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もくじ

ー 成功を約束されていたわけではない
ー MX-5 産声をあげるまで
ー すべては「走る」ために
ー 1.6ℓと1.8ℓ それぞれの違い
ー NB、NC、そしてNDへ
ー NAのMX-5 中古車市場は?
ー 中古MX-5 注意すべき点

成功を約束されていたわけではない

われわれが愛するクラシック・モデルの多くが常に敬愛されていた訳ではない。実際、多くが発売当初には酷評され、その後、石炭の塊が徐々にダイアモンドへと変わっていくように長い年月を経てようやく冷笑が称賛へと変わっていったのだ。

限られた少数のクルマたちだけが、その完成されたデザインによって現役のうちに伝説的な存在になることを許される。オリジナル・ミニでさえ、2001年時点ではジャーナリストや評論家からの称賛を待たねばならなかった。そして、マツダMX-5もいま同じ道筋を辿っている。

誰もが愛するMX-5だが成功を約束されたモデルだった訳ではない。十分に検討されたとは言え、マツダにとってこのクルマの発売は一種の賭けだった。

コンバーチブルが隆盛を誇った時代、成功したロードスター・モデルのほとんどが英国製だった。1950年代にはヒーレー、ジャガーXKシリーズが、1960年代と70年代にはスピットファイア、MGBやエランが市場を席捲していた。

しかし、80年代初頭になると英国の自動車産業は混乱に陥り、MGBの最後を弔う鐘の音がまるでお手頃なコンバーチブル・モデルの終焉を告げるかのようであった。そして栄光の英国製ロードスターたちが、過去の重荷を背負わされたブリティッシュ・レイランドと共に表舞台から引き摺り下ろされようとしていた頃、8000km以上離れた場所でロードスター・モデル復活の狼煙が上がっていたのだ。

MX-5 産声をあげるまで

モーター・ジャーナリストの(そして後にマツダで働いた)ボブ・ホールが、1979年に初めて安価で誰もが購入できるライトウエイト・スポーツカーのアイデアを披露したとき、彼はまさかマツダの北米にある開発拠点トップの福田成徳も同じようなアイデアを持っているとは思いもしなかった。

彼らが1983年にペブルビーチで初めて会い、お互いが同じようなアイデアを温めていたことを知った時、このライトウエイト・スポーツカーのタネが撒かれたのだ。そして、程なくしてMX-5開発計画の出発点となる企画書が日本へと送られた。

それは多くの英国製クラシック・ロードスターへのアンチテーゼでもあった。信頼性と均一で正確な組立品質を誇ることで、MX-5はデザインだけでなく、その成功でも彼ら先行モデルに続こうとしたのだ。

マツダは開発調査の過程で、ホールが経費で購入したロータス・エランを日本へと送っていた。エランはマツダの三次にあるテストコースに持ちこまれ、そこでこのクルマが何故史上最も優れたハンドリングを持つ1台として評価されているのかを徹底的に検証する作業が行われた。

多くのひとは遠目からでもエランとMX-5の共通点に気付くはずだ。MX-5のリア・ランプとポップアップ式ヘッドライトはエランを彷彿とさせ、スッキリとしたボディラインと全体のプロポーションは言うまでもない。当初採用予定だったオリジナルの8本スポーク・ホイールも「ミニライト」そっくりだった。

似ているのは外見だけに留まらない。

すべては「走る」ために

似ているのは外見だけに留まらない。

エランの素晴らしい動力性能はそのツイン・オーバーヘッド・カム・エンジンによるところも大きく、軽量なこのロードスターを0-97km/h加速7.6秒、最高速度190km/hで走らせた。

当時の責任者はMX-5の開発初期段階で既にこのエランと同じ形式のエンジンを採用することを決めていた。ファミリアGTに搭載されていた1.6ℓエンジンをベースにすることにしたのだが、しかし、このエンジンはセダン向けに中低速トルク型となっていたため、すぐにこのままでは十分ではないということになった。

新エンジンも同じボアとストロークで排気量は1597ccのままだったが、タイミング、クランクシャフトとフライホイールには、より高回転を許容するための改良が施された。

エンジンは縦置きされ、カムカバーもアルファやフィアット、そしてもちろんエランに搭載されていたようなツインカム・エンジンとそっくりな(もちろん偶然ではない)外観を与えられることになった。

