ヘッダー入札の動画への適用には課題が残されているものの、業績好調なバイラルメディアのリトル・シングス(LittleThings)では、動画のインベントリー(在庫)を統合入札に組み込むことで利益の拡大を実現している。

動画のヘッダー入札



リトル・シングスのCDO(最高デジタル責任者)であるジャスティン・フェスタ氏によると、同社は動画のヘッダー入札を導入し、過去12カ月間でプログラマティック動画の広告料を約20%引き上げることに成功したという(具体的な広告料は不明)。同社は動画の読み込みに時間がかかる問題を解消するため、記事の下段に広告を置き、自動再生機能を利用しない方針を取っている。これにより、ユーザーが動画プレイヤーをクリックする頃にはページデータがすべて読み込まれ、動画広告を見てもらえるという仕組みだそうだ。

たとえば、感謝祭のサイドディッシュメニューレシピに関する記事では、メニューを紹介する段落が6つ続いた後、俯瞰撮影のレシピ動画が記事の最後に出てくる。リトル・シングスでは先ごろ動画戦略の見直しを行い、スタッフ13人を解雇したほか、Facebookライブ動画の番組数も削減した。さらに、動画コンテンツ配信戦略の多様化も推し進めるべく、AmazonやApple TV、ロク(Roku)、Tubi TV(トゥビTV)といったプラットフォーム向けの配信を担当する5人編成の「ポストプロダクション」チームを立ち上げた。フェスタ氏によると、自社サイトでの動画閲覧数は現在、月間約8000万〜1億2000万回に上るという。

広告バイヤーが動画コンテンツへの投資を拡大し、パブリッシャーがヘッダー入札の導入によってディスプレイ広告料の引き上げに成功しているいま、パブリッシャーが動画のヘッダー入札を活用して、収益拡大を狙うのは当然だろう。とはいえ動画のヘッダー入札は普及が進んでいない。ヘッダー入札がもたらすページ読み込みのレイテンシー(遅延)の問題が動画で一層顕著なこと、多くのパブリッシャーが動画インベントリーの直接販売を望んでいることがその原因だ。

「統合入札」が正しい?



動画のヘッダー入札という呼称がそもそも間違っているという意見もある。動画にヘッダーはないからだ。ともあれ、ヘッダー入札(パブリッシャーがアドサーバーを呼び出す前に、インベントリーを複数のアドエクスチェンジに同時に出すプロセス)は動画でも実際に行われており、統合入札で動画インベントリーをプログラマティックに販売するパブリッシャーとベンダーがこの呼称を使い続けている現状がある。

リトル・シングスは1年前にインデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)のラッパータグを使い、動画のヘッダー入札を試験導入した。以来、自社のラッパーに数社のサプライサイドプラットフォーム(SSP)を加えてきた。

リトル・シングスではヘッダー入札を利用して、動画インベントリーの約30%を販売している。残りは直接販売や、Googleのダイナミックアロケーションを利用している。インターネット調査企業のコムスコア(comScore)によると、 10月のリトル・シングスのサイト訪問者数は約4000万人だという。

導入はずっと複雑



動画ヘッダー入札の設定は、ディスプレイ広告のヘッダー入札の設定よりも難しい。リトル・シングスがヘッダー入札で販売する動画広告スペースの数を制限しているのもそのためだ。たとえば、動画ヘッダー入札では中間業者がさらに加わるという面倒がある。

ディスプレイ広告のヘッダー入札では、パブリッシャーはSSPとだけ協働すればよい。しかし動画ヘッダー入札では、動画プレイヤーとSSPが同じページで連携して動画広告を配信しなければならない。動画ヘッダー入札を開始してからというもの、フェスタ氏は8人のスタッフから成るITチームを率い、パブリッシャーのSSP企業や動画プレイヤー企業と頻繁にやり取りをして、すべてが正しく実行されているかどうか入念に確認を進めてきた。

動画ヘッダー入札の設定の難しさとして、動画のタグがディスプレイ広告よりもずっと複雑な点を上げるのはビデオテックファームJWプレイヤー(JW Player)の共同創業者であるブライアン・リフキン氏だ。たとえば広告主が、Flashを受け付けていないアドエクスチェンジを介して、FlashベースのVPAIDタグやVASTタグを使ったとしよう。すると、その広告は読み込みをブロックされ、パブリッシャーは無駄なインプレッションで広告収益を失うことになるのだ。

「動画とディスプレイの入札はまったく異なる。どんなラッパーを使ったところで、チェックマークを付けたら即座に動画ヘッダー入札が開始できるというわけにはいかない。パブリッシャーが自ら設定しなければならない」と、フェスタ氏は語っている。

ROSS BENES(原文 / 訳:SI Japan)