台湾でも韓国と同じような「積弊清算」の取り組みが始まっている。標的となっているのは故蒋介石総統が率いた国民党の独裁時代。蔡英文政権の「脱中国」の動きは一段と加速しそうだ。写真は蒋介石の事務室。

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2018年1月6日、韓国の文在寅大統領が推進する「積弊(過去の政権による長年の弊害)清算」。台湾でも同じような取り組みが始まっている。標的となっているのは故蒋介石総統が率いた国民党の独裁時代。蒋総統の個人崇拝の象徴である「中正紀念堂」も見直しの対象で、蔡英文政権の「脱中国」の動きは一段と加速しそうだ。

蒋総統に関しては昨年2月、与党・民進党が台湾各地の学校に設置されている像の撤去を行政院(内閣)と教育部(教育省)に求めた提案が立法院(国会)を通過した。背景になったのは1947年の「2.28事件」。国民党政権による台湾統治への不満の高まり、台北で起きた抗議デモが全土規模の民衆蜂起に発展した。事態は当時、国民党が支配していた中国大陸から派遣された軍によって収拾されたが、犠牲になった人の数は1万8000人〜2万8000人に上るとされる。

16年5月に発足した蔡政権は長らく政権の座にあった国民党の資産公有財産化を優先的に進める一方、同党独裁による弾圧の実態解明に着手。昨年12月には過去の権威主義的な統治の下で行われた人権侵害やその結果の真相究明などを目指す「移行期の正義促進法案」が立法院で民進党などの賛成多数で可決された。民進党は陳水扁政権時代(2000〜2008年)の2003年にも前身となる法案を提出したが、少数与党だったため可決にはこぎ着けなかった。

同法案の適用時期は1945年8月15日(日本による台湾統治の終了)から1992年11月6日(離島の金門と馬祖で戒厳令が敷かれた最後の日)まで。国民党統治時代と重なる。台湾メディアによると、蔡総統は「市民がつらい歴史の記憶により恨み合うことはなくなり、台湾は違う国になる。われわれの民主も一歩前に進む」との談話を発表し、念願だった法案の国会通過を喜んだ。

今後は行政院の下に独立した専門の委員会が設置され、調査や報告を行う。調査の拒否や妨害を図った者には過料が科せられ、政治資料の破棄や隠匿も処罰の対象となる。位置付けが見直される「中正紀念堂」(台北市)は蒋総統の没後5周年の1980年4月に落成式が行われた顕彰施設。中国の伝統的な宮殿陵墓式が採用されており、台湾の観光名所にもなっている。

これに対し、国民党側は「明らかにわれわれに狙いを定めている。正義の名を借りた政治闘争だ」と反発。専門の委員会が行政権と司法権を同時に保持していると指摘した上、憲法違反ではないかと非難し、さらに「日本占領時代(1895〜1945年)も適用時期とするべきだ」とも主張している。(編集/日向)