トヨタが出展した介助者が運転席に座りながら車椅子の子どもをサポートできるコンパクト車のコンセプトモデル。(撮影:常井健一)

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障害者や高齢者の自立生活を支える製品を展示する「第32回国際福祉機器展」 (主催:全国社会福祉協議会、保健福祉広報協会)が27日、東京都江東区の東京ビッグサイトで始まった。今回は製造業を中心に海外からの68社を含む630社が出展。国内自動車メーカー各社も参加し、運転補助装置や乗降装置などを搭載し福祉社会に対応した特別車両を競って展示している。29日まで。

 肢体の障害に対応したいわゆる福祉車両は、◆リフトやスロープで車両の後部などに車椅子のまま乗るタイプ◆車椅子から降りて座席に座るタイプ◆障害者自身が運転するタイプの3種類に大別され、それぞれ市販のベース車を改良したものを各社が提供している。システムの電子制御化にともない、福祉車両の技術も進化している。これまでは、荷室が広いバンを改良した車椅子のまま乗るタイプが販売の多くを占め、通所介護施設など法人が主な顧客層だった。近年、家庭で使用する個人ユーザーも増加しており、コンパ クト車を用いた車両を多く展示しているのが今回の傾向。

 昨年の販売台数の8割が個人ユーザーを占めるトヨタ自動車が参考製品として新たに発表したのは、介助者が運転席に座りながらでも当事者をサポートできる子ども用の車椅子が1.5列目に乗せられるタイプと、後部座席部分に大人用の車椅子が据えつけられ、介助者と並んで座れるタイプのコンパクト車をベースとした2種類。それぞれわが子を養護学校に送り迎えする父母や、福祉施設の職員からの意見を参考にして、改良したという。

 本田技研工業は、腕に障害がある人向けに、足だけで運転できる独自の運転補助装置を搭載したコンパクト車「フィット」の福祉仕様を出展。座席に座った状態で足が届く範囲に、ワイパーやライトなどの各種スイッチを配置。左足でペダルを踏むと右方面へ、ペダルを上げると左へという操作で運転ができる。この技術は、81年にドイツから導入し、国内ではこれまでにホンダのみが一般に販売している。 受注台数は少なく、年間3台程度だという。また、ホンダでは22日に発表された新型シビックの福祉車両も展示。新車発売から1カ月程度で迅速に福祉対応する開発体制について、車両開発担当の笹川修一さんは「障害者であるなしにかかわらず、欲しいお客様に早く提供するのが義務」と語る。

 軽自動車メーカーのダイハツのブースでは、軽車両では初めて車椅子ごと運転席に乗り込める『ミラ・セルフマチック』を展示。リモコン操作をすると、専用の車椅子で乗降ができ、そのまま好きな場所に車椅子で走行できる。車椅子から運転席への移乗や、車椅子を荷室へ積み込みむ際の負担を解消した。11月14日発売。【了】