いまや米国は「火星よりも寒い」がマーケットは激アツ。だが、いつ大寒波に見舞われてもおかしくない(写真:Barcroft Media/アフロ)

米国は「火星よりも寒い」が、市場は「熱い」

年明けの米国では、大寒気が多くの地域を襲い、一部では零下40度前後に達したという。火星では温度が高い時はマイナス20度程度だとのことなので、米国は火星より寒くなったと報じられている。

一方、株式市場の温度は高く、米国の株価は年初から上値を伸ばして、ニューヨークダウ工業株指数は2万5000ドル超えとなった。2018年第1週は、株価が上がったのは米国だけではなく、後述する日本株を含め、世界的に全面高の様相だった。先週、主要国で株価指数が下落した国は、エジプトとインドネシアだけである。

こうした米国を中心とした株高の要因は、心理だけだとしか思えない。買うから上がる、上がるから買う、という自己増幅的な心理や、売ったら損失を被るかもしれない、という、恐怖、すなわち「チキンレース」の様相だ。しばらくして不振な経済指標が発表されても「それは火星より寒い大寒波のせいで、一時的なものだ」と、悪い材料をすべて無視することもありそうな勢いだ。

なぜ「心理だけだ」、と考えるかと言えば、年初の株価上昇の理由は、「世界的な景気回復期待」だと解説されている。ただ、いったいぜんたい、景気回復を示すどんなデータが出たのか、と考えると、首をひねらざるを得ない。たとえば1月2日(火)の株価上昇については、一部報道では、同日発表の、2017年12月分の世界の製造業購買担当者景気指数(JPモルガンチェースとIHSマークイットの2社が共同で算出)が強かったことが、材料だった、とされている。しかし、そのデータが、世界中の株価に影響を与えるほど話題になったことなど、これまでにあっただろうか。

米国に限ってみれば、1月3日(水)に発表された、2017年12月のISM製造業指数は、確かに強かった(同11月分の58.2に対し、同12月は59.7)。しかし1月5日(金)発表の雇用統計では、12月の非農業部門雇用者数が前月比で19.0万人増えると見込まれていたところ、14.8万人の増加にとどまった。また、同日発表のISM非製造業指数は、2017年11月の57.4から同12月は55.9に悪化している。

したがって、先週の世界的な株高は、さしたる理由なく株価が上振れした(ということはこの先、さしたる理由なしに株価が下振れしてもおかしくない)が、上昇に理由を付ける必要があるので「世界景気回復期待」という材料がこじつけられている、と解釈すべきだろう。

そもそも、これまで当コラムで解説してきたように、米国株を予想PER(株価収益率)でみると、今年からの法人減税を勘案しても、すでに2017年末の時点で、企業収益から見て割高としか考えられない水準にあった。これが今年に入ってさらに割高になったわけで、危うい株価がさらに危うくなっただけだ。年初の世界株高だけをみて、2018年の株価上昇に確信が持てる、などという状況では、まったくない(ただし世界株価は、当面大きく下落してから2018年内にそれ以上の幅で戻ると考えており、筆者は同年を通じて株価が下落すると考えているわけではない)。

日本株に割高さはないが、またまた先物の吊り上げ?

日本株については、日本発の悪材料は今のところ特にないし、当面現れるとも見込みにくい。また、日本の株価は、予想PERでみて、割高とは言い難い。とは言っても、大発会の、特に日経平均株価の上振れは、違和感を覚えざるを得ない。

具体的には、1月4日(木)の日本株が上昇した理由として、日本が休場の間に海外株価が上昇したことが、安心感を広げた、と解説されている。
しかし、たとえばニューヨークダウ工業株指数はどうだったか。日本が大納会で2017年の取引を終えた後の12月29日(金)(日本の夜間)、2018年1月2日(火)、3日(水)の動きをみると(すなわち、3日(水)の終値の、2017年12月28日(木)終値に対する騰落率をみると)、わずか0.34%しか上昇していない。ナスダック総合指数の方が、やや上昇率が高いが、それでも1.66%だ。

もし大発会の日経平均株価の上昇率が1%程度であれば、「日本が休場の間に海外株価が上昇したことが、安心感を広げた」と言われてもすっきり納得できる。しかし、実際のこの日の日経平均は3.26%も上昇した。

