フェラーリのデザイン部門を率いるフラビオ・マンゾーニ氏が語る「官能的かつ機能的に」

【ギャラリー】"Ferrari: Under the Skin" exhibition London18


フェラーリ創立70周年を記念するエキシビション「フェラーリ:アンダー・ザ・スキン」が英国ロンドンのデザイン・ミュージアムで4月15日まで開催されている。これに合わせて来場した同社のデザイン部門上級副社長を務めるフラビオ・マンゾーニ氏に、跳ね馬のデザインを手掛ける上でのアプローチやインスピレーション、さらにフェラーリのSUVや電気自動車に関するデザイン構想について尋ねてみた。
52歳のマンゾーニ氏は愉快なイタリア人で、なまりのある英語で話してくれる。情熱を持ち、率直な物言いで、何が一般的に、そしてフェラーリ独特の優れたデザインを生み出すのかについて、確固たる見解を持っていた。

2010年にデザイン部門のトップに就任して以来、マンゾーニ氏はフェラーリ・スタイリング・センターの重要性を飛躍的に向上させてきた。現在は総勢80人のチームを率いて、同社の力のみで新型車のデザインを生み出し続けている(外部のデザイン会社であるピニンファリーナに頼ってきた以前とは対照的だ)。そんな独立姿勢でマンゾーニ氏が全体を監修した最初のモデルが「ラ フェラーリ」だった。同氏は"形状が機能に従う"と固く信じている。

「しかし、ドイツ流とは違います」と彼は笑顔で言いながら、「488 GTB」のサイドを例に挙げた。このクルマは特定の方法で車体の周囲に流れる空気を利用する必要に合わせた形状でありながら、見た目も魅力的に仕上がっている。「フェラーリには装飾のためだけに入れたラインは存在しません。488 GTBのスクープは官能的であり、同時に論理的にデザインされているのです」とマンゾーニ氏は語る。


【ギャラリー】Ferrari 488 GTB official photos22


また別の例として、彼の新作であるサーキット仕様の「FXX-K Evo」を取り上げた。これは、彼がフェラーリに来る前にエンジニアリングを非常に重視してデザインされた「エンツォ」とは異なる手法が採られたという。「FXXは機能性を維持しつつ、なおかつ美しくするために、8ヶ月に渡ってエンジニア達と協力しながら開発を進めました」と同氏は語る。

マンゾーニ氏の仕事において、フェラーリが過去に生み出した多くの素晴らしいモデルに対する敬意は欠くことができない。実際、同氏はマルチェロ・ガンディーニ氏がデザインした「ディーノ 208 GT4」を所有しており、「いまだに美しく、アイコン的」と語っている。しかし、同氏は過去に縛られることはない。「デジャブは好みません」と彼は微かに咎めるような表情で言った。「過去のモデルへのノスタルジアとか、ラインアップ全体に共通する類似性を作り出すことには同意できません。しかし、バッジがなくてもフェラーリであると認識されなければならないのです。それを実現する方法は色々あります。ヘッドライトのような細部だけでなく、面の処理の仕方など、言葉で説明し難いのですが、感覚的なものですね」。


【ギャラリー】Ferrari FXX K Evo12


マンゾーニ氏はまた、自動車業界のトレンドを追うことも望んでいない。かねてから高級SUVに対して否定的な見解を示している。「新型フェラーリを開発する時はいつも、あらゆる点の向上に努めています。その中にはクルマの重心の最適化も含まれます。だから、(重心が高くなる)SUVはフェラーリではありません。なぜ、これほど多くのブランドがSUVを手掛けるのか、その理由は理解できませんが、個人的には、勇気のなさの表れに思えます」と、同氏は2015年に語っていた。

それからわずか2年しか経っていないが、親会社であるフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のセルジオ・マルキオンネCEOは最近、フェラーリのクロスオーバーまたはSUVの計画に関して何度か発言している。マンゾーニ氏はそれについてどう感じているのだろうか。「お答えできませんが、1つ確かに言えるのは、フェラーリは追随者ではないということです。セルジオ・マルキオンネや他の関係者がこれまで発言した内容に私が何かを付け加えることはできません。ただ、フェラーリはトレンドを追いません」。

世界的な変化の方向性を考えると、またシド・ミードからル・コルビュジエに至るまで、普通と異なる想像力や表現力を持つデザイナーを愛するマンゾーニ氏なら、電気自動車(EV)のフェラーリについて検討したこともあるに違いない。ランボルギーニとマサチューセッツ工科大学(MIT)が共同開発すると最近発表した未来的なEVコンセプト「テルツォ・ミッレニオ」については、どう思っているのだろうか。

「競合ブランドには大いに敬意を払っていますが、影響されることはありません。当社には独自のビジョンがありますし、セルジオ・マルキオンネのリーダーシップによって、フェラーリを驚くような方向に発展させる大きなチャンスが与えられています。もちろん、その方法を私がお話しすることはできませんが、私たちは今、新しいものを生み出す上で特別な時期を迎えています。変化が起こるときには、創造的な解答も頂点に達するのです」とマンゾーニ氏は述べている。


「フェラーリ:アンダー・ザ・スキン」展には、1947年に製作された「125 S」から最新の「ラ フェラーリ アペルタ」まで、合計価値およそ1億8,500万ドル(約210億円)に上る新旧のロードカーやレースカーが展示されているほか、創設者エンツォ・フェラーリの並外れた人生をうかがわせる往年の写真や手紙、フェラーリF1ドライバーのヘルメット(米国人ドライバー、フィル・ヒルが1960年代に使用していたバブルシールドもある)など、同社の歴史を物語る貴重な品々が公開されている。ロンドンを訪れる方は、是非デザイン・ミュージアムに立ち寄ってみてはいかがだろうか。詳しくは公式サイトdesignmuseum.org/exhibitions/ferrari-under-the-skinをご覧いただきたい。

By Guy Bird
翻訳:日本映像翻訳アカデミー