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●予想を超えて普及したが、課題も

働き方改革の盛り上がりとともに、昨年のバズワードにもなったRPA(Robotic Process Automation)。そこで、RPAテクノロジーズ社長であり、日本RPA協会 代表理事でもある大角暢之氏に、RPAの現状と今後の展開を聞いた。

RPAテクノロジーズ 代表取締役社長 /日本RPA協会 代表理事 大角暢之氏

1970年生まれ。早稲田大学を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、 2000年にオープンアソシエイツを設立。ビズロボ事業部を発足して「BizRobo!」の提供を開始し、2013年ビズロボジャパン(現RPAテクノロジーズ)を設立。昨年7月に一般社団法人日本RPA協会の設立に尽力し、同協会代表理事としてRPAの普及に務めている。近著に『RPA革命の衝撃』(東洋経済新報社)がある。

--RPAが大きなブームになっています。先駆者として普及に努めてきた御社ですが、まずは率直な感想をお聞かせください。

大角氏:予想を超えて普及したという印象です。日本RPA協会の会員は半年で300社を超え、昨年東京と大阪で開催した「RPA Summit 2017」はいずれも満員。RPAの情報提供を行うサイト「RPA BANK」の登録者は開設してすぐ2万人を突破しました。

一方で、RPAがバズワードになり、「なんでもかんでもRPA」という現象が起こっていることへの懸念もあります。RPAを導入しようとして、失敗する事例も増えています。RPAの本質が理解されないまま、取り組みが進められているという懸念もあります。

--ブームの背景には何があるのでしょうか。

大角氏:3つあると思っています。1つは少子高齢化と働き方の変化です。労働人口が少なくなるなかで、新しい労働力としての「デジタルレイバー」に関心が集まりました。2つめはRPAが日本企業のDNAにマッチしたということです。ファクトリーオートメーションなどを見てもわかるように、オペレーションでの職人技、カスタマイズ、自動化はお家芸です。3つめは取り組みやすさです。RPAはレコーディングツールに過ぎず、技術的に見ればExcelのマクロのようなものです。膨大なデータを深層学習して解を導いていくAIなどとは違い、投資もしやすく、誰でも使えます。

--どのような成功事例、失敗事例があるか教えて下さい。

大角氏:典型的な失敗事例は経営トップ等からの指示等により、「RPAの導入をゴールとして」検討を進めてしまうケースです。RPAをIT導入と同じように考えて、ITと同じような方法で導入する。形だけ導入はできるのですが成果が出ず、すぐに使われなくなります。100社のうちうまく展開できていると言える企業は20社にも満たないでしょう。一方、成功事例は、取り組みをスケールさせることができたケースです。最初は、ごく小さな作業を行うだけのロボットでしたが、同じ作業を他部署、別の業務などへどんどん展開していく、スケール力が成否の分かれ目です。

--RPAが向く業種や用途はどういったものでしょうか。

金融が先行して取り組みを始め、いまは製造業で取り組みが盛んに行われています。とはいえ、業種も用途も何かに限られることはありません。あらゆる業種で人手不足が進んでいます。人手をかけずにロボットで済ませられるコアではない業務。そういったところでRPAは有効に働きます。

●2017年の実績

--日本RPA協会の役割を教えてください。

大角氏:RPAの本質を正しく伝えることです。協会発足以来言い続けているのは、RPAはITのようなテクノロジーではなく、デジタルレイバー(仮想知的労働者)だということです。企業を支えるレイバーですから、きちんと扱う必要があります。誰を選ぶか、どう内製化するか、何を担ってもらうか、きちんとした目標と計画を持って取り組みを進めることが大切です。RPAは、企業の人事戦略を実行するためのHRの技術なのです。そのための研修を行ったり、全国をまわって啓蒙活動をしています。

協会のメインの活動は、RPAを正しく伝えるための普及活動ですが、ミッションは違います。協会のミッションは、企業にスケール力をつけてもらうことです。余力のある大手企業はまだいいのですが、人手不足で深刻な影響を受けているのは地方や中小零細企業です。地方の中小企業には、そもそも人が集まりません。そんななかで、既存の事業を継続し、新しい事業を創造していくためには、取り組みやすく、スケールできるRPAが欠かせません。そのビジョンを伝えていこうとしています。

--実際に、昨年はどんな取り組みを行ってきたのでしょうか。

大角氏:大きく3つの取り組みを進めました。1つは、ブームで終わらせないことです。RPAにおけるIT導入のアプローチは、失敗に向かうアプローチです。ITの技術ではなく、HRの技術として取り組みを進めることを強く訴えてきました。具体的には、PoCで小さく始めて「体感」してもらうことに注力しました。

2つめは、エンジニアの育成です。デジタルレイバーとしてロボを作って、現場に置くだけではうまくいきません。ロボを見て、間違ったら直す、新しい現場に適用する、といった作業をしていくことが必要です。それを社員の誰もができるように支援するのがエンジニアです。エンジニアによるサポートに力を入れました。

