幕末から明治維新にかけて活躍した西郷隆盛(写真:のびー / PIXTA)

新たなNHKの大河ドラマがスタートすると、新年が来たことを感じます。昨年は戦国時代の物語でしたが、今年は幕末の薩摩(鹿児島県)が生んだ偉人・西郷隆盛を主人公にした「西郷(せご)どん」です。

極貧の下級武士にすぎなかった素朴な主人公西郷が、南国奄美で愛に目覚め、勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、揺るぎなき革命家として覚醒。勇気と実行力で時代を切り開いたリーダーとして描かれていく物語になるようです。

城主へのボスマネジメントに注目


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筆者は大河ドラマを欠かさず見ていますが、物語から仕事で役立つ教訓を得る機会がたくさんありました。

一昨年に放映された「真田丸」では変化の激しい戦国時代を生き抜くための柔軟さ。あるいは、過去のドラマから勇気や決断力など「リーダーとして大事なことだよな……」と痛感したことがたくさんありました。

今年の「西郷どん」では西郷隆盛(以後は西郷氏)と同郷の後輩・大久保利通(同、大久保氏)による城主へのボスマネジメントに注目しています。

ボスマネジメントとは、部下が自分の仕事がしやすいように(上司を)コントロールして、積極的に後押ししてくれるような状況をつくりあげること。これからの時代にとても重要なテーマになると思います。過去にも同様のテーマで書かせていただいたことがありますが、当時との時代の変化も踏まえて、みなさんと考えてみたいと思います。

幕末から明治維新への時代の変化に最も尽力した3人(維新三傑)として木戸孝允と並び評される西郷氏と大久保氏。同じ地域で生まれて、同じ時代を生きながら、歴史の舞台で活躍した時期は違っていました。

西郷氏が活躍したのは幕末から維新にかけて。大久保氏の活躍は、維新以後に目立っています。その違いはどうして起きたのか? 筆者が注目したのは上司=ボスとの関係にあります。この2人がかかわった代表的なボスは島津斉彬と島津久光。兄弟ながら血のつながっていないこの2人は、部下のマネジメントにも大きく違いがありました。

斉彬氏は時代の先端を走りつつ、部下に仕事を任せるタイプ。一方の久光氏は実直で、安定を志向しつつ、忠義を求めるタイプ。この違いに対する適応の仕方で、2人が活躍する時期が変わったのではないかと筆者は考えています。

西郷氏は薩摩藩主の斉彬氏から目をかけられ、下級武士から藩の重要な役割に抜擢。藩政に参画できる立場になります(当初の肩書は庭方役と大したものではなかったようですが)。この上司による抜擢が、その後の明治維新における重要人物となる、きっかけとなりました。また、西郷氏自身も「民の幸せこそが国を富ませ強くする」という信念を持つ斉彬氏に惹かれ、円滑な上司部下の関係を築いた時期でした。

ところが、斉彬氏が亡くなり、後継者となった久光氏のマネジメントとは合わず、島流しに遭うなど苦しい時期が続きます。一方で大久保氏は斉彬氏の時代には父親が謹慎処分であったこともあり、不遇な立場でしたが、久光氏に抜擢されて頭角を現します。さらに久光氏の意向を汲んで、薩摩を幕末の中心的な存在に押し上げていきました。歴史的には、斉彬>久光のように力量を評価されがちですが、大久保氏のように、久光氏を上司にして、水を得た魚のように活躍した人はいたのです。

ボスに対する適応力の差

仮に大久保氏が斉彬氏を上司にしたならば、活躍できたのか? それはわかりません。ただ、明らかなのは西郷氏が上司に対する適応力は低かったこと。これを現在に当てはめたら何を学びの機会にできるでしょうか?

上司=ボスが変わると活躍の度合いが大きく変わる人がいます。逆に上司が変わっても活躍の度合いが変わらない人がいます。これはボスに対する適応力の差に起因するのではないでしょうか?

上司各人のマネジメントスタイルには違いがあります。たとえば、部下に高い目標を与え、叱咤激励するドライバー型。対照的に部下の満足度や成長に気を配るエンハンサー型。どちらかの上司しか受け入れない部下もいれば、どちらの上司でも気にならない部下がいます。この違いが適応力から生まれます。

たとえば、通信関連の営業部門に勤務しているSさんは前の上司とは相性がばっちりで業績もつねに高い状態が続きました。「お前に任せる、結果だけ出してくれればいい」と放任してくれるマネジメントが心地よかったのかもしれません。ところが現在の上司は経理部から異動してきた人。さらに、営業職としての現場経験は皆無。そこで、

「営業活動をSFA(営業支援システム)を通じてキチンと報告してくれないと困る」

と業務の把握のために、これまでになかった事務作業と承認を得るための相談業務が大幅に増えることになりました。すると、Sさんの業績は劇的に下がってしまうことになりました。ついには「あなたとはやっていけない」と上司にクレームをぶつけ、険悪な関係になってしまいました。

ならば、Sさんの上司は無能なのか?といえば、そうとも言い切れないようです。同じ部署で営業をしているGさんは上司のマネジメントに不満を感じることもなく、業績はむしろ向上したくらい。その理由を聞いてみると、

「細かな報告のために営業活動を振り返る機会が生まれて、仕事に抜け漏れがなくなりました」

とのこと。さらに上司は営業の現場経験がないが、報告をすると「次のアクションはどうするつもりなのか?」と事細かに質問をぶつけてくれるので「考える」習慣が身に付いて、業績が向上したようです。さらに、

「上司によりマネジメントは違うのが当たり前。各人のいいところを活かして、仕事に取り組めば、上司が変わって業績が落ち込むことはありません」

と語ってくれました。要は高い適応力で巧みにボスマネジメントをしているのでしょう。

上司ごとに発言・行動をカスタマイズしよう

では、どうしたら巧みにボスマネジメントできるのか? 大事なことは上司ごとにマネジメントスタイルが違うことを踏まえて、発言・行動をカスタマイズすることではないでしょうか。

たとえば、「あとは君に任せる」と言って任せたら細かな報告はいらないという上司と、報告はマメに欲しい上司がいます。あるいは出すぎるくらいの率直な発言を好む上司と、嫌う上司がいます。相手に合わせて、通り一遍ではなく、カスタマイズして対応することで上司が自分のために動いてくれる可能性が高まります。

そもそも、上司も人の子。自分に合わせてくれる部下を好みます。おそらく、西郷氏は久光氏に対してカスタマイズする適応力はなかったかもしれません。だから、島流しに遭うなど不遇な時代になってしまったのではないでしょうか? 

もちろん、そうした不器用なところが大河の主人公になれる西郷氏の魅力であることはわかっています。ただ、大久保氏とのコントラストを比較しながら、現代に活かせる教訓を見いだすつもりでドラマを見てみるのも一興ではないでしょうか。