2017年は、仮想通貨の投資家にとって「一喜一憂」を繰り返した一年だったのではないかと思います。そして2018年、一部の専門家が語るように、仮想通貨が「基軸通貨を超える存在となる日」は来るのでしょうか? メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の著者で元国税調査官の大村さんは、自身のメルマガの中で世間が大きく関心を持つ「仮想通貨は脱税に使えるのか?」という疑問に答えつつ、「仮想通貨は信用があるという喧伝に惑わされるべきではない」と警告しています。

ビットコインは脱税しやすいのか?

今朝の朝日朝刊の一面にビットコインに関する興味深い記事が載っていました。

まずこの記事を読んでみてください。

ビットコイン長者、国税がリストアップ着手 税逃れ対策

 「ビットコイン」など仮想通貨の急激な値上がりを受け、国税当局は多額の売却益を得た投資家らの調査を始めた。数千万〜数億円の利益を得た投資家らをリストアップ。2018年の確定申告に向け、取引記録や資産状況をデータベースにまとめ、税逃れを防ぐ考えだ。仮想通貨をめぐる本格的な情報収集への着手は、初めてとみられる。

仮想通貨を物品やサービスへの支払い手段として初めて認める法律が国内で施行されるなど、17年は「仮想通貨元年」と呼ばれた。時価総額1位のビットコインは、1月の1ビットコイン=10万円前後から12月は一時200万円台に、2位のリップルは年初の200倍以上に高騰。1億円以上を稼いだ投資家を指す「億(おく)り人(びと)」が続出したとの情報も出回る。(朝日新聞デジタル 2018年01月01日 05時53分)

昨今、流行のビットコインに関する税の取り締まりが強化されるという記事ですね。

「仮想通貨」というのは、実際の「貨幣」が存在せずに、データ上だけで取引されるものです。つまり、「実体のない通貨」です。

現物がないということは、なかなか存在が把握しにくいのではないか、というイメージを持っている方も多いかと思われます。だから、「脱税に使われやすいのではないか」と。

が、実際はその逆です。

ビットコインほど、脱税がしにくい「金融商品」はないと言えます。

ビットコインは、所有者やその取引経緯がすべてデータに残されることになっています。国税当局としては、そのデータを収集すれば、現在の所有者が誰なのか、ビットコインでどのくらい儲かったのかというのは、一目瞭然なのです。寸分の誤差もなく、すべてを把握できるのです。

そして、税金に関する情報というのは、「個人情報の保護」はまったくないのです。つまり、ビットコインの業者たちは、国税当局に求められれば、すべての情報を開示しなくてはならないのです。顧客の情報は、丸裸にされてしまうのです。

ただ、タックスヘイブンに存在するビットコインの業者などを使った場合は、その限りではありませんが…。

とりあえず、日本の正規の業者を通してビットコインの取引をしているような場合は、脱税など絶対にできないと思っておいた方がいいでしょう。

ちなみに、ビットコインは、今後発展するでしょうか?

私は、しないと思います。

仮想通貨というのは、非常に小難しい理屈を用いて、さも非常に信用のある通貨のような喧伝をされています。

が、仮想通貨というのは、「幻想通貨」といえるもので、その通貨の価値には、実体の裏付けがありません。こういうものは、以前から、時々、生じていたのです。

たとえば、記念切手などがブームになり、何百万円の値がつけられたこともあります。この切手ブームも実は、価値の裏付けはほとんどないものです(郵便料金以上の価値の実体はない)。でも、みんなが「これは価値がある」という幻想を抱いたからこそ、そういう高い値がついたわけです。

この切手ブームのような現象は、これまで人類の歴史の中で、幾度も起きているのです。いわゆるコレクター商品などが、いい例です。実用的な価値はないけれど、「価値がある」と認める人が一定数以上いれば、それなりの価値が生じるのです。

ビットコインは、どんなに小難しい理屈を並べ立てても、幻想通貨であることには変わりありません。そして喧伝されているように「他の通貨よりも使いやすい」などということは、決してありません。これだけ価値が上下する通貨が、通貨として使いやすいわけはないのです。

今は、世界中の注目が集まっているので、価値は上昇していますが、そのうち、破たんに近い状態が起きるのではないか、と筆者は思っております。

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