2018年パラリンピックイヤーを迎え、各競技の日本代表がいよいよ本番モードに突入する。

 冬季パラリンピックの花形競技のひとつ、パラアイスホッケでは国際大会「2018 ジャパンパラアイスホッケーチャンピオンシップ」が7日、長野市のビッグハットで開幕する。平昌パラリンピックに出場する8カ国のうち、日本、韓国、ノルウェー、チェコの4カ国が集結する今大会。日本代表にとってはパラリンピック予選グループ同組の韓国、チェコと対戦する絶好の機会となり、平昌パラリンピックの”前哨戦”として注目される。


平昌パラリンピックに向けての12月の強化合宿では笑顔も

 また、日本代表はこの大会の1週間後にイタリア遠征を実施し、そこでやはり予選グループ同組のアメリカとも試合を行なう予定になっている。キャプテンの須藤悟(北海道ベアーズ)は、「パラの予選で戦うすべてのチームと1月中に戦えるのは、本当にラッキー。もちろん勝敗も大事だけれど、僕らの目標はパラリンピックなので、ここでは失敗しても構わないと思っている。平昌に向けて、とにかくたくさんチャレンジしたい」と意気込みを語る。

 日本は現在世界ランキング7位。2010年バンクーバーパラリンピックでは、銀メダルを獲得した実績がある。前回のソチ大会は出場を逃し、その悔しさをバネに這い上がってきた。平昌大会では、表彰台を目標に掲げる。メダルマッチに挑戦するには、まず予選グループを2位以上で通過する必要がある。日本のライバルとなるアメリカは世界ランキング2位、続いて開催国の韓国が同3位、チェコが同6位となっている。

 アメリカと韓国は2017年4月の世界選手権で上位に入り、早々にパラリンピックの出場権を獲得。チェコと日本は2017年10月の最終予選で勝ち、平昌行きの切符を手にした。

 バンクーバー、ソチと、2大会連続パラリンピックで金メダルを獲得しているアメリカは、平昌でも優勝候補だ。ホッケーを仕事とするプロアスリートが多く、またパラアイスホッケーのジュニアチームの活動も盛んだ。伸び盛りの10代の選手も代表入りしている。そんな厳しい環境で育った彼らの技術、戦術、スピード、メンタルの強さなどは世界屈指で、世界ランキング1位のカナダと並んで、そのチーム力はもはや”別次元”のレベルと認めざるを得ない。日本代表の中北浩仁監督も「正直なところ、今のアメリカに勝つのは難しい」と言葉を絞り出す。

 そうなると、日本がパラリンピックで決勝トーナメントに進出するには、他の2チーム、つまり格上の韓国とチェコに勝利することが必須となるが、「十分、勝機があると考えている」と中北監督は力強くコメントする。

 まずは韓国。パワーがあり、どこからでもシュートを打ってくる力のあるチームだ。その中心となっているのが、エースのFWチョン・スンファン。ぐんぐん加速するスピードとボディバランスのよさを活かした攻撃を得意とし、軸となってゲームメイクする。ただ、強みと弱みは表裏一体とも言え、須藤は「彼が動かなければチームも動かない。そういう意味では、彼を自由にさせなければチャンスがある」と分析する。

 また、司令塔の高橋和廣(東京アイスバーンズ)も「(昨年8月の)韓国遠征の時も点を入れられたのは遠目からだったので、日本のGKが凡ミスをしなければ攻略できる」と自信をのぞかせる。

 一方、チェコのキーマンとなるのは、GKのミハエル・バペンカだ。チェコ代表の守護神として、長年ゴールを守る。競技中は座った状態とはいえ、身長190cmを超える彼がポジションにつけば、正対してシュートを狙ってもなかなか決めることができない。対日本戦に限って言えば、バペンカは2010年バンクーバー大会以降、無失点記録を更新し続けている。

「どれだけゴール前で数的優位な状況を作り、横に振れるかがカギになる」(高橋)わけだが、チェコのプラスアルファの強みはチームメイトが持つ、このバペンカへの絶対的な信頼感だ。ゴール前の守備を固め、遠くからオープンに打たせさえすれば、あとは彼が処理してくれる、というプレーヤーの安心感が見ていても感じられる。そしてそれを実現させているのが、ディフェンス陣の攻防の読みの速さや詰めの巧さだ。このあたりは、さすが”アイスホッケーの国”といったところだ。

 日本は最終予選でチェコに0-1で敗れている。2016年12月の世界選手権Bプール決勝で0-6だったことを考えれば、この1年で強化してきたディフェンスが機能し、失点も最小限にとどめており、差を詰めつつあるといえる。だが、先に述べたようなバペンカを脅(おびや)かすようなプレーは繰り出せず、緩急をつけた攻めには課題が残った。1月の大会ではチェコ攻略のカギをしっかりと掴み、パラリンピックに向けて精度を高めていきたいところだ。

 最終予選から帰国後は、このパラリンピックの予選グループで戦う相手を想定した強化練習に取り組んでいる日本チーム。昨年5月から、元アイスホッケー日本代表GKで、かつて女子日本代表監督を務めた信田憲司氏がコーチとしてサポートし、中北監督が築いてきた守りのシステムをさらに磨いた。それが最終予選の結果につながり、ソチ大会出場を逃した喪失感から脱却し、自信を取り戻すきっかけになった。

 日本のエース、熊谷昌治(長野サンダーバーズ)は、「ゴールを狙うにも、さまざまな工夫を凝らさないと上のレベルでは通用しないとわかっている。監督や信田コーチから教わってきた守りのイメージを1月の大会と遠征で、海外チームを相手にもう一度確認したい」と冷静に前を見つめる。

 熊谷をはじめ、日本チームの半数がパラリンピック初出場となる。逆に残りの選手のうち、多い選手は4大会を経験している。今はパラリンピックに向けてメディアからも注目が集まる時期だが、全体的には平常心で過ごせているようだ。

 須藤は今のチームについて、こう話す。

「勝てない時期が7年続いたけれど、後がない一番大事な最終予選で先制点を入れて勝てたことで自信がついた。でも、気持ちはもう次に向けて切り替わっているし、パラの経験者はこれから何をやればよいのかわかっている。その余裕があるから、若手も落ち着いているのかなと思う。ただ年をとってる(チームの平均年齢41歳)ってだけじゃないんです」

 高橋もまた、「雰囲気はいい。(銀メダルを獲った)バンクーバーの前みたいな感じかな」と笑みをこぼす。

 今回の大会と遠征は、勝敗はもちろん、そのゲームの内容が平昌パラリンピックでメダルを獲得するための足掛かりとなる。ここですべてを吸収し、力に変えていくことができるか。日本の”双剣の戦士たち”の奮起に期待したい。

 なお、今大会最終日の決勝戦終了後の会場で、平昌パラリンピック日本代表チームメンバーが発表される。

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