1月28日に発売される「バリアフリーパン」。グルテン、アレルゲンだけでなく、宗教上の理由で規制のある原料も除いた(写真:コスモバイタル)

東京・池袋、立教大学の前で結婚式場やレストランなどを展開する「リビエラ東京」。立教通りに面した同社のカフェで1月28日、新しいパンが売り出される。

新しいパンは3種類。いずれも従来にない、新しい概念のパンだ。

油脂など添加物を使わない

1つ目が、「オイルフリー食パン」(1斤税込み500円)。名称通り、油脂のほか、乳化剤や増粘剤などの添加物が含まれていないパンだ。

パンは本来、小麦と水、塩に、パン種(酵母菌と乳酸菌が共生したもの)を加えて発酵したものだ。発酵食品のため日持ちし、もとは防腐剤も油脂も不要だった。

しかしその後、酵母菌を純粋培養したイーストによるパン作りが中心になる。さらに、日本では柔らかいパンが好まれるため、砂糖や油脂、乳化剤などが加えられていった。

現在では「天然酵母」を使うパンも増えているが、定義がはっきりしないうえに、逆にその酵母によってカビが増える危険があり、むしろ添加物が増えてしまっているケースも見られる。

リビエラ東京が発売するオイルフリー食パンは、油脂や乳化剤の代わりに、ある処理をした米粉を入れる。小麦粉の10〜15%を米粉に置き換えればよく、あとは通常のパンと変わらない。一般の米粉パンのようにパサパサしておらず、柔らかいしっとりとした食感がある。


左がオイルフリー食パン、右がグルテンフリー食パン。米粉でもしっとり感があるのが特徴(写真:コスモバイタル)

2つ目が、「グルテンフリー食パン」。食に関心のある人なら、グルテンフリー食品はもはや特別な存在ではないだろう。グルテンは小麦などに含まれるたんぱく質で、アレルギーを持つ人が食べると炎症を起こしたり、体調不良を起こしたりすることがあるといわれる。そのグルテンを抜いたグルテンフリー食品は、近年では健康にいい食事としても、欧米を中心に注目されるようになった(ただ現状では、グルテンフリー食品に対してさまざまな評価がある)。

リビエラ東京は今回、小麦の代わりに米粉100%とすることでグルテンフリーを実現した。ここでもポイントは、添加物を使わずにグルテンフリーを実現していること。実は市販のグルテンフリーパンは、小麦を抜くために、油脂をはじめとした添加物を多く使っているケースがある。

リビエラ東京のグルテンフリー食パンは、米粉、はちみつ、塩、お酢、イーストと水だけで作っている。米粉が中心なのでかなり”重い”が、食感はもっちりでしっとり感もある。販売は完全予約制で、小麦などの混入を防ぐために福岡県の工場で生産する。物流などのコストがかさむため、価格は1斤あたり税込み2160円と高め。ただ今後販売量が増えれば、値下げも検討するという。

世界中誰でも食べられる「バリアフリーパン」

そして3つ目が、「バリアフリーパン」だ。グルテンフリーであることに加え、卵や乳、エビなどのアレルゲン、さらには牛肉や鶏肉、大豆など宗教上の理由で規制がある原料も一切使用していないパンだ。「バリアフリー」を実現するために除くべきと定義した原材料は、27原料に及ぶ。

通常のパンは固形性を維持するためにも添加物を使用するが、その代替として白インゲン豆を使用した。価格は1個あたり税込みで325円。誰でも安心して食べられるパンとして、欧米人や中国人など訪日客への販売も想定している。

これらの商品は、リビエラ東京と食品機械ベンチャーのコスモバイタル(東京都豊島区)が共同開発した。いずれも米粉に「ある処理」をすることがポイントだが、その技術を提供しているのがコスモバイタルだ。


上段が過熱蒸気で処理したコメとコメパウダー。このコメパウダーを使うと粘り気としっとりさが出る(写真:コスモバイタル)

コスモバイタルが開発した調理器は、過熱水蒸気によって高温・ほぼ無酸素の状態を作り出し、食品の酸化を防ぎながら短時間で調理できる。過熱水蒸気に加え、赤外線ヒーターによって最高550℃の高温・低酸素空間を作り出すことが技術的なキモだ。

生米にこの加熱処理を施し、粉砕してコメパウダーを作る。そこに通常の米粉を配合する。すると水に混ぜたときに、米粉だけの場合に比べて粘性が増す。それがグルテンや添加物の代わりになる。

コメパウダーは、パンだけでなく、麺や天ぷらなどにも利用できる。また、この調理器は調理中の酸化を防ぎ、食材のうまみを引き出すことができるため、肉・魚・野菜などあらゆる食材での活用が期待されている。

「おいしさをとことん追求」

コスモバイタルの加納勉社長は、コンビニエンスストア最大手、セブン-イレブン・ジャパンの出身。同社の食品供給ネットワークを作り上げ、焼きたてパンも仕掛けた人物だ。セブンを離れた後は、一貫して食の安全・安心の問題に取り組んできた。「その集大成。食材の本来持つ味を引き出し、おいしさをとことん追求したい」(加納社長)。コスモバイタルは2016年3月に設立されたが、2017年秋にリビエラの出資を受け、リビエラとの共同開発を加速させてきた。


コスモバイタルの加納社長。背景は今回パンを売り出す「リビエラカフェグリーンスタイル」(記者撮影)

リビエラ東京ではレストランやウエディング事業を展開する中で、アレルギー対応に関する要望が年々多くなっていたという。リビエラの小林昭雄社長は「食の安心を提供するため、さまざまなメニューを共同開発しているが、商品化しやすく、米粉普及という国の方針にも沿うため、パンの製造販売から始めた」と語る。

バリアフリーパンについては、コスモバイタルが旅行・観光業界からの要望で開発した経緯があり、今後リビエラ東京以外にも販路が広がりそうだ。新たな食への挑戦はどこまで受け入れられるか。