いよいよW杯イヤー。日本代表の課題を宮澤ミシェル氏が分析

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サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第28回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど、日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、今年6月にロシアで開催されるW杯に出場する日本代表について。昨年、苦しい状況にあったチームが改善すべきポイントなどを考察する。

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新年明けましておめでとうございます! 今年は6月にW杯も控えているので、昨年以上にサッカー界の話題にガンガン切り込んでいくので、楽しみにしてください。

そんなわけで新年一発目のテーマをどうするか迷ったけれど、やっぱりW杯イヤーはハリル・ジャパンの話題から始めようと思う。今年はいよいよワールドカップが開催される重要な年。日本代表にとっても、サッカーファンにとっても楽しみなシーズンが始まる。

その日本代表は年末のE−1選手権の韓国戦に1-4で大敗。もし私やラモス(瑠偉)が監督だったら、試合前にもっと日韓戦の重要性を選手たちに訴えて「いつもよりさらに気合いを入れていこう!」とモチベーションを上げるようにしたのにな、と思ってしまう結果だった。

海外組を招集できないことや、杉本健勇や清武弘嗣ら、当初招集した選手が次々にケガで離脱してしまい、即席チームという側面が強かった中、初戦の北朝鮮に1-0で辛勝。後半アディショナルタイムでの決勝点という劇的な勝ち方だったから乗っていけると思ったんだが…。

続く中国戦も2-1でなんとか勝利したとはいえ、選手たちは生き生きとプレーしていた。初戦、2戦目と何度もサイドを崩してクロスを上げていたし、選手たちの距離感もよかった。組織で戦う日本らしい特性を活かしているなと感じたんだ。

それが、韓国には完敗。ハリルホジッチ監督がライン際から指示を出したのはちょっとで、ほとんどはベンチに座っていた。まるで勝つ気がないように映ったね。11月のブラジルとの親善試合もそうだったけれど、彼の中では勝敗よりもテストを優先しているのだろう。でも、日韓戦ではテストプランは取りやめて本番モードの采配に変更すべきだった。大量リードを奪われた中でのテストなんて本質は何も見えないのだから。

とはいえ、確かに難しいゲームではあった。日本は引き分け以上で優勝、韓国は勝てば優勝という試合で、長年のライバルである韓国から試合開始早々の1分にPKをもらって先制した。

失点した韓国はギアを上げ、パワーをかけて前への推進力を高めてきた。日本代表は先制した後も試合前からのプランは変えず、前線からプレスをかけていたけど、1点を取ったことでプレッシャーが緩くなっていたね。ひとりひとりが半歩か1歩遅れるから、圧力がかからずに、結果的に相手の攻撃を受け続ける状態にはまり込んでしまった。

日本代表はブラジルW杯の初戦でコートジボワールに先制しながら、それを守りきれずに敗れたけれど、その時の課題は何も改善されていなかった。先制点を奪った後のゲーム運びに難点があることは昔から日本サッカー界の課題ではあるけど、ここまで重症だとは思わなかった。

昔ならラモスや柱谷哲二が強力なリーダーシップを発揮して、ベンチの指示とは違ってもピッチの選手をコントロールした。今なら長谷部(誠)や吉田(麻也)がリーダーシップを発揮するけれど、彼らが故障などでロシアW杯に出場できなかったら、韓国戦同様にゲーム運びに苦しむ可能性は十分ある。

トニーニョ・セレーゾが鹿島を率いていた頃、「今日は引き分けで乗り切れと指示をすると、驚くほどやられる」──つまり、負けてしまうと嘆いていたんだよ。天皇杯や高校サッカー選手権、野球の甲子園などトーナメント形式の一発勝負が多く、日本人には引き分けるという考え方があまり根付いていないのかもしれない。発足当初のJリーグに引き分けがなく、延長Vゴール方式だったのは、そういうことの現れなのだろうね。

でも、サッカーは日本人だけがやるスポーツではない。世界中のいろいろな価値観を持つ国や相手と戦わないといけない中で、負けない戦い方をする90分間のマネージメント能力も重要になってくる。

Jリーグでは各チームが天候や順位など様々な状況に合わせて、いろいろなゲーム運びをするようになってきたけど、まだまだ世界では未熟ということ。ドイツやイタリア、フランスやブラジルなどの強豪国は監督に指示をされなくても選手が暗黙の了解でゲーム運びを調整する。そこのレベルまでいってもらいたいね。

イビチャ・オシムさんは日本代表監督時代に「考えて走れ」と言ったけれど、日本人選手は監督からの指示待ちの傾向が強いから、ゲーム運びがなかなか上達しないんだよ。以前、柔道の古賀稔彦さんが「柔道の選手は試合場のすぐ横にいる監督の指示に従い過ぎる」と言っていたことと同じだ。サッカーに限らず、日本スポーツ界全体の課題だけど、ひとりひとりがもっと「勝負のアヤ」を見極めることができるスポーツ文化に変わっていってもらいたいね。

それにしても、2017年の日本代表は、いい試合だったと手放しで褒(ほ)められるのはW杯アジア最終予選のオーストラリア戦だけだった。それだけに、苦労したものが2018年は大きな実りとなって我々のもとに届けられることを期待している。

日本サッカーが今後もさらによいものになっていくように、今年も一緒に応援していきましょう!

(構成/津金壱郎 撮影/山本雷太)

■宮澤ミシェル

1963年 7月14日生まれ 千葉県出身 身長177cm フランス人の父を持つハーフ。86年にフジタ工業サッカー部に加入し、1992年に移籍したジェフ市原で4年間プレー。93年に日本国籍を取得し、翌年には日本代表に選出。現役引退後は、サッカー解説を始め、情報番組やラジオ番組などで幅広く活躍。出演番組はWOWOW『リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』NHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』など。