ロックバンドのandropが10日に、新曲「Joker」をリリースする。同曲は映画『伊藤くん A to E』(12日公開)の主題歌で、内澤崇仁(Vo、Gt)が柚木麻子氏の原作を読んだり、同タイトルのドラマを観たりして書き下ろしたという。また、同日2017年10月におこなった、初の野外ワンマン公演『androp one-man live 2017 at 日比谷野外大音楽堂』が映像作品としてもリリース。2017年は「SOS! feat. Creepy Nuts」で初のコラボ作品をリリースするなど、よりその音楽性を広げた。2019年には活動10周年を迎える彼らがその序章として作成した新曲への想いや、その長い活動で大事にしていること、そしてこれからの抱負など話を聞いた。(※インタビューは昨年実施)【取材=松尾模糊/撮影=片山 拓】

二面性を表現してきた

androp

――野音での公演を終えていかがですか。

内澤崇仁 初めての野外のワンマンということで、準備やリハーサル、セットリストなど相当準備を万全にしておこなったんですね。雨だけは想定外でしたが、それもいい形で反映されたというか…みんな観たこともない様なライブが出来たんじゃないかと思います。

佐藤拓也 野音の歴史の中でもやったことないような演出をやりたくてスタッフやメンバーと、これはできる、できないというのを何度も話し合って。ただ、当日のリハーサルは日中の明るい時にしかできないので、実際に暗くなったときに照明や映像が映るのかというのは実際にやるまで分からないので。ほぼ、ぶっつけ本番の状態で臨んで、想像通りにいったことも、想定外だったこともありました。

 雨でレーザーがキラキラ反射したり。だからこそ、その日しかできないライブができて。僕らも今回映像になって初めて客観的に観れたので、映像はみんなに観てもらいたいですね。

前田恭介 実際に野音のステージに立ってみたら、野音の持つ魔法というか、歴史みたいなものを感じることができました。自分たちだけではなくて、スタッフやお客さんにとっても思い入れのあるライブになったんじゃないかなと思います。

伊藤彬彦 カメラのレンズに雨が当たっていい感じに画が滲んでいたりして。雨でお客さんも大変だったと思うのですが、いいライブになったと思います。

――その野音公演で初披露された今回の新曲「Joker」ですが、『伊藤くん A to E』の主題歌として書き下ろすにあたって、何か核となるものはあったのでしょうか?

内澤崇仁 原作と脚本とドラマを拝見して、映画のスタッフ、プロデューサーの方々ともお話しさせてもらって作っていきました。容姿端麗な主人公の伊藤誠二郎くんが無自覚で周りの人間を傷つけるというところが、この作品に限ったことじゃないなと。自分の周りにも伊藤くんのような人はいるし、もしかしたら僕自身そんな側面があるんじゃないかと思いました。

 例えば、傷つけるつもりはなくても迂闊に口に出した言葉が相手を傷つけたりすることはよくあって。それは多くの人々に共通する部分だと思い、そういう部分を歌詞に落とし込んでいきました。

――今回は詞先で制作された?

内澤崇仁 初めはメロディも歌詞も、楽曲の構成も同時にできました。ギターのリフから始まるバンドサウンドの曲だったのですが、映画のプロデューサーの方にデモを聴いてもらったところ、「もう少しエレクトロなサウンドも聴いてみたい」と。あと、Aメロの部分は辛らつな言葉をラップ調で歌っていたのですが、その部分をメロディアスにしたものを聴いてみたいと。

 その中で<本当は特別になりたい>というフレーズがあって、そのフレーズをもう少し膨らませた世界観も聴いてみたいとの事だったので、そうしたやり取りの中で段々と変化させていきました。

――メンバーの皆さんは最初の状態を聴いていたのですか?

