今や社会人の2人に1人が転職している時代。総務省の労働力調査でも2016年の転職者数は306万人。7年ぶりに300万人台の大台に上がったとニュースになり、これからも転職人口は増加予測。

そこで、本連載では、いい転職をした女性と、悪い転職をした女性にお話を伺い、その差は何かを語っていただきました。

池上沙織さん(仮名・32歳・東京都出身)

転職回数……7回
転職した年齢……22歳からほぼ1~2年おき
年収の変化……180万円→現在400万円
学歴……中堅大学経済学部卒業

通勤電車に飛び込みたくなるくらい辛い新人時代

最初に入ったのは旅行代理店でした。小さい会社だったから、研修もそこそこにすぐに窓口業務に就くことに。私は失敗が怖いし、真面目な性格です。だから、仕事が始まる前に勉強しようと思い、まず旅行業務取扱管理者の勉強を開始しました。

さらに、当時人気だったSNSの「mixi」で旅行代理店の窓口の実務経験者の人と連絡をとり、実際に会って話を聞きました。会社支給のマニュアルもほぼ丸暗記して、万全の態勢で挑みました。初出勤前日は、緊張でがちがちになって眠れなかったことを覚えています。

しかし、あれだけ努力したのに、初日の仕事は惨憺たるもの。まず、お客様から全く信頼されない。ある初老の男性から、「あんた、何言っているかわからないから、話したくない」など言われて、心が折れそうになりました。

そんなときは、職場の人に相談すればいいのですが、私の教育担当社員が32歳の男性で、コイツがホントに怖かった。私が失敗するとチッと舌打ちしたり、「これ、教えたよね」と言うから、わからないことがあっても自力で解決するしかない。他の社員も手一杯。自分で調べるうちに時間ばかりが経過し、お客さんに「もう二度と来ないよ」とか「あんたの仕事が遅いから駐車場代がかかった。お前が払え」などと言われたことを覚えています。現場に出てたった1週間で通勤電車に飛び込みたくなるくらい、追い込まれたんですよね。

毎日、死にたいと思っていた新入社員時代

家に帰って来ては「死にたい」と繰り返す私に両親は「旅行の仕事は一生の仕事ではないかもしれない。だから辞めてしまえば?」と言ってくれて、入社半年で退職。あのまま勤務していたら、こうして生きていなかったかもしれません。

ラブレターのような履歴書を書き、レコード輸入販売会社に採用

そもそも、旅行代理店に決めたのは、人を喜ばせる仕事がしたかったんです。就活時代、音楽会社、イベント会社、食品関係と受けて内定が出たのは旅行代理店だけでした。

驚いたのは、初任給の手取りが月13万円だったこと。土日が勤務で休みは平日だし、勤務時間も9時~21時と長い。友達にも会えないし、コンサートにも映画にも行けなかった。自分を犠牲にして他人を喜ばせてどうするんだと思い、次に就職をするなら、本当に好きなことを仕事にする会社がいいと思いました。

そこで、入りたい会社を10社ピックアップして、毎日ホームページを見ていたら、あるレコード輸入販売会社が募集を開始したんです。夜中にコンビニに履歴書を買いに走り、ラブレターを書くような気持で、応募動機をまとめました。

24時間受け付けている本局に行って速達で書類を出したら、すぐに書類審査通過の連絡が来ました。面接もトントン拍子に進み、役員面接まで行き、採用されました。応募を見つけたら、履歴書を即送る、というのは書類選考に落とされないためのテクニックだと思います。

雑用に追われて、逃げるように退職

ここでの勤務は2年足らずだったかな……私は真面目だから、本国から来た英語でのメールの翻訳や、議事録作成、エクセルでの在庫管理などを頑張るうちに、いつかそれがメインの業務になってしまいました。本当は、販売促進、営業、イベント企画などがやりたかったのに、そういう仕事が全然回ってこない。さらに、育休に入っていた先輩社員の女性が復帰したのはいいのですが、時短や子どもが熱を出したとかで、すぐに帰ってしまう。

だから、私が彼女の仕事まで補佐することになり、朝9時に出社し、22時くらいまでずっと会社でPCと向き合っている毎日が続きました。彼女のぶんの仕事もしているのに、何のフォローもなく、サービス残業をさせられる。ものすごい無力感に襲われて転職を決意しました。このときの手取りの月給は18万円で、夏と冬に1.5か月分ずつボーナスが出ていました。

人に喜んでもらうために、レストラン運営会社を目指すも……

転職活動は周囲に内緒で、勤務時間外に行っていました。ろくに貯金をしていなかったので、次を決めてから退職しないと不安だからです。

土日に転職フェアにも行きましたが、ああいうリアルなイベントは手に職や人脈がある人が「さらにいい条件」を目指すためにあるような気がしますね。私のような一般職的な職種には転職サイトの登録や、ネットでの情報収集が手っ取り早いと感じます。

正社員を目指していたのですが、このときはうまくいきませんでした。あるレストラン運営会社は最終面接までいったのですが、面接官から「ウチは長く勤めてくれる人が欲しいんですが、ずっと働いてくれますか?」と聞かれて、「はい」と即答できなかったから、たぶん落とされた。やっぱり、自分にウソはつけないので。

転職活動2か月で、15社受けて条件が折り合わず、転職サイトで紹介されたIT関連会社に契約社員として転職しました。このときから30歳までの5年間、5社の会社を契約社員として転々とします。書店員、貿易会社で事務、住宅販売会社、企業の海外進出をサポートする会社などです。

どこも1年間もたなかったのは、私が燃え尽きてしまうんですよね。私は真面目だから、つい一生懸命仕事をしてしまう。するとあれこれといろんな雑用を頼まれて、いつの間にかパンクしていることの繰り返し。仕事が忙しくなるとミスをするのですが、ミスをしていることを報告できず、自分でなんとかしようとするうちに、周囲の目線が冷たくなり……というパターンが多いですね。

基本的にワーママを応援している。しかし、ワーママの仕事が降りかかってきて残業になり、それが「当然」のように扱われると疲れが倍増するのだとか。

IT関連会社の契約社員を経験し「私は産休・時短さんの補填要員なんだな……」と痛感〜その2〜に続きます