又吉直樹と西野亮廣

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同期で同い年、共に芸人の活動範囲を押し広げ活躍しながら、なぜかすれ違ってきた又吉直樹と西野亮廣。「別冊カドカワ 総力特集 又吉直樹」誌上で実現した二人の対談の模様を、お伝えする本企画の、第四回目です。

【写真を見る】物を作る楽しさの原点は「文化祭」と又吉と西野

■ 表現を極めることで替えの効かない存在に

西野 二十五歳のころは、立川志の輔師匠にすごい憧れた。まずは「絵」として美しいじゃない、落語って。座布団があってマイクがあって、その一点をみんなが見てるって、めっちゃかっこよかった。あとは一か月間パルコ劇場を埋めて一万人くらいの人が立川志の輔だけを見に来ているという圧倒的事実。それで、自分のスケジュール表を見たら番組のタイトルに(仮)って入ってて。「なんだこれは?」と思った。俺は替えが効くけど、立川志の輔は立川志の輔じゃないとダメだっていう。

又吉 僕がミュージシャンを見て感じることとたぶん一緒で、替えが効かへん人間に早くなりたいなっていうのが、割と若いころからあって。「誰でもできるやん」っていうのは、僕よりうまくできる奴いっぱいおるわって思っちゃうんですよ。だから、自分しかできへんことをできるようになりたいっていうのは、まだ見つかってないですけど、ずっとそう考えてる。今やろうとしてるんですけど、まだ一人でできてないんで。いろんな人の助けがないと。もうちょっとやらんとな、と思ってます。

西野 僕も一人でやってないよ。スタッフは超多いから。本を書くにしろ、一人じゃ無理! だから、なんかサービスを作るって言ったら、そこにはエンジニアがいっぱい入って、みたいなことになる。一人では絶対に無理です。

又吉 ディズニー倒すんやもんな。すごいよなあ。

西野 うん、倒してみる。

又吉 すごいよなあ。

西野 テレビは一年目、二年目は所在なさを感じることがあったなぁ。なんかこれ、僕がいなくてもこの場は絶対回るし、この番組のおもしろさ、僕がいてもいなくてもあんま変わんない、とかね。最近はしょっちゅういじってもらえるようになったけど。

又吉 僕も結構あるかもしれない。でも、どこにおってもあるけどね。全員友達のはずの飲み会でもある(笑)。「浮いてんなぁ」とか、「今日入って行かれへんなぁ」とか。そういう時はありますね、どうしても。昔からそれは続いてると思うんですけど。この間『ゴッドタン』に出させてもらって、劇団ひとりさんの乳首をなめる運びになったけど、僕はもう、うれしいなって思って。こういう扱いしてもらえるんや、みたいな。ああいうふうにやってもらえると助かりますけど。楽しいし。西野くんは、ほんまにTシャツ破られてるの嫌がってるって。

西野 僕は嫌なんですよね。ウケてるスベってるとかじゃなくて、もう一回あの服を買いに行かなきゃいけないから。あの服、超お気に入りなんだよ。

■ 学芸会の楽しさがライブの基本

又吉 僕、九月に朗読のイベントして、で、読んでるうちに、だんだん感情移入しすぎて読まれへんようになったことがあって。自分で書いた作品を読まれへんようになった。お客さんに、「こんなはずじゃなかったんですけど、ちょっと待ってください」みたいになって。そしたらお客さんが、それまで以上に聞こうとしてくれてる感覚があって。

西野 すごいよなあ。僕のはそんな立派なやつじゃない気がするな。文化祭とか好きだから、ほんと大学生のノリでやってる。

又吉 文化祭ってめっちゃおもしろいよね。

西野 むっちゃおもしろかった。大好きなのよ。文化祭実行委員で、「みんな、頑張ろうよ」って泣いちゃう奴がいるじゃないですか? あの瞬間がキュンとくる。で、こういう人になりたいと思って。

又吉 一番、楽しんでる奴。

西野 一番、楽しんでるあいつになりたい、みたいな。文化祭は準備からすげー楽しかった。ライブも、それに近いかもしれないね。ずっと楽しいっていう。準備も楽しいし、本番も楽しいし、打ち上げで「あっこ、ああやったなぁ」みたいなのも楽しいし、ずっと楽しいよね。

又吉 一緒ですね、文化祭とライブって。僕はサッカー部で参加できひんかったんけど、みんなで一緒に作り上げていくみたいなのとか、めっちゃ好きですね。僕は割とさぼらんタイプやし。柄本明さんとお話した時に聞いたんだけど、唐十郎さんがやっぱりそういうことを言ってたって。学芸会はちゃんとできてる奴もできてない奴もおるから、あれが一番おもしろい、あれをずっとやるんだって。

西野 楽しかったもん、学芸会。

又吉 ライブも、美術セットができあがっていく時とかドッキドキするし、「照明、今回こうやっていくんや」とか、準備の時からずっと楽しい。なんか僕のライブ、女性が多かったけど、最近男性が増えてきましたね。

西野 僕は今、半々、ちょうど。原因はビジネス書だと思います。ビジネス書を買う人って、だいたい男性なんで。たぶん、「この本を書いた奴のお笑いってどんなの?」って様子見で来てるのかな。

又吉 本のお渡し会とか、出版寄りになると男性が増えます。一番後ろのほうに座って笑ってない男の人とか、「何かあったんかなー」と。殺しに来たんかなと思う時ありますね。目立つから。絵本は読者対象はあんの?

西野 基本的に絵には対象年齢がそもそもない。東京タワーがいいっていう子供もいるし、興味ないおばあちゃんもいるから。でも、常に意識している人たちはいるよ。僕はすごく貧乏したわけでもないし、いじめられた過去もないし、これっていうコンプレックスがないままこの世界に入って。苦節十年みたいなことだったら、苦労している人たちの代弁者になれたんだけど、そういうわけでもないし。結局、誰の代弁者にもなれないっていうのがずっとあって。「これは弱い」と思ったんですよ。僕のことを応援する理由が、お客さんにないと思って。でもないもんはしゃあないなと思って、諦めかけてた。

又吉 僕は西野くんと逆ですね。学生時代のコンプレックスが。僕はサッカーやってて、それなりにできてたし、彼女がおったこともあるし。ただ僕は一個の失恋に対する傷つき方が常人の四倍くらいとか、人に嫌なこと言われた時の憎しみの記憶力が百倍とかで、ネガティブな感情を自分でめちゃくちゃデカくできるんですよ。しかもいいことは忘れていく。で、そこだけしか覚えてないから、それが結構パワーになってて。

たまに西野くんのそういう言葉を聞いたり、あと、みうらじゅんさんの『アイデン&ティティ』の主人公が「僕には不幸なことに、不幸なことがなかった」というセリフがあって、そんなん聞くと、「えっ」って、ちょっと待ってって思う時があるんですけど。僕もほんまにあったんかって(笑)。もの作る時って、ネガティブな要素が必要なんじゃないかってどこかで思ってて、そういう奴が強かったり、やりやすかったりするから。だから、西野くんとか綾部とか、見た目もきれいやし、モテてこなかったみたいなことがないところから、ものを作れる人はすごいなぁって。まぁ、綾部は作ってないですけど。そっからやるのって結構、難しいんちゃうかなって。

(次回は1月16日更新です)(ザテレビジョン)