佐藤拓也 聴いていました。エレクトロなサウンドに変わった時に言葉数は減ったものの、映画の物語との距離感がいい感じになったと思います。

 この映画は、ある意味人間の「二面性」をテーマにしているところもあると思っていて、僕らの作り続けている音楽の世界観とも近いものがあるのでそこが上手くハマったかな、と思います。

前田恭介 僕は、バンドサウンドからエレクトロに変わったものを聴いて、これだけ1曲が幅広く変わるアレンジができる内澤くんって凄いなと思いました。バンドメンバーとして改めてリスペクトですね。

 今回はエレクトロなアレンジで、僕としても新しいチャレンジができたので良かったなと思います。映画の中で僕たちの曲が流れるのを観るのが楽しみですね。

伊藤彬彦 映画の伊藤くんと僕は全く関係ないのですが、この曲のやり取りをしている間、スタッフのメールなどでも件名が「伊藤くんについて」みたいな感じで僕が何かやらかしたのかと思う日々が続いて苦痛でしたね…。

一同 (笑)

伊藤彬彦 でも、いい加減に慣れてきて、こうやってインタビューで「伊藤くん」と言われてもピクっとならないようにはなりました(笑)。

 バンドサウンドからエレクトロになったので、打ち込み方向に振り切っていこうと今まで以上にチャレンジしました。1コーラス全編、生が入っていなくて打ち込みになっていたりします。

打ち込みの良い所と、生音の良い所をきっちりと使い分けていこうと。いい意味での割り切りかたが、パンチのあるサウンドに繋がったと思いますね。

タイトルに込められた意味

内澤崇仁

――カップリングに収録される「Ao」は、また対照的というかホーンセクションも入った温もりのあるサウンドになっていますね。

内澤崇仁 日本赤十字社の「はたちの献血」の為に書き下ろした楽曲ですね。

――前作のアルバムも『blue』というタイトルでしたね。内澤さんの中で「青」に対する特別な想いみたいなものがあるのでしょうか?

内澤崇仁 この曲に関しては、「同じ空の下、みんな繋がっているんだよ。一人だとしても色んな人の助けがあって今があるんだよ」というメッセージを込めました。それと、「献血」ということもあり、僕らメンバーがA型とO型なのでそういう意味でタイトルは「Ao」にしました。

――深いですね。

内澤崇仁 赤十字なので、そこは「赤」でしょ、というツッコミもあるかと思いますが、動脈と静脈があって、静脈は青で表すじゃないですか。献血は静脈から採る
ので「青」で。

――なるほど。なかなかマニアックですね。今年はCreepy Nutsさんとコラボした「SOS! feat. Creepy Nuts」を野音でも披露されました。DJ松永さんは残念ながら、風邪で欠席されましたが、あの後お会いされて何かお話はされましたか?

内澤崇仁 あの後、大阪でも一緒に「SOS! feat. Creepy Nuts」を演りました。

佐藤拓也 野音は、当日の朝にスタッフからLINEで「今日は松永さんが欠席ですが、R-指定さんは来てくれます!」というドッキリみたいなメッセージが来て(笑)。楽屋で集まってどうしようかと話をして臨みましたね。

前田恭介

――ずっとワンマンツアーをやられていますが、こういったアクシデントは結構ある?

佐藤拓也 ないことが一番なんですけど、あると言えば、あるので。なるべく動じないようにしようと思っています。

内澤崇仁 逆にあると、どうしてやろうか? とテンション高くなっちゃいますね。いつもと違うことが起こると、それをどう乗り越えようかと考えることが楽しいです。

――今年は「SOS! feat. Creepy Nuts」、内澤さんは、miwaさんとの共作での「アイオクリ」を提供するなど音楽的な幅を更に広げた1年だったと思うのですが、何かインスパイアされたことがあったのでしょうか。

内澤崇仁 昨年、「image world」というレーベルを立ち上げたことで、色んな事に対して自分たちで責任を持って進めていくようになりました。初めてやること、今までやったことのないことにチャレンジしていこうという気持ちで2017年は活動してきました。「SOS! feat. Creepy Nuts」は初めてのコラボだったし、初の野外ワンマンでの野音だったし、初のBillboard Liveや初の主催対バンイベントを企画したり…色々とチャレンジしていこう、という事だったので。今後も新しい事にチャレンジし続けていきたいですね。

――それはメンバーの皆さんも『blue』で作詞作曲をされて意識的になっている?

