し出している。今後「どのようなキャラクターを作り上げていくのか楽しみだ」と思わせるスタートだった。広瀬の新たな芝居の振り幅に期待が高まる。

本作のプロデューサーである次屋尚氏は、開口一番「物語性を重視した作品にしたい」と、前作『カルテット』(TBS系)で坂元が描いた軽快な会話劇で話を展開させるというよりは、じっくりと人間やテーマを描いていく作風になることを匂わせていた。その言葉通りに。冒頭の阿部サダヲと小林聡美のシーンこそ軽快な会話劇が展開したが、その後は、ややファンタジックな描写がありつつも「生きることの意味」や「人が生きる上でほんとうに大切なものはなにか」というテーマにグッと入り込んでいく様相を呈していた。

また上記のテーマに内在しているのが“ニセモノ”というキーワードだ。第1話の劇中「大切な思い出は支えになり、お守りになり、居場所になる」というセリフが何度か繰り返される。次屋プロデューサーは「“信じているものがニセモノだったら”というテーマは坂元さんとはよく話していた。逆に“嘘から出たまこと”という言葉もある」と今後の展開に対してヒントを出していたが、これまでも一筋縄ではいかない作品を世に送り出してきたチームだけに、どういったテーマを提示してくれるのか、非常に楽しみになる出だしだったと言える。

こうした物語を彩るキャストも非常に個性的かつ魅力的だ。前述した広瀬、田中、阿部、小林のほか、1話ではハリカの祖母として倍賞美津子、坂元脚本では『最高の離婚』(フジテレビ系)、『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系)で主演を務めた瑛太も登場。謎の存在として今後どんな形で物語に絡んでくるのか注目が集まる。

『Mother』、『Woman』ともに家族の深い絆を描いた作品が続いたが、『anone』は、第1話を観る限り、2作品よりもややファンタジックで抽象的なシーンが多かったように感じた。果たして、どんなドラマが待っているのか。ヒロイン・ハリカにはどんな運命が待ち受けているのか。今後の展開を見守りたい。

(文・磯部正和)