薬物の力で不正に能力を高め、好成績を求めるドーピング。

 鈴木康大は2020年東京五輪出場を争うライバルの小松正治に禁止薬物を摂取させ、違反者に仕立て上げるという国内初の愚行に走った。日本カヌー連盟の古谷利彦専務理事は会見で「フェアプレーとは正反対で、極めて悪質」と断じた。

 鈴木は各年代の全国大会を制し、2010年アジア大会(中国・広州)の銅メダルなど、トップ選手として活躍。リオデジャネイロ五輪出場を逃し、一度は引退したが、東京五輪を目指し復帰していた。

 連盟幹部は「現在も1000メートルの第一人者。こういうことをするやつじゃないのに…」と落胆する。古谷専務理事は「地元の五輪に出たいという焦りがあったと思う」と語る。しかし、他のライバルに対しても練習や競技で使用する道具などを盗むといった妨害行為を繰り返しており、非常に悪質だ。常習性もあったとなれば、放置してきた連盟の責任も重い。

 公平、公正性が崩れれば、スポーツの価値は失墜する。組織的なドーピングで、ロシア選手団が平昌五輪への出場を禁じられたことにも表れており、リオ五輪スラロームで羽根田卓也(ミキハウス)が初の銅メダルを獲得し、上げ潮ムードだったカヌー界だけでなく、クリーンな大会を掲げる20年東京五輪の開催国としての信頼性や、日本選手のイメージにも冷水を浴びせた。

 スポーツ庁の鈴木大地長官は「人を陥れるようなたちの悪いケース。非常にがっかりしている」。スポーツ界全体で信頼を回復していかねばならない。