佐藤拓也 そうですね。あまり自分の楽器に囚われることは、なくなってきていますね。それはアレンジにおいても他のパートについて思うことがあればどんどんディスカッションするようになりましたし、それは『blue』を通してより感じますね。

感動の共有

佐藤拓也

――転換期から一つ抜け出して、バンドとしても前向きな姿勢を感じます。これから目指す音楽や活動についてイメージみたいなものはありますか。

内澤崇仁 2017年は距離の近い音楽を届けようという想いから、ライブハウスツアーをまわりましたが、2018年はホールでしか出来ない演出をみてもらったり、座ってじっくり聴いて欲しいという想いからホールツアーをまわります。ライブハウスでもホールでもちゃんと音楽を届けられるバンドでありたいと思うし、どんなに距離があろうとも、近くに感じられるバンドでありたいと思っています。

――2019年には10周年を迎えます。ここまでずっと立ち止まらずに駆け抜けている感じがするのですが、活動を長く続ける上で気を付けていることなどがあるのでしょうか。

内澤崇仁 自分たちが感動しないものはやりたくない、という想いはすごく強いですね。自分たちが面白いと思ったものしかやっていない感じです。届ける音楽もそうあって欲しいと思っています。聴いている人がワクワクするような、感動する音楽を目指してやっています。

――前に長くやっているバンドさんにインタビューした際に、長くやっていくコツとして「メンバーで同じ感動を共有する」ということを聞いたことがあります。andropさんもプライベートなどで同じ映画を観たり、音楽を聴いたりしていたりします?

佐藤拓也 今年、4人でジョン・メイヤーのライブを観るためだけに、シカゴまで行きました。日本では観れない編成でのライブだったので、伊藤くんが「今回これを見逃したら、この編成のライブを俺は一生観れない」と一人で行こうとしていたところに僕らも乗っかる感じで。

伊藤彬彦 最初は、俺アメリカ行くから、申し訳ないけど俺に休みをくれとお願いして(笑)。みんなも「行け行け」言っていたのに、俺よりも先に航空券を取っていて。

内澤崇仁 しかも、「Prism」のリリース時期でめちゃくちゃ忙しい時に(笑)。

佐藤拓也 そうそう。でも、これに行くことに非常に意味があると思っていたし、やっぱり4人で同じライブを日本じゃないアメリカで観るということは、新しい夢に繋がるんじゃないかと。

――なるほど。その体験は大きいですね。実際に観ていかがでしたか。

伊藤彬彦 良かったですね。

内澤崇仁 ドライだな(笑)。

伊藤彬彦 何がいいって、発端は僕個人の夢なんですが、それを僕だけのものにしなかったわけで。4人それぞれの個があって、夢があって。でも、andropはそれを全員で後押ししていこうという姿勢は強いと思いますね。

 ジョン・メイヤーはみんな好きだし。単純に海外で音楽に触れることは普通にいいことだと思ったので。

伊藤彬彦

――危険な目にあったりはしなかったですか?

伊藤彬彦 危険なことは何もなかったですが、ちょっと慣れていないことにはみんなで立ち向かわないといけないので、絆は深まりましたね。英語はみんなできないので。

前田恭介 全く喋れません。勢いでなんとか…

佐藤拓也 っぽく言うのもできないレベルですね(笑)。

――最後に来年の抱負をお願いします。

内澤崇仁 この「Joker」から2018年はスタートします。とても大切な曲ができたので、ツアーなども続々と決まっているので皆さんに色々と届けることができたらいいなと。どんどん新しいことや感動する音楽を届けたいと思っています。

佐藤拓也 新しい作品も出ますし、ツアーもしっかり成功させて、2019年の10周年イヤーをいい形で迎えられるように頑張りたいと思います。

前田恭介 今年は音楽的にも色々なことをやって、自分たちがまだまだだなと感じたこともあったので、2018年はもっと演奏も上手くなりたいなと思いますね。

伊藤彬彦 2017年は引き出しも増えたと思うので、それを自分たちの大きな幹として育てたいですね。2017年が修行の年だったとすると、2018年はそれを研ぎ澄まして何か軸となるものを育てたいです。

(おわり)

androp 「Joker」 前田恭介 前田恭介 佐藤拓也
佐藤拓也 伊藤彬彦 伊藤彬彦 内澤崇仁 内澤崇仁
androp 10日に「Joker」をリリースするandrop