日商会頭・三村氏「アベノミクスは政策の軸足を平時モードへと転換すべきだ」

写真拡大

 政府は2018年度の実質成長率を1・8%と見込み、いざなぎ景気を超えた長期の景気拡大は18年度も継続する見通しだ。だが家計は好況の実感が乏しい。伸び悩む賃上げ率と、社会保障制度をめぐる将来不安が個人消費の回復力を鈍らせている。政権の看板政策である人づくり・生産性革命に踏み込みつつ、いかに財政健全化に道筋をつけるのか、課題が山積する。日本商工会議所会頭(新日鉄住金相談役名誉会長)の三村明夫氏にあるべき経済財政運営の姿などを聞いた。

 ―長期の景気拡大を背景に「日本は構造改革を断行する時間的猶予を手にしている」が持論です。18年の課題は。
 「社会保障費の重点化・効率化は長期政権でこそ切り込める課題。高齢者ほど手厚く世代間のバランスを欠く社会保障の資源配分を早急に見直すべきだ」

 「6年目を迎えたアベノミクスは政策の軸足を切り替えるべきだ。需給ギャップはプラスに転じ、就業者数も増加したことで潜在成長率は高まる方向にある。日本が20年にわたり苦しんできたデフレという異常事態ではなく平時モードへと政策を転換すべきである。具体的には『現状の満足』よりも『将来の希望』に軸足を置き、将来不安を取り除き経済成長を遂げるため、サプライサイドの政策運営に力を注ぐべきだ」

 ―日銀は2%の物価上昇目標が達成されるまで現在の金融緩和策を維持する方針です。
 「難しい判断だが、2%目標の達成をデフレ脱却の条件として掲げ続ける必要があるのか。むしろ実際にはデフレ状況ではないにもかかわらず、2%にこだわることでかえってデフレマインドにとらわれてしまう心理的な影響を懸念する」

 ―政府は18年央にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太方針)で新たな財政健全化計画を打ち出します。
 「現実的な想定の下での財政再建の道筋を明確に示さなければならない。前提とする成長率は、経済界から見ても十分実現可能性があると思える水準でなければならず、それをもとに民間投資が誘発されるものであるべきだ」

 「かつての経済計画は最低限の成長目標の意味合いが強かった。ところが今は違う。現在の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標が前提とする3%の名目成長率は誰もが不可能だと思っている。にもかかわらず最低賃金も18年春闘における賃上げ率も3%が『統一相場』だ。企業負担ばかりが増えていく」

 ―18年は東京商工会議所の創立から140年の節目の年に当たります。創立者である渋沢栄一の理念からいま、何が学べるでしょうか。
 「企業は公益と私益の両立を実現するべきだと説いた思想にあらためて触れ、経営者自身が自らの経営にどう生かすのかを考えるきっかけにしてほしい」