今回のビジネス女子マナーは、電気メーカー勤務の南園りえこさん(仮名・29歳)からの相談です。

「仕事も子育ても完璧!な女性管理職の上司がいます。本人のことは偉いと思うし、尊敬もしています。でも私はそのポジションに憧れないし、自分の精神とプライベートを削って成立している、彼女のような生活はしたくないと思っています。でも男性を含め、周囲は彼女のことをすごく評価していて……。比較されてすごくイヤです。彼女から要求されることも多くて……。うんざりです。どうしたらいいでしょうか」

ワークライフバランスという言葉が一般化し、働き方も多様化する中、「すごく仕事ができる人」「寝ないで問題を解決する人」がいる一方で、その人たちと比べられて「自分らしく働けない」という悩みを抱えている人も少なくありません。

相談者さんのように、その相手が上司という立場で、直接関わらなければいけない場合、どうしたらいいのでしょうか。鈴木真理子さんに伺ってみましょう。

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「コツコツキャリア」を選ぶ道もあり

仕事のできない上司に困っている働き女子も少なくありませんが、相談者さんのように「できすぎる女性上司」に不満を感じている人も多いようです。

結婚、出産によって、女性がキャリアを失わない社会に向かっているのは意義のあることです。今まで、苦しんできた女性の救済になります。最近では一般職で入社しても、途中で総合職に転換する人も多くいます。ある企業では、入社時、一般職だった人の30%が総合職に転換したという事例もあるほどです。

しかし、それを奨励する風潮を息苦しく感じている人がいるのも、また事実です。それでは、ただ「働きにくさ」のベクトルが変わっただけですよね。「働き方の自由化」にはほど遠いでしょう。

私自身、一般職のまま退職まで勤め続けたので、相談者さんがモヤモヤする気持ちがわかります。その上で、私は全員が全員スーパーキャリアウーマンを目指さなくてもいいと思います。

私が企業で一般職の研修を担当するときには、「一般職のままでいるのも立派なキャリア」であると話しています。新時代の女性像として、キャリア志向の人が取りざたされやすいですが、「コツコツキャリア」を選ぶ道だってあるのです。

一般職やアシスタントなど、「縁の下の力持ち」は組織に欠かせない存在です。どうか、自分のポジションに自信をもってください。

「プライベートも楽しむ人」と思われるブランディングをしよう

ただ、もしかしたら相談者さんは、その女性上司の存在を意識しすぎているかもしれません。でも彼女は彼女で、「自分らしい働き方」を選んだわけです。

彼女を悪く言ったり、指示に反発したりと態度に出すと、嫉妬しているみたいでもったいないです。その態度は、あなた自身の「理想の働き方」を自分で否定することにもなりかねません。

上司と部下という立場をわきまえて、賢くふるまいましょう。部下として、上司をサポートする気概を示してください。

それは、女性上司と同じように働けと言っているわけではありません。むしろ、「仕事一途」「管理職になりたい人」でなく、「早帰りする人」「プライベートも楽しみたい人」というレッテルを貼られるように、ブランディングしていくべきです。

たとえば上司から、「今日中」「至急」など無茶な指示をされた場合。そういうときには、しぶしぶ引き受けて残業するのではなく、「定時なので、明日でよいですか?」と聞き返す勇気をもって。

仕事での評価に、家事や育児ができるかどうかは関係ありません。その点を混同しないようにしましょう。

「優秀な上司の下で働く」は、幸せなことばかりではないのです。



■賢人のまとめ
30代、40代の働く女性の「プライベートもしっかりと楽しみたい」という気持ちは間違っていません。ただし、スーパーキャリアウーマンという働き方も認めるべきでしょう。自分と違う働きかたをしている人を悪く言ったり、不満を態度に出すのはマナー違反です。賢く振る舞いましょう。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

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