加えて、年明けのNT倍率(日経平均÷TOPIX)は大きく跳ね戻っている。実は2017年10月の上昇相場の際も、NT倍率は急上昇していた。すなわち、当時日本株全体が上昇した背景として、企業業績の改善といった実態面からの支持材料はもちろんあったが、それを反映してTOPIXが着実に上昇した以上に、日経平均「ばかりが」吊り上げられた感が強かった。

つまり、2017年に日経平均が一時2万3000円を超えたのは、業績改善という実力に基づく部分はあったものの、そのうえに海外投機筋の日経平均先物買いという、「お化粧」がたっぷり乗ったと考えられる。

その後、年末はNT倍率が低下しつつ、日経平均は2万3000円手前で足踏みする局面が続いた。この展開は、国内長期筋などが、企業収益実態に基づいて個別銘柄を買い入れてTOPIXを支える一方、短期筋が日経平均先物の投機買いを手じまって、日経平均の上昇を抑え込んだためと推察される。すなわち、市場の「健全化」であったと言える。

ところが述べたように、特に大発会のNT倍率の上昇をみると、また海外投機筋による日経平均先物の買い吊り上げがかさんだのかと、かえって陰鬱な気分になってしまう。

米国株に「大寒波」が襲来するタイミングは不透明

では、いつ何があって米国株の大きな調整が生じるか、という点だが、さしあたっては株価を大きく動かしそうな大きな政治イベントはない。したがって、筆者の見通しがこれから実現するとしても、米国株価の調整入りのタイミングは、極めて見通しにくい。何の悪材料もなしに、すぐに株価が反落してもおかしくないし、まだしばらく株価の上値追い「ごっこ」が続いてもおかしくない。

ただ、一つの株価押下げ要因になりうると考えられるのは、エネルギー価格の一段の上昇だ。すでに米国の代表的な指標であるWTI原油先物価格は、1バレル=60ドルを超えてきているが、この背景には、冒頭で述べた大寒波がある。ただそれだけではなく、サウジアラビアとイランの関係悪化など、中東情勢が影を落としているように考える。エネルギー価格の上昇は、市場の物価見通しを変化させ、長期金利が上振れする展開を招きかねない。今の株価上昇は、低金利の長期債で運用しても十分な投資収益が得られないため、運用収益をあげようと株式に資金が流入していることに支えられている面がある。したがって、一段のエネルギー価格上昇が、株価反落のきっかけとなりうる。

「天底荒れる」という言葉を聞いたことがある。相場が天井や底を形成するような転換期では、強気と弱気が激しく交錯するため、短期的には市況が大きく上下する、という意味合いだ。現在の内外株式市況は、当面の天井に差し掛かり、目先は上振れも含めて、波乱の展開となりそうだ。そのなかで今週の日経平均のレンジは、2万3200〜2万4000円を予想する。

ちなみに、今週の日本では、個人消費(およびその背景となる個人所得)関連の材料が多い。マクロ経済統計では、1月9日(火)に2017年11月の毎月勤労統計が発表され、このところ伸び悩み傾向をみせている、フルタイム労働者の給与前年比が回復するかどうかが注目される。また1月12日(金)には、2017年12月分の景気ウォッチャー調査が発表され、小売りやサービスの最前線にいる人たちの、景況感がうかがえる。

またすでに先週から一部始まっているが、2017年9〜11月期の決算発表社数が多くなってくる。こうした企業には、小売りや外食など、内需系企業が多い。すでに足元の個人消費については、デフレ脱却の始まりともみえる動きが散見されている。たとえば、2017年11月の外食売上高(2017年12月25日(月)発表)は前年比3.9%増と、15か月連続の前年比プラスを記録した。さらに同統計では、客単価が上昇していた(前年比プラス2.8%)、あるいはランチよりディナーの方が、伸びが目立った、といったような、財布の紐が緩んでいるような動きがうかがえた。

また百貨店売上高については、これまでの牽引役はもっぱら外国人観光客のインバウンド消費だったが、足元の年末年始の商戦では、百貨店の期待通り福袋が人気を集めたことなど、日本人の消費動向における明るい動きも伝えられている。こうした個人の消費心理好転とも解釈できる動きのなかで、今週以降本格化する内需系企業の決算内容が堅調なら、仮に国内株式市況が軟調でも、内需系銘柄の株価が相対的にしっかりと推移することが期待できそうだ。