売れっ子脚本家の“クズケン”こと久住健太郎を演じる中村倫也/撮影=大石隼土

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人の恋愛をのぞき見しているような感覚のドラマが話題になった「伊藤くん A to E」が、岡田将生&木村文乃W主演で映画化!

【写真を見る】中村倫也は「僕自身もクズケンのように優しいので、皆さんご存じの通り(笑)」とおちゃめに語る/撮影=大石隼土

超モンスター級“痛男”の伊藤誠二郎(岡田将生)と、彼に翻弄(ほんろう)される4人の女性たち、そして彼女たちの恋愛相談を脚本のネタに使おうとしている崖っぷち“毒女”・矢崎莉桜(木村文乃)の姿を通し、女性たちの本音を赤裸々に描いた映画「伊藤くん A to E」。

1月12日(金)の公開を記念したリレー連載第7回は中村倫也が登場する。中村が演じるのは、莉桜のシナリオスクールの元生徒で売れっ子脚本家の“クズケン”こと久住健太郎。

ドラマと映画で並行して撮影してきたという本作の撮影エピソードや、自身の“A”(愛らしい部分)と“E”(イタい部分)を交えながら、見どころを語ってもらった。

――いよいよ公開を間近に控え、今の心境を教えてください。

連続ドラマもほぼ同時に撮っていて、ドラマ版では「伊藤」というキャラがほぼ莉桜の妄想上で進んでいて、最後に“ご本人様”として(岡田)将生が出てきて。

それを経て、映画では将生が最初から伊藤として演じるという話なので、「企画自体が面白いな」と思いましたし、何より台本が面白かったです。

――ドラマと映画の内容が、視点を変えて描かれていくということなので、その難しさもあったのかなと思いますが。

仰る通り、ドラマと映画でほぼ同時に撮っている部分もあったんです。特にドラマの7、8話と映画は一緒に撮っていたので、夏帆ちゃん演じる神保実希と2人でホテルに行くシーンの撮影では、5日間くらいそのホテルにいました。

前半3日はドラマを撮って、後半2日で映画を撮るような。だから夏帆ちゃんとも「(同じシーンを撮るので)デジャヴ感満載だね」って話していました(笑)。

でも台本が微妙に違ったり、もちろん演出も違ったりしたので、それぞれ新しい印象はあります。監督の個性で切り取られていて、面白いですよ。

――キャラクター的に意図的に映画とドラマで少し切り替えたところもありますか?

それはないですね。ただ、映画の方が後半、莉桜さんと対峙(たいじ)するシーンもあって、そこで少しクズケンの根底にある考え方というか、人間性が見えてくるところもあるのかなと、演じた本人としては思いました。

――クズケンって、実は愛されキャラですよね。

(笑)。割といいやつですよね。クズケンと山下リオちゃんがやった(宮田真樹)役が、唯一まともな人なんじゃないですかね。

――クズケンはずっと実希(夏帆)のことを思い続けていますし、仕事に対してもすごく真摯に取り組んでいて。

あまり人にそういうところは見せないですけどね。人としてはちゃんとしているんですよ。映画版では神保とのシーンに伊藤というハリケーンがホテルにやってきて、強風と雨で根こそぎ倒していくんですけど。それを経て、伊藤と絡むことで影響を受けて、半歩なのか、1歩なのか、10歩なのかは分からないですけど、みんな成長していく。

そういう意味で神保とクズケンは、この映画が終わった後にどうなるんだろう、って気になります。

――気になりますよね。みんなの“その後”がどうなるのか。

伊藤以外、みんな幸せならいいですね(笑)。

――(笑)。その伊藤はいかがですか? 同じ男性から見て。

僕サッカーが好きなんですけど、映画を見た後、サッカーの試合で絶対に勝ち目がないからってラフプレーばかりして、引き分けに持ち込もうとするやつを思い出しました(笑)。

コンプレックスが強くて、ひねくれていて、実力では負けるから真っ向勝負しない。でも、勝負しない限り勝ちもできないわけですよ。

だからこの映画ではいい具合に周りが影響受けていますけど、普段ただ傷つけているだけのこともあるはずで。そういう意味では、伊藤という人物はずっと周りを巻き込んでいくだけの人間なんだろうなと思いました。

人と関わるには、ある種スポーツマンシップが必要だと思うんですけど。クズケンと莉桜のシーンとかではそういう意味でスポーツマンシップを感じましたし。(伊藤は)それがないやつですね。

――クズケンとは友達になれそうな感じがしますか?

そうですね、考え方も僕と近いところがあるので。もちろん台本があって、芝居をしているんですけど、クズケンの役を捉える上で、彼の長所も短所も「うーん」って首をひねるところは一切なかったですね。

――自然と役に入れたってことですか?

そうですね。やっぱり、僕自身もクズケンのように優しいので、皆さんご存じの通り(笑)。

――そうですね。それは知っています(笑)。

ちょっと!(笑) そこはツッコむところです。ツッコむか、困るかにしてください(笑)。

――それはすみませんでした(笑)。では、タイトルの“A to E”にちなみまして中村さんのA(愛らしい部分)とE(イタい部分)を、それぞれ教えていただきたいのですが

大喜利じゃないですか(笑)。愛らしいところは…“愛らしい生き物”を愛でていますよ。

――へ〜! 例えば何でしょうか?

僕、ハムスターを飼っているんです。夜行性なので、毎晩「おお! 起きてきたんか」って、一緒に遊んで散歩させて、掃除してご飯を与えて…。そういうことをやっている僕はきっと愛くるしいと思います。

そして、それをアピールするところがきっとその“E”の部分なんでしょうね。

――イタいところにも重なっちゃうわけですね。

そうですね。まあ、表裏一体ってことですね。

――それを突き詰めると究極の“痛男”伊藤のような人が生まれるんでしょうね。身近にああいった人はいますか?

どうでしょうね。僕は“清い野心”を持っている人と友達になりたいんですよ。濃密な野心も人としてそれはそれで美しいんですけど。でも、一緒に飲んでいて楽しいのは野心というか、ちゃんと夢や目標があって、そこに進んでいく過程で自分の弱い部分に逃げずに立ち向かって、腹をくくって戦っているやつがいいんですよね。

だから、伊藤のようなモンスター級の人と出会うのは稀でしょうけど、中にはいるとは思うんです。誰だって楽して生きられないですし、どうせ短い人生なんだから、やりたいことのために歯を食いしばった方が充実するんじゃないのかなって、僕は思います。

――伊藤のような考え方、メンタルな人は役者さんにもいるのでしょうか?

いると思いますよ。理屈ばっかで人を批評して、でもそんなやつは売れないんです。不安で、自分が安心するために他人を下げようとする役者は少なからずおります。

そういう感覚は分からなくないですけど、そんなことをやってもしょうがないですからね。そんなやつを魅力的に思ってくれる人も少ないし、魅力的に思われないってことは、仕事も増えないってことですからね。って、こんな深い話をするはずじゃなかったんだけどなあ(笑)。

――ギャップがすごいですね(笑)。

たまには真面目な話をしないといけないですからね(笑)。

――では、中村さんにも“清い野心”があると?

あっても言わないですよ。そういうのは人に晒すものじゃないんで(笑)。

――また格好いいことを…。そういうところも、クズケンっぽい気がします(笑)。表向きは言わず、陰で努力するという。

そうですね。バンバン言う方が芸能人としては得なんだろうなと思いますけど、俳優というか表現者としては言わずに自分で抱えていた方が強いと思うんですよ。

まあ、たまには薄っぺらいことも言いますけどね(笑)。(ザテレビジョン)