この活発な1.6ℓエンジンは、規制変更に伴う1994年モデルのわずかな重量増さえ無ければ、間違いなく5年以上に渡って最高スペックのエンジンとして存在することになっただろうが、車重が増えたMX-5のパフォーマンスを維持するためにエンジン排気量の拡大が選択された。今回もマツダはファミリアGTに目を付け、130psを発するそのBP型エンジンをベースに新エンジンを開発することにしたのだ。

エンジンの出力アップに加え、ボディもフロントとリアに「パフォーマンス・ロッド」を追加してねじり剛性を強化する一方、ボディの曲げを抑制するため、上部シートベルト・アンカーを繋ぐブレースバーが設置された。

ブレーキ・ディスク径もフロント、リアともに20mm拡大され、初期モデルのビスカス式に代えてトルセン式LSDが採用された。ホイールも5.5Jに代えて、より幅広だが軽量な6Jを採用していた。この結果、重量増にもかかわらず、MX-5はB級路において依然として夢中になって影を追いかける狩猟犬のような情熱を保っていた。

ならば、このモデルを選ぶべきだろうか?

1.6ℓと1.8ℓ それぞれの違い

重量を増した1.8iが体は大きいが臆病な大型犬だとしたら、1.6ℓモデルは小さくても勇敢な小型犬というところだろう。初期の1.6ℓモデルに積まれたエンジンの方が出力は16ps少ないが、この出力差もピーキーで回すほどに元気になるキャラクターが十分埋め合わせてくれる。

重くなった1.8ℓもこのモデル単体で見れば十分活気のあるクルマだが、比べてみれば、高性能なエアーフィルターとノーマルに代えて取り付けられた抜けの良いステンレス製マフラーのお陰で、アクセルに即座に反応するリア・タイヤを持った1.6ℓモデルの方がよりダイレクトな興奮を味わわせてくれる。

1.8ℓが劣っているという訳ではなく、このエンジンも素晴らしいできではあるのだが、やはり1.6ℓに比べればそのフィールは物足りない。同じルートを走ってみれば、1.8iの方が大人しく活気が足りないように感じられるのだ。

このエンジンで活発に走るには慎重なアクセル操作が求められる。エンジンの回転上昇は1.6ℓよりも遅いが、一旦タコメーターの針が頂点を越えると、1.6ℓと同じようにこの4気筒も素晴らしいサウンドを響かせる。そして間違いなく1.8ℓエンジンの方が制限速度に到達するのは速い。

しかし、MX-5の真の実力はエンジンやスタートダッシュの鋭さにではなく、素晴らしいハンドリングにあり、その魅力は今日ここに連れて来た2台の初代モデルに共通するものだ。エンジン排気量にかかわらず、素晴らしいバランスを保つために細心の注意が払われたMX-5は、ハンガーフォードの峠道で実力を存分に発揮してくれる。

例え激しく攻め立ててもボディ・ロールは最小限であり、ダブルウィッシュボーン式サスペンションに支えられた4輪が常に路面をつかんで離さない。

さらに、今日連れ出した1991年発売のユーノス初の限定モデルであるJ-リミテッドには、1.8ℓエンジンを積んだよりパワフルなライバルに対して、豊富に用意されたオプションというアドバンテージがある。

もっとも明確な違いはパワーステアリングだろう。

NB、NC、そしてNDへ

パワーアシストによってステアリングのフィールが希薄になり、路面状況を上手く感じとれなくなるクルマもあるが、MX-5のパワステは滑らかな感触で運転に熱中できるタイプのものだ。

標準仕様の1.8iのターン・インも正確かつ機敏なものだが、重量差は20kgに留まるにもかかわらず、1.6ℓモデルの方がよりシャープに感じられる。

1998年登場の2代目モデルも、初代からバランスに優れたシャシーや完ぺきな重量配分などの美点を引き継いだ結果、今や伝説となった初代のドライビング性能を受け継ぐことに成功していた。

一方でポップアップ式ヘッドライトを含め、残念ながら初代の魅力的なスタイリングの多くは失われることとなったが、MX-5純粋主義者でもない限り、この2代目も多くのひとびとにとっては素晴らしいモデルであり、新型への興味が高まるにつれ販売台数も順調に伸びていった。

2005年、NBはNCへとフル・モデルチェンジを果たしたが、2006年に導入された電動式ハードトップのみならず、増えた車重と快適性によって当初掲げていた理想からは更に大きく道を外すことになった。

3代目となるNCにはNBから受け継がれたパーツはなく、新たに2ℓと1.8ℓの MZR14型エンジンが導入されるとともに、サスペンションは改良型ウィッシュボーンがフロントに、リアにはマルチリンクが採用された。

2008年と2013年に行われた2度のマイナーチェンジと併せ、数多くの特別仕様が登場したが、新型NDモデル登場への期待が高まる中で発生した金融危機もあって、その販売数量は下降線を描く結果となった。

だからこそ、次期MX-5が最も成功した初代同様、余分なものを排除したライトウエイト・モデルへの回帰を宣言したことは何ら驚きではない。

中古車相場はどうなっているのだろう?

