4連覇を成し遂げ、報道陣に4のポーズを作る青学大・原監督=1月3日

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 正月の風物詩となった箱根駅伝は、今年も往路の視聴率が歴代最高の29・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)復路も29・7%(同)を記録するなど大きな注目を集めた。今回は出雲駅伝王者の東海大や、全日本大学駅伝王者の神奈川大などによる混戦が予想された中、東京・大手町のゴールテープを切ったのは、やはり王者の青学大だった。

 昨季は3冠を達成するも、今季は出雲駅伝で2位、全日本大学駅伝で3位と優勝から遠ざかっていた青学大。一方で、原晋監督(50)はテレビのバラエティー番組に出演したり、イベントや講演会にも引っ張りだこ。さらに、昨春からは早大大学院でスポーツビジネス論を学ぶなど多忙をきわめ、「テレビばかりに出ていて指導に集中できていないのではないか」という批判の声が少なくなく、総合4連覇に疑問符がついていたのも事実だ。

 しかし、フタを開けてみれば独走でゴールを駆け抜けた。特に圧巻だったのが復路のレース運び。往路こそトップの東洋大に36秒差をつけられ2位となったものの、「想定内」(原監督)。その言葉通り、6区の小野田勇次(3年)が区間賞の走りで逆転し首位に立つと、続く7区は3大駅伝初出場の林奎介(3年)が区間新記録の快走。大きくリードを広げて、8区はWエースの1人、下田裕太(4年)が3年連続区間賞で勝負を決めた。

 例年通り選手層が厚いとはいいつつも、山の神・神野大地、エース一色恭志ら連覇をけん引したスター選手が卒業し、絶対的な存在はいなくなった。不安要素が山積した中で、4連覇を果たした勝因はどこにあったのか。

 1つは「常勝メソッド」の確立だ。今季、多忙で週の半分も練習を見られない時期もあった原監督は、チームスタッフに「過去3連覇したチームの全練習データを洗いだせ」と指示。10人いるマネジャーは、毎年数百ページに及ぶファイルをすべてエクセル入力した。

 数値はウソをつかない。「よく秋季の練習で『走り込め』という指導者がいるが、どれくらい走り込めばいいのか。これでは指導ではない。なので過去のデータに基づいて各自のメニューをつくった」と原監督。

 夏合宿の練習消化率や、競技会のタイムを過去のデータを比較しながら、選手の現状を把握。さらに、選手寮に貼りだすことで、客観的に自身の実力や調子を見ることができるようになった。強いOBが抜けて自信を失っている選手も、「練習データを見れば過去と遜色ない。今年も力がある」と自信を持つことができた。

 監督の不在が長い分、4年が定期的にミーティングを開き課題を共有した。マネジャーも戦う集団と化し、4年の大杉柊平マネジャーは「今年強くても、4年が卒業して崩れるチームは何年も続けて勝てない。代替わりしても組織としてダメにならないように、データを(インターネット上の)クラウドに残して参照できるようにした」と明かした。

 ただ、走るのは数字ではなく人間である限り、データだけでは勝てない。昨年11月の全日本で敗れた後、チームは「データに頼りすぎた」という反省があったという。箱根駅伝を前に「チグハグなチームを私がしっかりまとめて、ハーモニーを奏でる」と宣言していた通り、区間エントリーを含めた采配の妙が光った。

 例えば、これまで3大駅伝への出場経験がなかったにも関わらず、いきなり7区で区間新記録を樹立し大会MVPを獲得した林だ。未知数だった“隠し球”について指揮官は「7区の形状はヤツに合ってるんですよ」と明かし、「夏合宿の消化率や秋練習、ハーフマラソンの成績など、裏付けがあって投入できる」と、してやったりといった表情を見せた。

 日頃、練習やデータを見ている大杉マネジャーも「林はある程度はやってくれるとは思っていたが、あそこまでとは思わなかった。いつもそうだけど、監督の“第六感”はすごい」と驚きの表情。4年間指導を受けた下田も「いつも『攻めた区間エントリーをするな』と思うけど成功している。監督の嗅覚はすごい」と舌を巻いた。