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もくじ

ーTVR280Sの基礎知識
ー考えるより走れ! 「値ごろなTVR」
ーAUTOCAR記者の今の評価は?
ー「買い!」と思ったアナタに…… 最後のアドバイス

TVR280Sの基礎知識

・製造:1986年〜1988年
・最高出力:162ps
・現在価格:5000〜1万ポンド(75万〜150万円)

TVRのオーナーになりたい? そんな読者には、1990年代以降のモデルをお勧めしたい。飛びかかるようなプロフィール、曲線的なスタイル、大きくてうるさいV8/直6。グリフィスに始まり、2006年に会社が経営破綻するまで続くあの時代だ。

対照的に、1980年代のTVRに興味を持つ人は少ない。ウェッジシェイプをまとったタスミンのカミソリのようなラインは、TVR信者の間でも賛否が分かれている。しかし、さらにクラシックなSシリーズは広く人気があり、“今” が旬である。

最初期のモデルは、S1としても知られる280S。今回の撮影車両は、大変親切なオーナーからお借りしたものだ。1970年代の3000Sを大幅に改良し、1986年に発売。TVR初のコンバーチブルで、タスミン、280iと同じフォード製の2.8ℓV6のケルン・エンジンと5速ギアボックスを搭載している。
 

考えるより走れ! 「値ごろなTVR」

走り出して一番驚かされるのは、同じエンジンのフォード・カプリやシエラと比べて280Sのサウンドがまったく違うことだ。フォードはしゃがれた音で、時に甲高い声を上げるのに対し、280SはV6とV8の間を取ったような大音量のバリトンなのだ。

数kmも走ると、設計の妥協点の数々が気にかかり出す。S1(とそれに続くS2)の短いドアは、乗り降りの際に曲芸を必要とする。ドッグレッグ・パターンを採用したミッションは、シフトレバーが前腕の下あたりにある。ストロークが長いので、1速から2速へ変速するときは、ギアボックスからシフターを引っこ抜くような感じになる。

最初は、すらりとした外観のうるさいクルマという以外に、あまり印象が残らない。V6サウンドを楽しみながらコーナーを流すくらいで、それ以上のことをしたくならないのだ。シフト操作は渋く、そして固い(試乗車はクイックシフト・キットが付いていたので、少しはマシ)。ステアリングとペダルについても同じだ。
 

AUTOCAR記者の今の評価は?

コーナーに少しでもオーバースピードで飛び込むと、鼻先がインを向かないことは覚えておきたい。ステアリングを通してそれがしっかりと伝わってくる。そして、リアがグリップを失わないよう注意を払いながら、慎重にスロットルを開くことになる。ただ、よほど粗く操作しない限りテールスライドには持ち込めないが。

視点を変えれば、簡単には魅力を失わないクルマとも言える。もちろん、そのためには正確にステアリングを操作し、適切にブレーキを踏み、しっかりとシフトをゲートに押し込む努力が必要だ。もし我がものにすることができれば、驚くほどのグリップ、フィードバック、そして神々しいV6の鼓動で答えてくれる。これは修行であるが、とても楽しい修行なのだ。

TVRらしさ。それを感じることはAUTOCARの読者ならできるだろう。盛大なノイズ、やさぐれた雰囲気、クラシックなスタイリング。英国の古典的スポーツカーに共通する感覚だ。なにしろ後期モデルよりは、スピードも、ハンドリングも、価格も取っ付きやすい。そんなTVRが、今なら手頃な値段で手に入る。このキメラ、飼いならす自信はあるかい?
 

「買い!」と思ったアナタに…… 最後のアドバイス

購入時の注意点

グラスファイバー製ボディは腐食しないが、時とともに色褪せて亀裂が入る。上手く修理できないので慎重にチェックしよう。ドア下がりにも要注意。最大の敵は錆。ホイール・アーチ裏、リアのトレーリングアームとジャッキアップ・ポイントは要確認。シャシーのメンテナンスを受けていない個体なら、すぐに対応すべきだ。

雨漏りはルーフとバルクヘッド周辺が多い。車内やカーペットが湿っていないか、ルーフがカビ臭くないか、チェックしよう。

エンジンは頑丈だが、燃料タンクにサビがあると問題につながる。ラジエターの液漏れも多い。エグゾーストは低い位置にあり、交換は安くない。

加えて一言 読者の皆さまに

人間工学は気にしないこと。見た目と内装の仕上げを楽しんでほしい。最後に当時のAUTOCARの評価を。

「仕事の憂さを吹き飛ばし、生のドライビングの愉悦を味わえるのが280Sだ。一度運転すれば、これより楽しいクルマなんてないと感じるだろう。ドイツ車? 日本車? これには敵わない」