NAのMX-5 中古車市場は?

1990年代を通じてのMX-5の人気の秘密は、その純粋なドライビングの楽しさ以外に、他のスポーツ・モデルが非常に高価だったこの時代、驚くほど購入しやすい価格で提供されたことにあるが、これはいまや1990年当時よりもさらに際立つ状況となっている。

NAモデルの生産台数が多かったことで、中古車市場も活況であり、1000ポンド(15万円)以下でそれなりの車両を数多く見付けることができる。

価格に関して、1995年以降の1.6ℓモデルのエンジン出力はわずか89psに留まるにもかかわらず、1.6ℓと1.8ℓモデルの間にほとんど差はない。保険会社がこのクルマの出自にほとんど関心を示さないこともあって、英国市場で流通するモデルの保険料も下がっている。

何度このクルマのことを「ユーノス・ロードスター」だと説明しても、保険会社の担当者は怪訝な目をしながら「MX-5」と書類に書きこむだけだろう。

希少性を持つモデルも存在するが、標準仕様と特別バージョンとの間にもほとんど価格差は無い。「グレンイーグルス」のような特別仕様の多くは、レザーシートやウッド・トリム等内装の変更に留まるだけだからだが、中には追加コストを支払うに値する徹底的な変更が行われたバージョンもある。

例えばVR-リミテッドには固められたビルシュタイン製サスペンションと軽量化されたフライホイールにフロント・ストラット・ブレースが装備されており、RSリミテッドの場合、現在では交換に1000ポンド(15万円)以上が必要となるレカロのカーボンファイバー製バケット・シートが採用されていた。

低走行車がそれなりのプライス・タグを掲げている場合はあるものの、限定仕様を除けば、ほとんどのMX-5は1500ポンド(23万円)から5000ポンド(76万円)で購入できるだろう。

もし、単に小ぎれいで、走行に支障のない程度のクルマを探したいと言うのであれば、2000ポンド(30万円)もあれば十分だ。さらにはオートマティック車両も候補に入るようであれば、マニュアル車両よりも人気が無いため、更に安い価格で見つけだすことができる。

最安の車両を購入しようと思うなら、注意すべき共通の問題がある。

中古MX-5 注意すべき点

中古のMX-5で注意すべきは腐食だ。特に塩害がそれほど問題とならない日本からの輸入車両の場合、英国向け車両ほどの防錆処理が行われていないことに注意すべきであり、個人で車両を輸入した場合には、英国の路上には例え短時間でも晒すことは避けた方が良い。

錆が最初に発生するのはたいていサイドシルとリア・フェンダー。ボディの他の部分は丈夫なものの、この2カ所が主な弱点となっている。補修用パネルが入手可能だが、最初に想定したよりも錆が進行している場合が多い。

そして、もし素晴らしい車両を見つけ出すことができれば、間違いなくこのクルマに夢中になるはずだ。

初代MX-5のスタイリングの完成度は、MOMAが最初にそのデザインを評価したことが証明している。1994年のわずかな重量増もその素晴らしいハンドリングやしなやかさに影響することはなかった。

MX-5は2シーターのロードスター市場を再興するだけでなく、多くの面で新たに創り出したとも言える。MGがFで挑戦したように、多くのライバルメーカーたちがマツダの成功に続こうとしたが、このマツダ車に向けられたほどの熱い情熱と、世界的な成功を収めることはできなかった。

大多数はMX-5を現代のクルマだと思うかも知れないが、ECUやABSのような電子制御を取り外すことで、この小さなマツダ車を本当のクラシック・モデルにすることもできる。色褪せないスタイリングと素晴らしいハンドリングに、まるでこのクルマ自身がオープン・ロードを走りたがっているかのようなキャラクターを併せ持つクルマにだ。