本格江戸前寿司に、手打ち蕎麦まで味わえるという贅沢が嬉しい

大人ならば誰にでも秘密にしておきたいお気に入りの店があるはず!

今回はグルメな芸能人たちが「ここぞ!」というタイミングで訪れる恵比寿の名店『かのふ』を紹介したい。

訪れた人が必ず虜になってしまう、他にはないコースの一部と共に、美味しさの訳に迫った。



「鯛の昆布締め」。2日間寝かせて旨みを引き出した佐島の鯛を、昆布で3時間しめる鯛の昆布締めを使用。いい具合に小腹を満たしてくれるのだ
まずは寿司で始まり蕎麦で〆る!特徴的なコース構成が魅力

恵比寿きってのグルメエリアである恵比寿南1丁目に位置する『かのふ』。同店の特徴は、本格江戸前寿司と、手打ち蕎麦どちらも専門店レベルの美味しさを誇っていることだろう。

コースの1品目である先付で登場するのは、江戸前寿司。なぜ1品目が寿司なのかという理由は後ほど説明するとして、まずはその味わいをお伝えしたい。

この日ご用意いただいたのは「鯛の昆布締め」。口に入れると鯛の旨みと昆布のいい香りが口いっぱいに広がる。



「旬菜の揚げ出し」。香山さんは敢えて2品目は、説明はせずに提供。その美味しさの訳が気になったら、香山さんに話しかけてみるといいだろう
野菜を心から味わえる一皿は割烹技が冴え渡る

コースの2品目は必ず野菜を使った料理と決めているという香山さん。この日は「旬菜の揚げ出し」。こちらはとにかくじっくりと味わってみて欲しいひと皿だ。なんと、野菜毎に下処理の調理仕方が全て違うというのだ。

例えばニンジンは、昆布ダシに入れて低温でゆっくりと味を入れ、さつまいもは低温でじっくりと蒸している。一見、普通の料理に見えるが、食べてみると異様なほどに美味しい。



「板持海老芋の香箱ガニあんかけ」
冬場のスペシャリテは板持海老芋のお椀物

同店の冬のスペシャリテとして用意いただいたお椀は「板持海老芋の香箱ガニあんかけ」。

海老芋のなかでも最高級品である板持海老芋を贅沢に使用。今が旬の香箱ガニの身、ミソ、内子、外子を混ぜた吉野葛のあんかけで仕上げられている。



毎朝仕込まれる手打ち蕎麦。その繊細さは見た目でも充分伝わってくる

『かのふ』のコースの〆は手打ち蕎麦である。この蕎麦がとにかく美味しく、まるで水を飲んでいるかのようにするすると胃に収まってくれる。

蕎麦粉は、北海道音江町産の秋の新蕎麦を使用。水は青森県白神山地の天然水と素材にこだわっているのはもちろんだが、それだけではこの美味しさは生まれない。



繋ぎが少ない故に茹で時間はわずか42秒

水回しという蕎麦打ちの工程の時間を、通常の倍かけて行うこと、そしてあまり練り込まないという香山さん独自の打ち方が、この繋ぎが少ないにも関わらず、細くてコシのある蕎麦を生んでいるのだ。


すだち蕎麦ブームの火付け役はこの店だった!



生出汁に白醤油とみりんを加えて作られるつゆも、この蕎麦にぴたっとはまる味わい。「かのふコース」(1人前8,000円)からは「冷やかけそば」と「すだち蕎麦」から選ぶことができる ※「くずしコース」(1人前5,800円)の〆の蕎麦は時期に寄り異なる
すだち蕎麦ブームの火付け役は『かのふ』

そんなこだわりの蕎麦を使用し提供されるのが「すだち蕎麦」。今やさまざまな蕎麦屋で見かけるようになった「すだち蕎麦」だが、その生みの親は『かのふ』なのである。

薄く切られたすだちが、蕎麦の上に美しく盛られるビジュアルも香山さんが考案。徳島産のすだちを、とにかく薄く、包丁の重みだけでスッと切ることで最後まで美味しく味わうことができる。



「石垣牛の握り寿司」(4貫2,100円)。常連客のなかには、一人で6貫も食べる人もいるというファンの多い逸品である
常連客が必ず追加オーダーする隠れ名物とは?

コースだけでも充分満足できる『かのふ』であるが、品書きに目を通すとアラカルトも充実していることに気がつき、注文せずには居られなくなってしまう。

そんな時におすすめなのは、常連客がよくオーダーするという「石垣牛の握り寿司」。

実家の寿司屋から受け継いだ48年ものの自家製醤油をベースに、レモンとバターで味付けした石垣牛と、酢飯の相性が抜群の逸品だ。



写真下の「かのふ和いす」(左)と「チーズスフレ」(右)は定番で、その他2種は月替わり。この日は「栗のプリン」と「水梨」
大人気アイスも味わえるデザート盛り合わせがラストを飾る

コースのラストには、大きなお重が登場。蓋を開ければ中から4種類のデザートが顔を出す。なかでも注目は「かのふ和いす(ほうじ茶味)」である。特注の最中のなかに入るのは、焙煎した香ばしいほうじ茶の風味が特徴の大人のアイスクリーム。ほのかにラム酒が香り、上品な甘みが食後の口に丁度いい余韻を与えてくれる。



清潔感は寿司屋の基本という父の教えを守り、オープンから10年以上経つ今でも、店内は隅から隅までまるで新店のような美しさを保っている
江戸前寿司に手打ち蕎麦という、二刀流実現に至った経緯とは?

同店の料理を手がけているのはご主人の香山さん一人だけ。つまりは寿司も蕎麦も彼が全て仕込みから一人で行っているのである。

実は、香山さんの実家は江戸前寿司店。22歳までは実家の寿司屋で父親から寿司の握り方はもちろん「寿司屋とはどうあるべきか」を、たたき込まれた。



個室は「かのふコース」(1名8,000円)コースから利用可能。※4〜6名

その後、アミューズメント系の会社に就職、仕事の上で蕎麦打ちを職人から学ぶことになったのだという。

その9年後に同社を退社し、NYに本店をもつ寿司屋『Sushi of Gari』の東京店や『枝魯枝魯 神楽坂』などの料理長などを務め、11年前に独立し『かのふ』をオープン。

このような特異な経歴を持つ香山さんだからこそ、とにかく料理人としての手数が豊富で、全ての料理が絶品。

香山さんの生み出す料理と人柄に惚れ込み、訪れる人は皆「自分だけのとっておきの場所」にしたいと思うのだろう。覚えておきたい名店だ。