仲間に胴上げされる鎮西の主将、鍬田(中央)。驚異的な決定力で洛南を圧倒した (撮影・佐藤徳昭)

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 バレーボール・全日本高校選手権最終日(8日、東京体育館)男女の決勝が行われ、男子は高校総体王者の鎮西(熊本)が洛南(京都)を3−0で下し、21大会ぶり3度目の頂点に立った。エースの鍬田(くわだ)憲伸(3年)が両軍最多の32得点を挙げ、最優秀選手賞に選出される活躍。一昨年4月の熊本地震の被害で練習場所の確保に苦労したチームを総体との2冠へと導いた。

 ここぞの場面で決まってトスが集まる。大エースの鍬田が3枚のブロックを打ち砕く。両軍最多の32得点(ブロックでの1得点を含む)。完勝の立役者は誰の目にも明らかだった。

 「春高の舞台で、支えてくれたみなさんに恩返しをしたい。その一心でした」

 高校総体覇者の貫禄が漂った。2年生主体の洛南相手に主導権を渡さない。2−0で迎えた第3セット。追い上げられた局面で鍬田は繰り返し口にした。「オレにトスを上げろ」。ユース世代で日の丸を背負った1メートル90のスパイカーは冷静に相手の陣形を見抜く。ときにブロックアウトを誘う強弱をつけたスパイクで得点を量産。48本中31本を決める驚異的な決定力で、最優秀選手賞に選ばれた。

 競技への情熱は人一倍だった。2016年4月。地元で熊本地震が起きた。震源地から車で1時間ほどの距離にある実家の玉名市でも余波は大きかった。余震が続き、津波警報が発令。鍬田は部屋の窓から飛び出し、家族と高台へ避難した。

 熊本市内の高校の体育館は半壊。練習再開は2週間後だった。授業後にマイクロバスで1時間かけて移動し、今も南関町や八代市のコートで汗を流す。練習量は従来の2時間から半分に減った。

 土日は県外に出て、ひたすら練習試合に臨んだ。相手チームが炊き出しや宿泊先の手配をしてくれた。「地震が起きるまでは常にバレーのことを考えたけど、地震の後はバレーどころじゃなかった」。ボールを追える喜びをかみしめ、センターコートで躍動した。

 試合後、指導歴45年の畑野久雄監督(72)と握手を交わし、ねぎらわれた。「今まで一度も褒められたことはないんです」。高校バレー生活を全うした18歳の頬に歓喜の涙が伝った。 (鈴木智紘)

鎮西・畑野久雄監督「鍬田が覚醒して、キャプテンらしくやってくれた。本当にいい選手に恵まれた」

★表彰選手

 【最優秀選手賞】 ▼男子 鍬田憲伸(鎮西)▼女子 林琴奈(金蘭会)

 【優秀選手賞】 ▼男子 鍬田憲伸、水町泰杜(以上鎮西)大塚達宣、垂水優芽(以上洛南)三輪大将(高川学園)小田島拓也(東亜学園)▼女子 林琴奈、曽我啓菜(以上金蘭会)中川美柚、合屋咲希(以上東九州龍谷)椎名真子(下北沢成徳)ヒックマン・ジャスティス(誠英)

 【ベストリベロ賞】▼男子 荒尾怜音(鎮西)▼女子 水杉玲奈(金蘭会)

鍬田 憲伸(くわだ・けんしん)

 1999(平成11)年6月28日生まれ、18歳。熊本・玉名市出身。小学2年からバレーボールを始める。玉名市立有明中時代にJOCジュニアオリンピックカップ出場。昨年3月のアジアユース男子選手権U−19日本代表。ポジションはウイングスパイカー。家族は両親、姉、兄。卒業後は中大に進学予定。1メートル90、78キロ。最高到達点3メートル43。

鎮西

 1888(明治21)年創立の私立男女共学校(生徒数は650人)。所在地は熊本市中央区九品寺3−1−1。バレー部は1949(昭和24)年創部。全日本高校選手権は9年連続30度目の出場で、最高成績は95、96、2017年度の優勝。部員数は23人。主なOBは朝日健太郎(参議院議員)ら。畑野久雄監督。