3つめは、きちんとしたツールを揃えることです。PCにインストールしてすぐに基本機能を利用できる「Basic Robo!」や、紙の書類を自動で電子データ化する「Scan Robo!」などを「Biz Robo! Station」としてラインアップしました。技術を評価して、デリバリーできるようにしています。

これら3つの取り組みの共通テーマは、主人公はユーザー企業だということです。われわれはRPA導入サービスで国内トップという自負があります。しかし、提供するものは、所詮はデジタルレイバーです。それをどの業務にどう使うかはユーザーが主人公として決めることです。われわれの仕事は、パートナーと一緒にその舞台を整えることです。昨年は、パートナーさんから協力をいただき、40を超えるロボのキャラクターを使ったソリューションを提供することができました。

--売上などの会社の業績はどうでしたか。

大角氏:昨年はRPA元年とも言える盛り上がりで、売上は劇的に上がりました。収益も予想以上で、安定した事業を展開できました。これは評価できると思います。

また、事業として重要な点として、広島にロボットセンターを設立できたことが挙げられます。8月から、広島のエネルギア・コミュニケーションズと共同でクラウドサービス「エネロボクラウド」の提供を開始し、クラウドを使って、地方の企業、公共団体の取り組みを支えることができるようになりました。ロボットセンターは、広島だけでなく、全国に展開していく予定です。

●2018年の取り組み

--日本RPA協会では、今年はどんな取り組みを進めるのでしょうか。

大角氏:今年は、RPAを本格的にスケールさせる企業がどんどん出てくると見ています。RPAを利用している既存企業だけでなく、RPAに取り組んで幻滅してもう一度チャレンジする企業も増えていきます。予想では、2018年が盛り上がりのピークを迎え、来年にはブームが終息し、地に足の着いた取り組みが本格化するとみています。

そこで、協会としては、徹底的に地方にフォーカスします。広島のデータセンターの協業モデルをベースにしながら、地産地消の仕組みを広げていきます。まずは福岡や四国といった都市圏に広げ、そこからさらに拡大させていきます。地産地消のエコシステムができれば、取り組みはさらに加速していくでしょう。

「新入社員はみんな自分でロボットを作ることができる」。そんな世界に近づけたいと思っています。

--RPAテクノロジーでは何に注力しますか。

大角氏:1つは、デジタルレイバーの高度化です。企業が取り組みをスケールさせるためのBizRobo!のラインアップを増やしていきます。例えるなら、昨年ではロボットの手足の部分を充実させてきました。今年は、目や頭の部分、つまり、センサーやAIの部分を強化していく予定です。

もう1つは、パートナーとの協業です。プロデューサーモデルをさらに増やしていきます。共同でベンチャー企業などを立ち上げて、2倍、3倍、4倍という規模と速度で、イノベーションを起こしていきたいと思います。パートナーは現在40社ですが、その10倍くらいには増やしたいと思っています。もちろん確実に収益化できるようにしていきます。

--RPAが普及して、ごく普通に使われるようになるまで何年かかると見ていますか。

大角氏:何年かはわかりませんが、確実に普及することは間違いないと思っています。RPAは、30年前のPC、20年前のインターネット、10年前のスマートフォンと同じです。若者が普通に使うツールになっていきます。そのためには教育が重要です。10のロボットを100に、1000にスケールさせます。スケールしてもロボットのメッセージを読み取って対応していきます。そうした力を養うように教育、研修に力を入れていきます。

--あらためてRPA成功のポイントを教えて下さい。

大角氏:まず、RPAという言葉を忘れましょう。RPAという言葉を使わずに経営や人事の技術として何が必要かを考えてみます。そこで大切なのは、スケーラビリティです。デジタルレイバーとしていかにスケールさせていくかを考えます。スケールしなければデジタルであるメリットがまったく生かせません。自然人レイバーとデジタルレイバーの違いは、リードタイムが圧倒的に早く、24時間働き、指示があるまで止めないことです。

2つめは体感することです。実際に働かせたらどうすごいのか。そのすごさを体感してください。また、わざとエラーを起こして止めてみて、どんな影響が出るのか体感することも大事です。ロボットに業務を依存していくことになります。エラーが起きたら想定外の事態が起こるはずです。そこで重要になるのが、人間によるマネジメントです。ロボットと会話してチューニングしていく必要があります。エラーが出たからといって手作業に戻っては意味がありません。どうロボと共存していくのか、それを体感することが大事です。

3つめは技術です。スケールするためのテクノロジー、プロセス、体制を学んでください。1つの製品では対応できないケースがでてきます。業務特性に応じて、さまざなツールを組み合わせる術を学んでいく必要があります。

繰り返しになりますが、成功の最大のポイントは、RPAをITの技術だと思わないことです。RPAは経営・人事の課題に対応する技術なのです。