1月7日から放送がスタートしたNHK大河ドラマ『西郷どん』。薩摩藩の下級武士の家に生まれた西郷隆盛(鈴木亮平)が波乱に満ちた人生を歩みながら“革命家”へとたくましく成長し、やがて明治維新を成し遂げる。

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 鈴木亮平が、女にも男にもめっぽうモテたという西郷隆盛のスケールの大きさ、包容力をどう演じるのか。初回の放送は、既存の西郷隆盛のイメージを打ち破り、これから新しい西郷隆盛という人間のドラマが始まるのだと期待させる内容となっていた。

 西郷隆盛といえば、誰もが知る明治維新の立役者で、上野にある犬を連れた彼の銅像をすぐに思い浮かべることができるだろう。ところが、印象的だったのが冒頭のシーン。彼の三番目の妻、糸(黒木華)は、西郷隆盛が西南戦争で戦死してから21年後、上野に建てられた彼の銅像を見て「ちごっ(違う)」「ちごっ!(違う!)」と、日本人に染みついている西郷隆盛のイメージを全否定。「こげな人じゃあいもはん(こんな人じゃありません)」と、強く主張していた。

 後の隆盛、幼少期の小吉(渡邉蒼)は、カリスマ藩主の島津斉彬(渡辺謙)と出会い、「弱い者の身になれんやつは、弱い者以下のクズだ」と言われ、男子のように学問や剣術を習うことが許されない弱い立場にある子ども時代の糸(渡邉このみ)の身になって考えるべく、女装して女の目線から男女の違いを実感するのだった。

 手っ取り早く正解を知って利口に振る舞うのではなく、自ら行動、体験して本質を導いていくというこのやり方。遠回りに思えるかもしれないが、貴重な経験を重ねることがその人の器を大きくするのかもしれない。小吉の、そしてこれから吉之助を演じる鈴木亮平の、濁りのない澄んだ瞳を見たらそう思えてくるのだ。

 鈴木亮平は第2回の放送から登場するが、彼もまた小手先で演技をするというタイプの役者ではなく、役柄に合わせて大幅な減量をするなど体重をコントロールし、まさに体当たりで役に挑んでいる。その笑顔が安心感を与えると同時に、強いエネルギーを感じさせる。

 女にも男にもモテるというのは、人を受け入れる器が大きいということ。つまり寛容で、人の言動を素直に受け止めることができる度量が大きいということだ。浴衣姿で犬の散歩をして庶民派という安直なイメージを抱かれている偉人・西郷隆盛は、これから本格的に真のモテ男・親しみやすさ炸裂の“西郷どん”へと進化を遂げるはずだ。その懐の深さの根底にある溢れる愛情とエネルギーの秘密を探っていきたい。(池沢奈々見)