イラン代表のカルロス・ケイロス監督【写真:Getty Images】

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超アジア級のGKアリ・ベイランバンド

 6月14日に開幕する2018FIFAワールドカップロシア。グループリーグの組み合わせも決定し、本大会に向けて期待感は高まるばかりだ。4年に一度開催されるサッカーの祭典には各大陸予選を勝ち抜いた32チームが参加する。フットボールチャンネルでは、その全チームを紹介していきたい。今回はグループBのイラン代表を取り上げる。(文:河治良幸)

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【イラン代表】
FIFAランキング:32位(2017年12月)
監督: カルロス・ケイロス(2011年〜)
※2015年3月に辞任したが、同4月に再び就任
2大会連続5回目の出場
最高成績:グループリーグ敗退(1978年アルゼンチン大会、1998年フランス大会、2006年ドイツ大会、2014年ブラジル大会)
アジア最終予選グループA1位通過

 抽選時のFIFAランクは32位(出場国中23位)で、アジア勢では唯一“ポット3”に入ったイランだが、優勝候補のポルトガル、スペイン、アフリカのモロッコと同じグループに入る結果となった。ほぼ同格と考えられるモロッコを上回ったとしても、欧州2ヶ国の一角を崩さなければ5回目の出場で初の決勝トーナメントに進出することはできない。

 アルゼンチン、ナイジェリア、ボスニア・ヘルツェゴビナと同居し、奮闘むなしく1分2敗でグループリーグ敗退した4年前のブラジル大会時よりチーム力は着実に上がっており、何度か辞意を示唆しながら就任7年目で2度目のW杯を迎えるカルロス・ケイロス監督の存在も頼もしい。

 中盤のプレッシングをベースに個人技とコンビネーションを織り交ぜた素早い仕掛けを武器に、最終予選は2試合を残して予選突破を決めた。そのまま本大会では通用しないだろうが、熟成された組織力はスペインやポルトガルとの勝負でも生命線となる。

[4-2-3-1]をメインに[4-3-2-1]なども用いるイラン。最終予選で10試合2失点という堅実なディフェンスを支えるのは守護神アリ・ベイランバンドだ。15年のアジア杯で初招集され瞬く間に定位置を奪った196cmのGKは超アジア級のハイスケールなセービングと大きさに似合わない機敏なフィールディングでベテランCBのジャラル・ホセイニ、ペイラバンドと同時期にA代表デビューしたモルテザ・プーラリガンジの背後を守る。

 もともとの本職は左サイドハーフながらSBとして大成したエハサン・ハイサフィと推進力の高い右SBのラミン・レザイアンは攻撃センスを持ち味とするが、守備の献身性も高くライン際のマンツーマンで簡単に負けることはない。CBと両SBの状況に応じた上下動がイランのアグレッシブな攻撃とタイトな守備を両立させているのだ。

 中盤はアリ・カリミとサイード・エザトラヒを中心に豊富な運動量とバランスワークで攻守のバランスワークを担う。攻撃陣はドリブラー、パサー、フィニッシャーと個性派揃いであり、特に前線はロシアのルビン・カザンで活躍するエース候補のサルダル・アズムンを筆頭に、ギリシャの名門オリンピアコスで主力を担うカリム・アンサリファルド、予選では不発気味だったものの本来は勝負所での決定力を秘めるレザ・グーチャンネジャドが揃う。

 彼ら全員が並び立つケースは無いが、ケイロス監督が対戦相手や選手の状態を見極めながら起用していくことになりそうだ。

目標達成には初戦勝利が必須

目標:ベスト16
ノルマ:1勝

 前回大会を考えればまずは1勝がノルマになるだろう。その一番可能性がある試合はモロッコの初戦となる。ほぼ同格の相手とはいえ中盤のパスワークは欧州の中堅国に匹敵するレベルにあると見られ、アフリカ最終予選で無失点と堅守を誇る。そのモロッコからいかに勝ち点3を奪い、グループリーグ突破に大きな希望を残してスペイン、ポルトガルに挑んでいく態勢を整えたい。

 “格上”と言ってもボールを圧倒的に支配してくるスペインと時間帯や状況に応じて戦い方を変えてくる欧州王者のポルトガルでは、ケイロス監督の取るべき対策も同じものではないだろう。

 最大の注目選手はFWのアズムンだ。二次予選と最終予選を合わせ、14試合で11得点という驚異的な数字を記録しており、1チャンスでゴールネットを揺らせるシュート力は頼りになる。ロシアでの5年間のプレー経験も大きな助けになるはずだ。しかも、2試合目のスペイン戦は“お膝元”のカザンで行われることもあり活躍の期待は高い。

 アズムンと並ぶ攻撃の主力が右ウィングでの起用がメインとなるアリレザ・ジャハンバフシュだ。ウィングに目の肥えたオランダの名門AZで主力を担う事実が能力の高さを証明している。豪快な突破からのクロスに加え、ワイドな位置からのミドルシュートは強力な“飛び道具”となる。今大会の活躍次第では4大リーグにジャンプアップを果たせるポテンシャルは十分にあるはずだ。

 1トップでレギュラーを争うアズムン、アンサリファルド、グーチャンネジャドとは別に、イランには強力なストライカーがもう1人いる。左ウィングのメフディ・タレミ(ペルセポリス)だ。

 イランリーグの2季連続得点王であり、今回の予選でもアズムンに次ぐ8得点を記録している。サイドでワイドのポストプレーや縦の仕掛けをこなしながら、機を見てゴール前に入り込み“もう1人のセンターFW”としてフィニッシュに迫力をもたらす。つまりサイドが起点でありながら中よりでの仕事が多く、特に純然たるSBの守備者には非常に厄介なアタッカーだ。

 中盤で大きな可能性を秘めるのがロシアのアムカルに所属する21歳のエザトラヒ。アトレティコの下部組織で育ったMFは190cmの長身を利した迫力あるボール奪取からの正確なミドルパスでビッグチャンスの起点となる。ボールキープ力も高く、相手のプレッシャーをうまく引き付けながら周囲のスペースを使えるタイプの選手でもある。現在のイランで最も大きな成功が期待される若手の1人だ。

(文:河治良幸)

text by 河治良幸