去る12月10日、愛媛県今治市で「EXILE CUP 2017」決勝大会が開催された。

参考:LDH apparel 小川哲史氏が語る、エンタメとファッションの連動

 「EXILE CUP」とは、小学校4年生から6年生を対象にLDHが主催するフットサル大会だ。今回は大会アンバサダーに香川真司、アドバイザーに岡田武史を迎え、全国から466チーム、4032名が参加。決勝大会にはスペシャルサポーターを務めるEXILE ÜSAも駆けつけ、盛り上がりを見せた。

 LDHといえば、大会名にも冠されているEXILEや三代目J Soul Brothersを擁するエンターテインメント企業であり、フットサルとは無縁のように見える。だが実はこの大会、2010年に始まり、すでに8回を重ねているのだ。日本サッカー協会が後援し、優勝チームには「EXILE賞」として「ヨーロッパサッカー武者修行」が贈られる。選手たちはヨーロッパを訪問し、現地のサッカーを観戦したり、クラブチームとの練習試合を経験したりできるという、大々的なイベントに成長している。

 LDHはこの取り組みを、企業としての社会貢献活動の一環と位置づけている。「エンタテインメントだからこそできる社会貢献がある」という考えから、「Dreams For Children・子どもたちに、夢を。」と銘打ってさまざまな活動、支援を行なっている。小学生〜高校生向けのストリートダンスコンテスト「DANCE CUP」や、所属アーティストが全国の小中学校を訪問して生徒たちにダンスの授業や夢を叶える為の特別授業をする「夢の課外授業」、障がいを持つ子どもたちのためのサーフィンスクール「Ocean’s Love」など、内容は多岐にわたる。

 芸能界と社会貢献というと、まず「チャリティー」が思い浮かぶ。石原プロの炊き出しに代表されるように、自然災害の被害にあった地域などで炊き出しやボランティア活動を行うタレントは多い。一方で、LDHのように、エンターテインメントにかかわる企業による社会貢献活動も増えつつあるのだ。

 たとえばエイベックスでは、障害者スポーツ支援活動の一環として、チャレンジド・アスリート(障害を持つアスリート)を積極的に雇用しているほか、啓発のためのイベントや大会を開催している。また、あまり知られていないが、吉本興業は国連が進める「持続可能な開発目標(SDGs)」の普及への貢献を掲げ、2017年から推進活動を開始。主催する「島ぜんぶでおーきな祭り」や「京都国際映画祭」などでイベントを行っている。

 日本国内は、1990年代頃から大手メーカーや金融系企業が、社会貢献活動の一環として「メセナ」と呼ばれる文化・芸術への支援活動を行ってきた。セゾングループのセゾン美術館やサントリーのサントリーホール、ベネッセの「ベネッセアートサイト直島」などがこれに当たる。こうしたものに比べれば、エンタメ系企業の社会貢献活動はまだ規模が小さく、実践例も決して多くはない。

 だが、エンタメ系企業は、その特性上、大企業とは異なる強みを持っている。タレント・アーティストを、そうした活動に稼働させることができる点だ。たとえば前述の「EXILE CUP」にはEXILE ÜSAのほか、現役のパフォーマーである世界や佐藤大樹らも登場していたし、「夢の課外授業」にはEXILE TRIBEやE-girlsのメンバーが参加している。よしもとの「SDGs」普及活動でも、芸人が出演するメッセージ動画が多数製作された。個人のチャリティでも同様だが、知名度の高いタレント・アーティストがこうした活動を行えば、メディアに取り上げられる機会は増加する。結果として、社会の協力や支援が必要とされる場所に目が届きやすくなることが期待できるのだ。

 この20年余りの間、持続可能な社会を築くために、企業は利益だけを追求するのではなく、社会への貢献を目指すことが必要とされ、「CSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)」が説かれてきた。一方で、2010年代に入ってからは、「CSV(Creating Shared Value/共通価値の創造)」がビジネスシーンの話題に上がるようになっている。慈善活動的な意味合いの強いCSRに対し、企業が本業を発展させる(=利益を追求する)ことで社会的課題の解決を図ろう、という考え方だ。例えば、自動車メーカーがハイブリッドカーを開発・販売することで、環境問題の解決に寄与しながら利益を上げるといった例がこれに該当する。エンタメ企業が自社のタレント・アーティストを起用して社会貢献活動に取り組むやり方は、後者の考え方に近いといえるかもしれない。

 LDHは先日、新たな事業「LDH farm」、「LDH wedding」を立ち上げた。いずれはこうした活動も、従来の企業によるCSRとは一味違う、エンタメ企業だからこその試みとして、社会貢献につながっていく可能性がありそうだ。(斎藤岬)