無人バスに体験乗車する住民。運転席がないため客席は前後向かい合わせになっている(17年10月、北海道上士幌町)

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 運転手のいない無人バスが乗客を運び、休日は自動運転車で買い物に―。そんなSF映画のような暮らしの実現へ、官民挙げた開発が日本でも加速している。目指すのは「2020年までに限定区域で無人自動運転による移動サービス」の実現。全国で姿を見せ始めたクルマ社会の近未来像を追った。

 木々の葉が色づき始めた熊本県の山間部で、大型ゴルフカートが乗客5人を乗せ、川沿いの道をゆっくりと進んだ。最高時速19キロメートル、運転手はいない。道路に埋設した電磁誘導線の上を自動で走り、障害物は屋根に取り付けたカメラで検知する。仮設のバス停にたどり着くと静かに停止した。

 17年10月上旬、国土交通省が同県芦北町で行った自動運転の実証実験の一こまだ。ヤマハ発動機のカートを改良し、道の駅を起点に町役場や図書館などを巡った。

 高速道路や市街地などさまざまな状況を想定して自動運転の開発は進む。最も早く実現しそうなのは過疎化と高齢化が進む中山間地域。

 国交省によると、毎年1000キロメートル以上の路線バス区間が廃止に追い込まれており、芦北町も悩みは同じだ。企画財政課の松本俊造課長補佐は「乗り合いタクシーを走らせているが十分でなく、運転手も集まらない」と明かす。自動運転への期待は大きく、「高齢者の生活の支えになる」と語った。

 北海道上士幌町では運転席のない無人小型バスが町民を乗せ、一般道を走行した。センサーや全地球測位システム(GPS)、高精度な3次元地図を組み合わせて車両の位置や障害物を検知する。一時停止や左折も違和感なくこなした。

 試乗した50代の女性は「年を取れば運転免許を返上する」とし、無人バスは「ぜひ利用したい」と話す。竹中貢町長も「不十分な公共交通機関を補うのが自動運転だ」と期待する。

 車両を提供したソフトバンク子会社のSBドライブ(東京都港区)の佐治友基社長は「(専用走行レーンを設けるなど)環境を限定すればすぐに実用化できる」と語る。

 日本初となる一般車両や歩行者が混在する公道での無人運転の実験が、17年12月に愛知県で行われた。他の車両や歩行者との共存が大きな課題で、離れた場所からモニターで監視しながら車両を走らせた。

 実験を主導する愛知県は17年10月、3次元地図を作成するアイサンテクノロジーなどと自動運転車両のテスト走行を行った。

 助手席の担当者がタブレット端末のボタンを押すとシステムが起動。カーブに差し掛かると、ハンドルが自動で回転する。車両を制御するソフトウエアを開発した加藤真平東大准教授は「20年には運転席に人がいない、ロボットのような車が公道を走っている」と断言する。