おかもとえみ、EVO+、仮谷せいら……HIPHOPと相性の良い新世代シンガーたち

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 2017年12月15日、LISAのm-flo再加入がアナウンスされた。VERBAL、☆TakuTakahashi、LISAの3人が15年の年月を経て再び揃う。

 m-floは90年代終盤の音楽シーンに彗星のように現れた。久保田利伸、バブルガム・ブラザーズやZOOなどの活躍によって90年初頭に確立されたかに思われたジャパニーズR&B。90年代半ばにはEAST END×YURI「SO LONELY」、soap「Loveって何よ」、LUV 2 SHY「What’s Your Name? ×××」、AKIKO「CRAZY ABOUT YOU」などそれぞれの活動は確認できるものの、まだシーンとしては盛り上がりに欠けた状態であった。その他にも安室奈美恵が「Don’t wanna cry」でR&Bを取り入れたり、イギリス人シンガーのElisha La’ Verneが日本人プロデューサーのT.Kuraによって「Say Yeah」をリリースするなどそれなりに動きはあったが、大きな転機は1998年に訪れた。DOUBLEとMISIAのほぼ同時期のデビューである。続いて宇多田ヒカルが『Automatic/time will tell』でデビュー。それぞれの成功がJ-R&Bシーンの隆盛につながっていった。そして1999年にm-floが『the tripod e.p.』でメジャーデビュー。「been so long」のスマッシュヒット以降、「come again」などの大ヒットを経てJ-R&Bシーンを代表する存在になっていった。

 しかし昨今はJ-R&Bという言葉をあまり聞かなくなってしまった。宇多田ヒカルやMISIA、AIなどはだんだんとポップスの要素が強くなっていき、安室奈美恵はEDM要素が強くなっていった。一時期はJ-R&Bの新しいシンガーが次々とデビューしていったが、今現在目立った活動を続けている者は多くはない。その一方でポップスをベースに置きながらR&B的な楽曲でアプローチをする新しいアーティストは徐々に増えつつある。彼女たちはジャンルにこだわらず、シーンで盛り上がっているHIPHOPアーティストともコラボをする。

 2017年には加藤ミリヤが代表作「ディアロンリーガール」をリバイバルして話題になった。そしてこのタイミングでLISAを再び迎えたm-floの復活ーーその勢いに乗り、共にシーンを盛り上げてくれることを期待して、近年HIPHOPとの素晴らしいコラボレーションを実現してきた歌姫たちを紹介したい。

(関連:宇多田ヒカル スタッフが語る、活動再開で得た実感「ポップミュージックの価値は目減りしていない」

■おかもとえみ

 ベーシストとして様々なバンドでの活動を経て、現在はフレンズというバンドでボーカルとして活動しているおかもとえみは、アルバム『ストライク!』で2015年にソロデビュー。中でも『ストライク!』に収録された「HIT NUMBER」はジャジーHIPHOP界を牽引するEVISBEATSによってリミックスが制作されて話題を呼んだ。EVISBEATSの柔らかい音色とおかもとのソフトな歌声がマッチした切ないラブソングに仕上がっている。その後はDJ HASEBEの「ROOM VACATION」に唾奇と共に参加。続いてあっこゴリラの楽曲提供でも知られるPARKGOLFの「ダンスの合図」にも参加するなどゲストシンガーとしてもひっぱりだこ。本人名義の新作のリリースが待たれる存在だ。

■EVO+

 元々はボカロシーンでシンガーとして人気を集めていたEVO+。謎のベールに包まれている彼女だが、HyperJuiceの「City Lights」に、同じくネット出身のJinmenusagiと共に参加してクラブシーンでも話題を集めた後、自身の1stアルバム『EVOLUTION』のリードトラックとなる「[A]ddiction」をヒットに導いた。昨月発売されたばかりの新曲「Get Up」では再びJinmenusagiとタッグを組んだ。EVO+の力強い歌唱とネイティブな英語詞、そしてDOPEなサウンドが特徴的な「Get Up」はまさにJ-R&Bを継承した名曲だ。また1月17日にリリースされる2ndアルバム『Methuselah』では制作陣にヒットメーカーの亀田誠治やKIRINJIの堀込高樹を迎えたという。なお、「Get Up」は『Methuselah』店舗購入特典としてクラブ仕様のBatsuによるリミックスも制作されているとのこと。

■仮谷せいら

 tofubeatsの出世作「水星」のMVで主演を務め、一躍注目を浴びる存在になった仮谷せいら。実際に「水星」のリミックスにもボーカルとして参加し、続けてtofubeatsのアルバム『lost decade』収録の「SO WHAT!?」でもボーカルを務め人気を集めた。自身名義の作品は若さ溢れる元気な歌声で歌うポップソングが多いが、「MYC」「フロアの隅で」などtofubeatsとのコラボ路線の楽曲必聴。最近ではラッパー・狐火とも「パラレルワールド」でコラボし、HIPHOPとの相性の良さも見せた。

■G.RINA

 仮谷せいらと同じくtofubeats『lost decade』収録曲「No.1」に参加して注目を集めたG.RINA。自らトラックを制作する傍らで田我流、鎮座DOPENESSといった実力派ラッパーとも共演をこなす新世代J-R&Bの第一人者である。しっとりと艶のある歌声が特徴的で特に高音部は伸びやかで心地良い。作品も精力的にリリースしているが、tofubeatsとの相性は抜群で自身名義の「愛のまぼろし」では再び共演を果たした。また「Back In Love (Music)」ではPUNPEEを迎え、Sadeの「The Sweetest Taboo」を大胆にサンプリング。R&Bファンには堪らない一曲に仕上がっている。

■kiki vivi lily

 今最も勢いのあるラッパーの一人と言っても過言ではない唾奇。そんな唾奇がトラックメーカーのSweet Williamとタッグを組んで世に放った名曲「Good Enough」でサビを歌い、注目を集めたのがkiki vivi lilyだ。いかにも女の子らしいキュートな声がなんとも印象的。その後もSweet Williamの「Sky Lady」にJinmenusagi、Ittoらと参加するなど、HIPHOPシーンでも名前がじわじわと浸透している。自身名義でも『Lovin’ You』というミニアルバムを発表。収録曲の「Stay my boy」は90年代のJ-R&Bを彷彿とさせる名曲だ。

 昨年2017年はフィメールラッパーの躍進が目立つ年となったが、その反面でレディソウルやガールポップもより多様化しつつある。そしてその根底にはJ-R&Bが根付いているのだ。そんな新世代の歌姫たちの活躍に今年も期待したいと思う。

(鼎)