シルクの衣擦れのように、微かな摩擦熱を発しながらもエレガントに流れていくフレイズ。2018年を優雅な気分で迎えるのにうってつけのサウンドが会場に満たされていく――。

 デヴィッド・T.ウォーカー。琴線が無条件で反応してしまう、温もり溢れるギター・サウンドが身体を優しく包んでくれる。もう、それだけで幸せな気分に浸ることができる。これぞ“音楽のミラクル”と呼ばずして、何と表現すればいいのだろう。

 これまで幾度となく演奏に触れ、インタヴューしたこともあるデヴィッド。ダンディにキメたスーツ姿と同様、彼の音楽は豊潤なキャリアが滲むノーブルなディープネスに溢れている。ジェントル、そしてメロウ。参加作品は2,500以上も。「名盤の影にデヴィッドあり」とばかりに60年代モータウンの作品を筆頭に、R&Bとソウルとジャズの間を自由に行き来しながらワン・アンド・オンリーの音楽性を紡いできた彼。日本ではDREAMS COME TRUEとの仕事も収めたベスト盤がリリースされ、その足跡が俯瞰できるようになった絶好のタイミングで、僕たちに歌心溢れる“最新の演奏”を届けてくれた今宵。アグレッシヴな耳ざわりこそ影を潜めているが、そのサウンドの本質には、彼の座右の銘である“Press On”(前に進め)のメンタリティが衰えることなく脈打っている。そしてコクのあるグルーヴは、もはや充分に官能的だし、その音色は“肥えた耳”にも間違いなく魅力的だ。

 まるで豊かな“時”とテロワールを融け込ませたコート・ドールのピノ・ノワールのようなバイロン・ミラーとレオン“ンドゥグ”チャンクラーによる懐の深いリズムに身体を委ねながら、もはや非の打ち所のないメロウ・グルーヴが紡がれていく。慈しみを持ってていねいにつま弾かれていくオブリガートが歌い、デヴィッドの音楽に対する姿勢が明確に表されていく。4人の間で時折交わされるアイ・コンタクト。息の合った演奏が阿吽の呼吸で展開されていく。真摯なアティテュードがリスペクトを誘う。

 どの曲もふくよかな響きに彩られながら、宙に向かって優雅に飛翔していく。そして、まるでデヴィッドの胸の奥から湧き出してくるように“歌う旋律”。マーヴィン・ゲイやジャクソン5、スティーヴィー・ワンダーといったモータウン・ミュージックから広がるソウルや、クルセイダーズなどのクロスオーバー・ジャズが、限りなく美しく奏でられていく。

 さぁ、優雅で華やかな2018年のキック・オフ。寒い冬を、そして心地好く緊張がやわらいだ年の初めを厳かな気分で歩いていくサウンドトラックとして。デヴィッド・T.ウォーカーのサウンドを携えながら新しい年の日常にテイク・オフしよう! 東京では幸い今宵も、そして大阪では8日に彼の流れるようなギター・フレイズが聴ける。心に温もりを灯してくれる“エレガント・マスター”の演奏を、ぜひ!


◎デヴィッド・T.ウォーカー公演情報
ビルボードライブ東京
2018年1月5日(金)※終了
1stステージ開場17:00 開演18:00
2ndステージ開場20:00 開演21:00
2017年1月6日(土)
1stステージ開場15:30 開演16:30
2ndステージ開場18:30 開演19:30
公演詳細>

ビルボードライブ大阪
2018年1月8日(月・祝)
1stステージ開場15:30 開演16:30
2ndステージ開場18:30 開演19:30
公演詳細>

Photo:Yuma Totsuka

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。厳粛な気分で迎えた新春。そろそろ慌ただしい日常に戻っている人も多いのでは。でも、まだ「松の内」のこの週末は、例えば上品な甘さが贅沢な気分を満喫させてくれるデザート・ワインなどはいかが? ボルドーの『シャトー・ディケム』には手が出なくても、近年はオーストラリアやカナダ、そしてもちろんドイツなどに、良質なデザート・ワインやアイス・ワインが多数。ノーブルな甘さに癒されながら、新年の抱負を頭で反芻するのも一興。年の初めだからこそ、豊かなテロワールの恵みを堪能できるデザート・ワインで今年をキック・オフして。