あの人のビジネスコートが残念に見えてしまう理由とは?(写真:tkc-taka / PIXTA)

真冬の中で通勤するビジネスパーソンに欠かせないアイテムがコートです。そんなコートからジャケットがはみ出たビジネスパーソンを見掛けることはありませんか?

スーツに私服のコートを羽織ったとき、この現象は起こりえます。節約志向の若手が、週末・ビジネスコートの兼用を画策した場合も同様です。どちらもそのコートの役割を誤解し、「デザイン・素材・価格」で選んでしまった結果だと私は見ています。着用時間が短いからこそ、ビジネスマンのコートに対する意識はスーツほど高くないのかもしれません。

私は、プロの目線でユニクロもカッコよく!をモットーに、のべ4000人を超えるビジネスマンの買い物に同行してきました。そんな私からは、「コート選びの最適解」を見落としたビジネスマンがいまだ多いように見えます。

ビジネスコートに求められる2つの条件

チェスターコート、ステンカラーコート、トレンチコート。ビジネスコートの代表格ともいえるこれらの呼び名はデザインを表した名称です。だからこそ、チェスターコートであっても、ジャケットを羽織れないほど細身のタイプが存在します。つまり、デザイン的にはビジネスコートに見えても、ジャケットを合わせない週末専用コートが混在しています。

このような間違いを避けるため、デザイン・素材以前に、そのコートの役割を見極める必要があります。役割から考えたとき、コートは2種類に分けられます。ジャケットの上に羽織ることを前提とした「オーバーコート」、ジャケットとコートの役割を同時に果たす「アウターコート」の2つです。

週末専用のアウターコートに比べ、ビジネスジャケットに羽織るオーバーコートは、以下2つの条件を満たしています。ひとつは、ジャケットが完全に隠れるコート丈であること。もうひとつは、コートの中でジャケットの袖が詰まらないことです。

どんなにスタイリッシュな細身のデザインであっても、合わせたジャケットがシワになってしまうアウターコートでは、ビジネスファッションとして成立しません。だからこそ、オーバーコートの役割を果たすタイプを選びます。では一体、どんなデザインが選択肢に挙がるのでしょうか?

デザインは襟型と質感の掛け算

オーバーコートのデザインは、襟型と質感で9割決まります。たとえば、ここ数年で定番化したチェスターコート。ジャケットと同じく開襟を特徴としたこの型は、ウールやカシミヤなど天然素材でフェルトの質感が基本形です。また、軍服の上に羽織ったことをルーツとするトレンチコートは、レインコート同様、生地を薄くする代わりに熱を逃がさない技術繊維を活用したテック素材が基本形です。

一方、天然素材・テック素材どちらも基本形とするステンカラーコート。後ろ襟が高く、前襟は低く折り返す形を特徴とするこのデザインは、どちらの素材も見掛ける機会が多く、ここから派生した襟型デザインも多々あります。立ち襟のスタンドカラーコートやスナップボタンで襟を折り返したナポレオンカラー、これらはステンカラーコートの派生形だと私は見ています。

このように、ビジネスコートの定番は数多くありますが、いずれのデザインを選んでも構いません。似合うコートを選ぶうえで最も重要なこと、それはデザインより着丈だからです。

・身長別ビジネスコートの最適丈

コートの着丈は膝を起点に分類されます。ロングコートは膝より長い丈感、ショートコートは膝より短い丈感です。そして、身長に合わせてコートの最適丈が変わります。身長170センチ未満の方は、ロングよりショートコートが似合います。身長に対して長すぎるコート丈では、足が隠れる面積が増えアンバランスに見えるからです。

特に、身長165センチ以下の方には「フィンガーチップ」と呼ばれるショート丈をお薦めしています。中指の指先に位置するフィンガーチップ丈は、ショートコートの中でも着丈が短いオーバーコートです。一方、身長175センチ以上の方は、膝丈程度からロング丈が似合います。

着丈のみならず、袖丈も見逃せません。コートは防寒目的だからこそ、ジャケット袖が完全に隠れる袖丈が正解です。ただし、指の付け根まで隠れてしまう場合、子どもがいたずらして大人のコートを着ているようなコミカルな印象になりがち。だからこそ、袖詰めという選択肢が浮上します。

THE SUIT COMPANY(青山商事)などツープライススーツ量販店であっても、数千円の工賃でコートの袖詰めが可能です。形状次第で詰め幅は限定されますが3センチ程度は詰められます。また、別途リフォームショップに持ち込むことで、肩山から3センチ以上詰めることも可能です。

最適丈のコートが活きるアンボタンマナー

最適丈のビジネスコートを手に入れたとしても、その着こなしには注意が必要です。アンボタンマナーをご存知でしょうか? ジャケットの下ボタンは留めないという着こなしマナーのひとつです。一番下のジャケットボタンは飾りボタンとしてつくられているため、一切留めないという考え方に基づいています。では、ジャケット同様の開襟チェスターコートの場合、アンボタンマナーは当てはまるのでしょうか?

本来のチェスターコートは、比翼式と呼ばれボタンが隠れるデザインが主流です。だからこそ、留めても外しても見え方は変わりません。一方、ボタンが見えるチェスターコートであったとしても、防寒という目的を考えるならば、下のボタンを留めてよいという考え方もあるはず。

それでも、チェスターコートも一番下のボタンを開けるというスタンスを私は貫いています。ジャケットのボタンを開けた着こなしに目が慣れているからこそ、そのほうが自然に見えるからです。ただし、留めるボタンも限られ、胸元も開いているため、チェスターコートにマフラーは欠かせません。

・ビジネス力を判断されている?コートの扱い

着ているコートを脱ぐタイミングも重要です。建物に入るとき、入り口でコートを脱いでいますか? 営業経験がある方は実践されていますが、建物に入る前にコートを脱いで脇に抱えることがマナーです。外套であるコートの汚れを建物内に落とさないため、内側が表になるよう折り畳みます。

選び方・着こなしのみならず、コートの扱いひとつでパーソナリティやビジネスマンとしての力量を判断されるかもしれません。